2007-08-26

ハイブリッド車は環境にやさしいか?

オイルピーク論がこのブログでも何回か取り上げられていますが、石油→ガソリンはなるべく使わないで済むことに越したことはありませんね。
ガソリンといえば自動車、ガソリンを食わない自動車といえばハイブリッド車、というのが現在の定説ですが、本当にハイブリッド車はガソリンを食わないのか?環境にやさしいのか?をちょっと調べてみました。

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まずは、ハイブリッド車の概要とメリットから。
ハイブリッド車はご存知のとおりガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせた(=ハイブリッド)動力源を持っています。
普通の車は減速する際にブレーキをかけますね。こうすることにより、ガソリンエンジンによって発生させた運動エネルギーを熱(エネルギー)に変え、大気中に捨てていることになります。
一方のハイブリッド車は減速時には一般ブレーキで減速すると同時に、回生ブレーキとよばれる発電機を回し、得られた電気をバッテリーに貯めています。(電車と同じシステム)
いったんガソリンエンジンで発生させた運動エネルギーを回収し再利用するので、ガソリンエンジンだけで動く一般車に比べ、燃費がよく、環境にやさしいと言われているのです。
次にハイブリッド車のデメリットは?
■車重の増加
ハイブリッドシステムは前述のように大まかにはバッテリーと発電機(回生ブレーキ)、およびモーターから構成されています。これらは一般の車にはもちろん装備されていないので、これらによるウェイト増がハイブリッド車のハンディキャップになるのです。車種によって異なるようですが、一例によると200kgくらいは違うようですね。
もちろん、軽いほうが動かすために必要なエネルギーは少なくてすみます。
物理の授業で習った公式「E=1/2mv2」の通りです。
■コストの増加
これも一概には言えませんが、一般の車にないシステムを搭載するため、購入する側から見ると60〜80万円は増加するようです。
もちろん、製造側から見ても一般車にはないシステムを使用しているため、余分なコストがかかります。が、メーカーにとってはイメージUPに繋がる車種なため、戦略的に低価格に押さえていることも多いようです。一種の広告ですね。(ちなみに、この場合、価格圧縮分≒広告代はもちろん一般車販売金額に上乗せされています)
■ケースにより異なる燃費性能
ハイブリッドシステムの構造上、短時間でストップ&ゴーが連続する街乗りではそのメリットを遺憾なく発揮することができますが、長い上り坂や下り坂ではシステムの性能を十分に活かしきれなくなるようです。なぜかというと、上り坂ではモーターアシストでバッテリーを使い切った後、モーターやバッテリーは単なる「重荷」と化してしまうし、下り坂ではバッテリーがフル充電された後、回生ブレーキが有効に機能しなくなる(回生失効)からなんですね。
■ライフ・サイクル・アセスメント
とはいえ、有害物質の排出量軽減という観点では、確かに走行中の有害物質の排出は少ないようです。
しかし、バッテリーやインバーター素子を含むハイブリッドシステムの部品の製造と廃棄に伴う有害物質の排出量は、ハイブリッドシステムを搭載しない車両よりも明らかに多いものとなります。
これらの環境負荷は、車両のライフサイクル全体における有害物質排出量の総合では、従来のガソリン車のそれに加えておく必要がある、と指摘されています。
ここまで長々と机上検討してきました。
では、実際に使ってみたらどうなのでしょうか?
といってもハイブリッド車が手元にあるわけではないので、ここでもデータで検証してみましょう。
トヨタのプリウスと、同じトヨタのアイゴ(欧州のみで販売されている大衆小型車)との比較です。

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トヨタプリウス
・ハイブリッドシステム(1.5㍑ガソリンエンジン+電気モーター)
・車重1300㎏
・全長×全幅×全高 4445×1725×1490
・実測燃費15.7㎞/㍑
・実測二酸化炭素排出量104g/km
・約280万円
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トヨタアイゴ
・1.4㍑ディーゼルエンジン
・車重850㎏
・全長×全幅×全高 3405×1615×1465
・実測二酸化炭素排出量109g/km
・実測燃費18.6㎞/㍑
・約187万円(邦貨換算)
※データはオートカージャパン2006.11月号より

一般道、高速道、山道、渋滞状態など、一般の乗り方をしたケースがこのデータです。
アイゴは、プリウスのハイブリッドシステムのようなハイテクは採用されていないのですが、燃費性能では大きく上回り、(その是非は置いておくとして)CO2排出量でもどっこいどっこいです。
アイゴの勝ち!
ですね。
が、しかし、ここで物言いが。
「プリウスの方が車格が上じゃん!フェアじゃない!」
そうですね。その通りです。
プリウスはアイゴより全長で1m以上長く、車重は450kgも重いのですね。
冒頭の運動エネルギーの公式に当てはめるまでもなく、確かにフェアではないわけです。
では、なぜプリウスは大きく・重くなっているのでしょう?
人を多く運ぶため?→定員は同じですし、そもそもよほどのことがない限り5人乗るような使い方はしません。
荷物を多く運ぶため?→多分プリウスの方が多く積めるでしょうが、人と同じく目一杯荷物を載せるような使い方はめったにありません。アイゴも後ろのシートを倒せば、かなりのものは積めるようですしね。
どうも、原因は実用面にはないようですね。
ではなにが原因か?僕はこのように考えます。
①大きく、広く、贅沢にしたい。(でないと売れない)
②動力源を強化して速くしたい。(でないと売れない)
③そのままだと環境に悪くイメージダウンなのでハイブリッド化。(そうすると売りやすい!)

というように、消費者側の快美欠乏(①②)に応えるため大きく重くなった車体を、幻想共認(③)でラッピングした結果さらに重くなった、としか言いようがありません。
悪循環ですね。
クルマを快美欠乏の対象とせず、小さく・軽く(遅く)てもいいと我慢できるなら、ガソリン消費量や環境負荷は小さくてすみます。物理法則=自然の摂理の通りです。これを守ることができれば、仮にクルマの台数が変わらなくても総エネルギー消費量=石油の使用量は格段に少なくてすみますね。
最後に付け加えておきますが、僕はハイブリッド車とその技術を否定はしていません。
いったんの方向性を述べるなら、
・自家用車や社用車はできるかぎりの小排気量車
・バスやトラックなどストップ&ゴーの多い、元々重く大型の現業車にハイブリッド車

ということになるんではないか、と思います。
もちろん、快美欠乏は充たされず、市場は拡大しませんが。

List    投稿者 ohmori | 2007-08-26 | Posted in 06.現物市場の舞台裏2 Comments » 

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コメント2件

 leonrosa | 2007.10.17 13:31

木材のセルロースを加水分解して、糖分にする。その糖分を発酵させ、エタノールを生成する工程ですね。
木材の主成分は、確かにセルロースですから、この手法は、植物素材一般に適応できそう。
希硫酸による加水分解工程での投入エネルギー(希硫酸生産エネルギーを含む)と生産したエネルギー(エタノール生成)の収支が、どれくらいプラスになっているか、気になるところですね。

 MIRAGGIO,.Co. SHOJI SHIMIZU | 2008.09.05 13:59

御社の記事拝見しました。
現在、私バイオエタノールの原料となる(最も効率がよいとされている)乾燥タピオカをアジア地域からの供給を仕事としております。長い時間をかけて現地にて供給ルートの開発、確認、安定化をはかって来ましたのである程度のことは(材料供給分野)のことは、コメントできるかと思っております。私のような分野の必要性があればご一報下ださい。 敬具 清水祥司

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