迫りくる大暴落と戦争刺激経済-1~緩和バブルとともに沈みゆくドル~
今回から新シリーズをはじめます。
今後3~6年の短期経済を予測する副島隆彦著の『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』から注目する記事内容を紹介していきます。
グラフなどもふんだんに掲載されているので、詳細は当該書籍をご覧ください。
この書籍の発刊が今年の5月。ゆえに予測は3月末段階までの状況から行っていると考えられます。今現在、副島氏の予測と異なることは、アメリカの北朝鮮爆撃(6月末予測)は、回避されむしろ距離を縮める方向に進んでいることと、それにあわせ米国債の暴落が起こるとしていますが、逆に更なる上昇を続け、10/3にはダウ最高値(26,828ドル)に達し、金利も2.25%まで上げている。この状況が何を示しているのかを探っていきます。
『迫りくる大暴落と戦争“刺激”経済』(副島隆彦 著)からの紹介です。
****************************************
第1章 緩和バブルとともに沈みゆくドル~
■パウエル新FRB議長ががむしゃらに利上げする
NYダウの株価の史上最高値は、2万6616ドルだった。これを今年の1月26日に付けた。現在(4月)は2万400ドル台だ。
2万6000ドル台を、2月1日まではつけていた(2万6186ドルが終値)。その後、2月2日(金曜日)から下落が始まった。私は、この2月2日に、「お、何か起きるな」と感づいた。子に日はよく実のジェローム・H・パウエル議長の就任を前に、アメリカFRBが、「利上げ観測」というのを、公然と発表し打出した日だった。そして2月5日(月曜日)からニューヨーク株の暴落が始まった。値幅で1600ドル下げた。日本もそれに連られて売り一色で下げた。この2月5日を境にして、「暴落の事態」が始まったのである。
これから先の経済を見るには、短期金利(=政策金利)の数字が大事だ。長期金利(国債などの債権の値段)と共に、短期金利の動きに注目しなければいけない。P26~27の短期金利表を見てください。これから書くことは私の大胆な予言、予測でもある。
これは政策(誘導)金利といって、アメリカではFFレートと言われ、中央銀行であるFRBが、FOMC(連邦公開市場委員会)を開催して決定する。日本だったら日銀が「政策会合」で決める。新しくFRB議長に任命されたジェローム・パウエルは、就任するとすぐに金利を上げ始めた。自分を“洗礼”した株の下落など気にもしない。3月21日に、政策金利(短期金利)を「年率1.5%~1.75%」にした。その前にイエレン議長が、2015年12月から苦心して金利を上げ始めて、5回上げて昨年2017年12月にようやく1.25~1.50%までいっていた。
FRB議長は2期8年やるのが普通だ。しかしトランプ大統領はイエレン女史を再任しなかった。再任するかもしれない、と気を持たせておいてから、スパッと切った。いかにもトランプらしい。他の理事達も肝が冷えた。
イエレンから交代したジェローム・パウエルは、写真にあるようにいい顔をしている。パウエルは、就任すると、すぐに議会で「もう景気は過熱し始めている。急いで金利を上げる(すなわち、金融引き締めに転じる)。緩和マネーはもうやめる」という政策転換を発表した。
緩和マネー(QE)で市場にドルがあふれるのでアメリカの株価は、たしかに激しく上がって2万6000ドル台にまでなった。しかし実体経済がいいわけではない。それでもパウエルとしては、「もうデフレ(不況)は終わった。これからはインフレ(バブル経済)を警戒しなければならない(株は上がりすぎている)」と態度表明した。そして、FRBがドル紙幣を大量に政府に渡すことである「金融緩和もやめる」と言った。FRBはそのかわりにアメリカ政府(財務省)の発行する米国債をあまりにも引き受け(買取)しすぎている。もう5兆ドル(500兆円)ぐらいを買い込んでいる。
「金融緩和はもうやめた」と新FRB議長がいくら思っても実際はそう簡単にはゆかない。どうせ緩和マネー(QE、ジャブジャブ・マネー)を、アメリカも日本もヨーロッパも、先進国の政府はこそこそと隠れてやるしかないのだ。それを政府に渡さなければ政府は予算を実行(政策の執行)は出来ない。政府は慢性的に金が無い。「福祉をくれ、くれ」と国民がうるさい。表面上は、「アメリカの景気は回復した。心配すべきは、もうデフレ(不況)ではなくインフレだ。だから金利を上げて、緩和をやめる」と言い出した。
指名発表の時、トランプはパウエルに対して「お前で大丈夫かな」と言う顔をしていた。それでも、パウエルは、競争相手のグレン・ハバード(コロンビア大学教授)やゲイリー・コーン(ゴールドマン・サックス前CEO。最近までNEC国家経済委員会・委員長。クビ)たち、腹黒い、評判の悪いニューヨーカーに比べると人格、人柄が良さそうだ。あんまり、見るからに悪そうな人間をトップに立てることは出来ない。パウエル新議長は前述のように、3月20日、21日に開催された金利決定会合のFOMCで、金利を0.25%引き上げた。今年は連続3回上げると決めている。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2018/10/5894.html/trackback