ゴールドの真相に迫る22〜仮説〜
今回の記事が、これまで20回に渡って書いてきたシリーズの実質的な最終回となる。シリーズ終盤で扱ったゴールドの闇については、各書籍によって見解が共通している部分ものもあれば、異なっている部分もある。異なる部分に関しては、いずれかが事実か、あるいはいずれも事実ではない。
それらを確定させるオリジナルの証拠などはないので、各書籍を読み比べ、その蓋然性判断によりいずれかの説に立脚する、あるいは再解釈を試みるより方法はないが、この最終記事で本ブログなりの仮説を立ててみたい。
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【仮説1】ゴールドの地上在庫は40〜50万トン
公に知られている地上在庫(採掘済みの地球上の金の総量)は、2009年末で16万5600トンとされる(GFMS社「Gold Survey2010」)。しかし、本シリーズで紹介した書籍には、これを遥かに上回る量の金塊が登場する。
国際機関の公表値の数倍もの金が存在するとは俄かには信じがたい。だが、権謀術数渦巻く激しい私権闘争の中で、例えば第二次大戦で覇権を握った米国(の支配勢力)に対し、捲土重来を期する欧州やアジアの勢力が隠し資産をつくる、などということは十分に考えられる。実際、保有金の公表値を唐突に数百トンも増やしたサウジの例もある。量はともかく、公表されない隠れたゴールドは相当量存在すると考える方が自然だろう。
「天皇の金塊」「狙われた日華の金塊」で語られるフィリピン地下の14.1万トンもの金塊、副島氏が推測する英王室、スイス、バチカン市国の各10万トンもの金。全てあわせると、40〜50万トンの金が地上に存在し、うち25〜35万トン、つまり過半が各地に隠匿された知られざる金塊ということになる。
さらにイランのシャー(王)の金塊、
タイ王室の金塊も存在するという。
【仮説2】ゴールドの所有者は一枚岩ではない
これらの知られざる金塊は、一体誰のものなのだろうか?
「天皇の金塊」は、これらの「全ての頂点にロイヤルファミリー(英王室)が君臨する」という。しかし、昨年のなんでや劇場の分析を見ても、闇の支配勢力が完全に一枚岩ということはあり得ない。欧州貴族にしてもロスチャイルドにしてもロックフェラーにしても、情勢に応じて結託したり分裂対立したり、勢力図は流動的だ。現在は、欧州貴族がかつての手下であるロスチャイルド勢と組み、米国のデヴィッド・ロックフェラーの戦争屋・CIA勢力と対立構造にあるという分析が昨年なされた。
従って、欧州やアジアの各々の勢力は、各々の切り札として隠し金塊を所有しており、それが各勢力同志の合従連衡によって、共同で使われる場合もあると考える方がいいだろう。「狙われた日華の金塊」で原田氏が述べているように、日本と華僑の共同管理による金塊が存在してもおかしくはない。
各書籍の見方が概ね正しいとして、隠し金塊の所有を整理するとこうなる。
公表値 約 17万トン
英 国 約5〜10万トン⇒英国王室およびロスチャイルド勢
バチカン市国 約5〜10万トン⇒ローマ・カトリック教会総本山+天皇?
スイス金融資本 約5〜10万トン⇒欧州貴族およびロスチャイルド勢
フィリピン 約 5万トン⇒日本の旧華族・軍人および華僑
計 38〜52万トン
【仮説3】現在の金市場を支配しているのはロスチャイルド勢
隠し金塊の所有者は一枚岩ではないとしても、現在の金市場をコントロールしているのは、おそらくロスチャイルド勢だと思われる。
それは、2004年まで「黄金の間」で実質的に金の価格決定を行っていたこと、シリーズの4回目で調べたように主要な金鉱山会社の支配権を現在はロスチャイルド勢が握ったこと、鬼塚氏が書いているように、HSBCやクレディ・スイスなどのロスチャイルド系金融機関が、金市場で大きな動きをしていることからも窺い知れる。ロスチャイルド勢が金を使って何かを仕掛けようとしているのは、ほぼ間違いないだろう。
【仮説4】闇のゴールドの使途は金本位の多極通貨の創設?
