2011-03-30

シリーズ「食糧危機は来るのか?」8〜大規模な農業形態は日本の自給率改善につながるのか?〜

今回の東北地方太平洋沖地震における、津波による生産基盤の損失、塩害、そして放射線による土壌汚染など、現在我が国の食糧危機という問題が現実味を帯びてきました。

今回被災した東北地方は日本の食の自給を支える拠点でもあります。今後どういった形で復興が成されるにせよ、日本の自給率を上げるためには、大きな方針を考えていく必要があります。それは、現在原発問題で後手後手に回っている(むしろ自己保身しか考えていない!?)政府等ではなく、私達自身で考えていく必要があると思います。

今回は食の(農業)の自給率を上げていくことを念頭に置きながら、今後どのような農業形態が望ましいのか?どんな方法であれば可能性を見出せるのか?を考えていくために、現在(近代)米国で行われてきた「大規模農業」はどういった総括がいるのか?を、るいネットの記事から紹介していきたいと思います。

米国の大規模農業
画像はコチラからお借りしました

これまでの「食糧危機は来るのか?」シリーズバックナンバーです
(1)〜食糧危機問題の捉え方〜
(2)〜食糧危機と市場経済は両刃の剣〜
(3)〜輸出補助金というカラクリ〜
(4)〜日本経済は再び国際収支の天井を迎えるのか〜
(5)〜食糧高騰は脱市場をもたらす契機となりうるか〜
(6)〜食糧主権を憲法に規定する動き(1)新自由主義からの脱脚
(7)〜食糧主権を憲法に規定する動き(2)新自由主義からの脱脚:番外編

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◆米国の行ってきた「大規模農業」で自給率改善につながるのか?
1)農の自由化がもたらした途上国の自給率悪化

現在、WTOの農業自由化によって、途上国で広く展開されている畜力農業が「非効率」のレッテルを貼られて淘汰されています。途上国は穀物自給率を低下させるとともに、米国などからの穀物輸入量を増やしています。
途上国の側は、小規模農家の穀物生産が淘汰され、代わって前の記事の写真にあるようにアブラヤシ、コーヒー、ゴム、綿花、バナナ、コショウなどなど、輸出向け商品作物のモノカルチャー経営がますます興隆しているのです。競ってそれらを生産すればするほど供給過剰になって国際価格は下落するので、自給率を下げながら輸出作物を伸ばそうと頑張れば頑張るほど農業部門の貿易収支は悪化していき、米国で旱魃などが発生した場合の飢餓の危険性を高めるわけです。
 


シリーズ2 〜食糧危機と市場経済は両刃の剣〜
シリーズ3 〜輸出補助金というカラクリ〜
で示した通り、「市場拡大が途上国の食料危機を生んでいる」という構造は大前提に見逃せない点です。

2)「経済」効率は高いが、「エネルギー」効率は悪い

熱力学的なメガネで見れば、エネルギー効率の非常に優れた畜力農業が、エネルギー効率が最悪の米国型機械農業に侵食され、地球生態系の破局と石油資源の枯渇を早めているだけということになるのです。
熱力学的な観点に立つとどのようになるのか、例えば、『エントロピーの法則』(祥伝社)の著者として有名な米国の文明評論家ジェレミー・リフキンは、近著の『水素エコノミー』(柴田裕之訳、NHK出版)の中で次のように書いています。
<引用開始>
「熱力学の観点にたつと、近代的農業は歴史上もっとも生産効率の悪い農業形態ということになる。つまり、近代農業が一定のエネルギー量を産出するために投入するエネルギー量はこれまでのどの時代よりも多い。(人力と畜力のみに依存していた時代の)小農は通常1カロリーのエネルギー消費につき10カロリーのエネルギーを生み出す。これに対して、最新の技術を用いるアイオワ州の農場主は、人間の労働1カロリー当たり6000カロリーのエネルギーを生み出すことができる。とはいえ、この数字はエネルギーの純益を生み出すために使われるエネルギーの総量を計算すると、その輝きを失う。270カロリーのトウモロコシの缶詰一個を生産するために、農機具を動かし、合成肥料や農薬を与えることで2790カロリーが消費される。つまりアメリカのハイテク農場は、正味1カロリーのエネルギーを生産するために、10カロリー以上のエネルギーを使っているのだ。」
ジェレミー・リフキン著(柴田裕之訳)『水素エコノミー』(NHK出版、2003年、212頁)
<引用終わり>
 つまり、人力と畜力のみに依存していた農業はエネルギー投入1に対して10の産出をもたらしますが、米国農業は輸送や加工まで含めればエネルギー投入1に対して0.1の産出しかもたらさないわけです。米国型農業は、エネルギー収支で見れば、とてつもなく「非効率」で「生産性が悪い」のです。人間の労働力を省力化する代わりに、全てを石油ガブ飲みの機械で代替してきた結果です。
 石油の値段が安い限りにおいて、米国型農業が貨幣的な収支では「効率的」とされるわけですが、ピーク・オイルを迎えると言われる昨今にあっては、経済的な観点での「効率性」もいつまで続くか定かではありません。石油の値段が上昇を続ければ、遠からず人力・畜力農業の方が経済的にも効率的になる日がやってくるのです。

上記の二点をまとめると、
1)農の自由化は根本的に“搾取”を前提としているため、結果的に食糧危機をもたらす構造に変わりない。
2)「石油が安価」という前提が、「経済的」に高効率だという根拠であり、なおかつ「エネルギー」効率で考えると、とてつもなく「非効率」である。
ということになります。

◆尺度(評価指標)の転換が必要
これまでの米国の「大規模農業」は、経済的な尺度のみで評価されてきたことは明らかです。

市場原理においては、大規模な農業形態によって生産されるローコストな農作物は競争力があります。しかし、廉価な石油がふんだんに使えると前提があってのことですし、自然のサイクルから逸脱した様式であるため、長期的には自然環境を破壊していきます。

貧困の消滅以降、日本においては私権(金や身分などの私的権益)への執着は薄らいでいます。それに変わって環境に対する意識や自分よりも周りのみんなへ意識が向きつつあり、経済的尺度のみの「大規模農業」は土地が少ないことも相まって本質的には日本に向いていません。

しかし、マスコミや政府などの特権階級側が発信する内容は経済的尺度と聞こえの良い表層観念しかなく、今後経済的尺度に変わる新たな尺度への転換が必要になるのではないでしょうか。

また、経済的尺度のみで評価されてきたのは「大規模農業」だけでなく、近代科学技術の遺産とも言える「原発」にも同様に言えることで、その結果が今回のような国家の危機をも生んでしまった、と言わざるを得ないでしょう。

◆(市場を超えた)超市場型農業への転換

市場原理に乗っかったままでは、仮に日本の農業を大規模化しても、他国がより大規模な形態で廉価に供給すれば、結局そちらを選択してしまい、自給率の改善は思ったほど進まないのではないでしょうか。
日本が自給率を改善していくにためには、国内農業に力を入れていくことと合わせて、市場原理から脱却することが必要なのだと思います。

根本的には「食を支える」という集団の規程を成す役割は、「既存の(経済的価値を重きに置いた)市場に乗せてはいけない」ということになると思います。
では市場を脱却した、日本の農業のあり方と何なのか?持続的な自給率改善の実現基盤がどこにあるのか?次回の記事で書いていきたいと思います。

List    投稿者 tutinori | 2011-03-30 | Posted in 06.現物市場の舞台裏3 Comments » 

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コメント3件

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