2008-07-24

食料価格高騰はなぜおこるのか?その4お米の価格上昇、農業再生につながるか?

パン、カップラーメン、パスタが値上がりして、お米の需要がちょっぴり増えたという話が流布しています。減少し続ける米の消費そして値下がり傾向にあるお米の価格を今回は扱って見ます。
まずは、わが国のコメに関する政府の農業政策とコメの価格の推移について調べて見ました
わが国は江戸時代から明治、昭和の近現代に至るまで米が足りた時代はなかったようです。 
 
そして戦争中の米不足を補うために1942年(昭和17年)の食糧管理法=食管法が作られました。
食管法とは政府が米の値段を決めて農家が作った分だけ全て買い上げる制度でした。
政府が値段を決めて買ってくれるのでお米が作れるところはどんどん水田が作られていきました。
そして昭和40年代になって100%自給が安定的に達成されたのですが、逆に「米余り」が生じ、米倉には1年残った「古米」、2年残った「古古米」があふれ、とうとう捨てるハメにも陥りました。 
 
耐えかねた政府はやがて減反政策を実施し、コメの価格も徐々に市場の競争に委ねるようにしてきました。その経緯について、食管法から新食糧法〜改正食糧法の歴史を年表で追ってみます。
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●1942年(昭和17年)
 食糧管理制度(食管法)が制定された。 
 
●1947年(昭和22年)
 農地改革 政府が地主から強制的に土地を買い上げ小作人に売り渡された。7割の農地が小作人のものに変わった。 
 
●1952年(昭和27年)
 食管法を一部改正。生産者米価と消費者米価の「二重米価制」が採用された。
毎年夏前に政府が米価審議会を開催しそこで価格が決定される。米の生産費のうちの労働費が都市の労働費の賃金との比較で決定されることになった。 
 
●1960年(昭和35年)
 生産者米価の決定方式が「生産者所得補償方式」に変更された。高度成長期の都市の賃金上昇に対応して生産者米価も急上昇した。1963〜1987年まで生産者米価が消費者米価を上回る逆ザヤ現象が続いた。 
 
●1967年(昭和42年)
 他の作物と比較して米は有利に補償されるため、北海道や青森などでも生産が拡大され、史上最高の1400万トンを記録。初めてコメの自給を達成した。 
 
●1969年(昭和44年)
 減反政策が実施される。強制的な生産調整=強制一律減反開始。転作には転作奨励金が出された。自主流通米制度が始まる。政府の買い入れ数量を制限し農協に集荷されたコメの一部を直接卸業者に売却できるようにした。 
 
●1972年(昭和47年)
 「標準価格米制度」が実施された。米の物価統制令の適用が廃止された。 
 
●1978年(昭和53年) 
 減反目標未達成な地域にはペナルティを課すようになった。 
 
●1993年(平成5年) 
 ウルガイランドで米の輸入が決まった。現在はミニマムアクセス(輸入義務)約77万トン。国内生産量の10%未満です。政府が買い上げている為、国内のコメ価格への影響にまではまだ及んでいない。
●1994年(平成6年)
食糧管理制度が廃止され、新しい食糧法に移行した。
 コメの取り扱い業者は許可制から登録制に緩和され、自由米も「計画外流通米」として公認された。コメの入札取引も「自主流通米価格形成センター」として正式に位置づけられた。 
 
●2004年(平成16年)
新食糧法(改正食糧法)が制定され、一段とコメ流通の自由化が進む。 
 
戦後の政府買入価格(生産者手取り価格)の推移を示しておきます。 
 
□政府買入価格の推移(単位:円/60kg)
komekakaku.bmp
(出典:農林水産省統計) 
 
既に昭和40年代に、自給率100%が達成され米余り現象が続いたのですが、長い間、政府の減反政策(供給制限)と統制価格により、コメの価格が維持されてきたのが分かります。 
 
【では現在のおコメの流通と価格形成はどうなっているのか調べてみました。】 
 
□コメの流通ルート 
komerute.bmp
(出典:農林金融2005年3月号) 
 