昨年11月、世銀総裁のロバート・ゼーリックは「金と連動する新たな通貨制度が必要」だと発言し、田中宇によれば、元FRB議長アラン・グリーンスパンも先週の雑誌インタビューで金本位制を支持する発言を行ったという。
闇の支配勢力が隠されたゴールドを使って何かをを仕掛けようとしているとすれば、その歴史から考えて通貨に関するものであるのは間違いないだろう。
彼らにとって20世紀とは、米国一極支配とドル一極通貨体制の壮大な実験の世紀だったと言える。そして彼らはこの実験で、一つの国と一つの通貨、しかも不換紙幣による通貨を基軸としたシステムは100年足らずで破綻することを知ったのではないだろうか。
一極基軸通貨制の弱点とは、
①実力より高い通貨価値と発行権の濫用リスクによる、
②国際収支の悪化と金など担保資産の流出、および、
③基軸通貨国の産業・社会の弱体化と国際世論の反発
だ。しかし、金貸したちの支配力の源泉が通貨発行権にあることは変わりがない。これらの問題を回避し、かつ通貨発行権者の支配力を行使し続けるには、通貨需要の偏りが起こらず、かつ担保資産の(支配者からの)流出が生じないシステムにする必要がある。そのために彼らは、世界をブロック化し、各々の通貨発行権を握る多極通貨システム(欧州圏、北米圏、アジア圏、中東圏、後々はインド、アフリカetc・・・)を構想しているのではないだろうか。
多極通貨ならば、各地域間の貿易などで金が流出しても、流出先の国家の保有金管理を支配できていれば彼らの懐は痛まない。また、圧倒的にゴールドを支配した状態で支配エリア外の国家にも金本位制の導入を迫り、必要なゴールドを貸し出すなどの形で通貨発行をコントロールする、といった戦略も不可能ではない。
田中宇によれば、米国は約2億6300万オンス(約8130トン)の保有金で1.7兆ドルの通貨を発行しており、金本位に戻すなら金は1オンス6300ドルになるという。これは、もし4万トン程度のゴールドがあれば、仮に金価格が現在の1300ドル台のままでも、一つの通貨を金本位制で立ち上げることは可能であることを示している。
【仮説5】金価格は暴落せず、緩慢に上昇して行く
では、鬼塚氏が書くように、金は2011年、遅くとも2012年にかけて一度暴落させられ、中国バブルは崩壊し、新たな通貨が登場するのか?あるいは、副島氏が書くように、米ドル暴落を阻止するために、米財務省とFRBによって金暴落が仕掛けられるのか?
おそらく、どちらも無い。
確かに、ゴールドの価格がドルの価値と逆連動の関係にあったことは事実だ。しかしマネー経済が膨張した今、金市場は株・債券市場の4600分の1の規模しかない。従って、マネーの流入で金が暴騰することはあっても、金を暴落させてもドル暴落が阻止できるわけではない。同様に、金の暴落が中国バブルの崩壊を引き起こすわけではない(その逆、ドル暴落や中国バブルの崩壊で金も暴落することはあるかも知れない)。
ロスチャイルド+欧州貴族の戦略としてあり得そうなのは、何らかの形で中国に米国債を売却させ、米債・米株・ドルの暴落を引き起こし、その反動で中国の株・不動産および(ドルペッグしている)人民元も暴落させ、資産を奪取した後、世界中で金と連動した新通貨を発行するというシナリオだが・・・。
そうすんなりいかないと考えられる最大の要因は、本ブログの中国シリーズにもあるように、中国共産党はしたたかで、金融市場にしろゴールドにしろ、中国に深く入り込んでいるロスチャイルド勢の戦略には十分警戒を払い、その思惑通りには動いていないと考えられるからだ。また米国でも、オバマ政権(欧州貴族+ロスチャイルド勢)は、デヴィッド・ロックフェラーの戦争屋・CIA勢力に巻き返しを受けている。
このような情勢の中では、ここ1〜2年はロスチャイルド勢が大きく仕掛けることができず、経済は紙幣増刷の延命措置で停滞を続け、ドルをはじめとする通貨の信用がズルズルと低下、金価格は多少の下落はあっても暴落はなく、緩やかに上昇していく事態が続くのではないか。
ゴールドが世界通貨システムという舞台に華々しく再登場するのは、おそらく5年以上先であり、それまで、隠し金塊も眠ったままだろう。
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