改正食糧法では、計画外流通米は今まで農家が直接消費者に売るしか出来なかったが、スーパーでも売れるようになりました。(ブランド米が店頭に並ぶようになった。)
自主流通米価格センターがあらたに米穀価格形成センターになり、産地や銘柄や売買の量になどによって価格が決められるようになりました。
(政府が決められるお米は備蓄米などの政府米だけになった。)
政府が関与しない「米価格センター」での入札で、お米の価格が決まっています。米不作の年には価格が急騰しましたが、過去10年以上、コメ価格の長期値下がりが続いています。 
 
■価格センターの入札価格の推移(単位:円/60kg) 
komekakaku02.bmp
(出典:北陸農政局資料) 
 
今後、一段と自由化された流通により、豊作の年は、価格が下落して行くのでしょうか?
それともより美味しいコメ(ブランド米)づくり競争により、価格は上昇するのでしょうか?
(棚田米の人気が高く、普通のお米価格の3倍、5倍で取引されているといわれています。)
国際的な穀物価格の高騰時代が始まりました。
パン・麺類の価格上昇から、米への消費シフトが起こり、自由化された「米価格」が値上がり基調に転じ、米生産量が拡大し食料自給率の上昇につながる事を期待したいですね。
 

List    投稿者 shigeo | 2008-07-24 | Posted in 06.現物市場の舞台裏5 Comments » 

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コメント5件

 yutakarlson | 2008.11.16 11:49

■世界経済と米国経済危機、3つのシナリオ「今の金融危機は問題の“症状”であり、“原因”ではない」-日本の明治維新を思い出すとき!!
こんにちは。最近ビジネスウィーク誌が、金融危機を脱するための3つのシナリオを出しました。そうして、一番良いシナリオは、イノベーションであり、特にアメリカが長期間にわたって大きな投資をしてきたバイオ産業、ナノテクの分野からイノベーションがおこることを期待するとしています。しかし、私はこれだけでは経済危機を乗り切ることは不可能だと思います。これを成就するためには社会的イノベーションが不可欠だと思います。これに関して、特に日本には非常に良いお手本があります。それは、明治維新です。これは、偉大な社会的イノベーションであり、世界に類を見ない無血革命だったと思います。今のこの時期こそ、明治維新を見直すべきです。私のブログでもつい最近オランダで発見された幕末の志士たちが一同に介したこの貴重な写真を掲載しました。素晴らしい写真だと思います。詳細は是非私のブログをご覧になってください。

 nakamura | 2008.11.22 21:48

道州制とは、簡単に言うと国が決めた法律を地方で勝手に変えられるってことですよね!例えば、国か規制する薬物を自由に輸入することが出来る。地方の自立や活性化を通じ地域間の格差解消に取り組むと言うよりは、国家秩序の崩壊に向っている様に思いますね。

 匿名 | 2008.11.22 21:56

少し忘れかけていた、道州制のはなしが、急転直下こんなに進んでいるなんて!!
金融危機に隠れて何を考えているのか?
未だに、道州制が本当に必要か?はっきりしていないのにという気持ちです。

 orisay2 | 2008.11.22 22:33

yutakarlsonさん、nakamuraさん、名無しさんコメントありがとうございます。道州制は、国の骨格を現在とは、全く異なるものに変えることを意味します。マスコミが大々的に取り上げていませんが、中央や自治体の長レベルでは、以前からかなり議論されています。地方の活性化を問うならば、本来は、もっと地方発の機運が高まる中で、出てくるものであるのが筋だと思いますが、大阪、宮崎等話題性のある都道府県が取り上げられるのみで、普通の市民は、あまり関心がないのが、実態であるようです。道州制を問う前に、まだ議論すべきことが、あるように思います。何か短絡的な解決策であることに私も違和感を覚えます。今後も機会を見て、発信していきたいと思います。

 blue hermes handbags | 2014.02.01 16:48

hermes bag zindagi na milegi dobara 金貸しは、国家を相手に金を貸す | この国は、どこへ向かおうとしているのか?

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