ゴールドの真相に迫る14 今後の金(ゴールド)の動向
これまで、“ゴールドの歴史”シリーズと題して、8回にわたって、”金がどのように人類と関わり、その役割をどのように変えてきたのか?”を押えてきた。
ゴールドの真相に迫る12 ゴールドの歴史(8)まとめ
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前回に引き続き、豊島逸夫「金を通して世界を読む」を用いて、時間を現在に引き戻し、“各国がどのような目論見を持っており、金市場が今どのように動いていくのか?”を紐解いていきたい。
前回の記事「第5章 金を動かす各国の思惑」の要約から、世界各国が金(ゴールド)と何らかの立場で関わり、金を操作、あるいは集めようとする意向があることがうかがえた。
今回は、各国の動向を踏まえた上で、「第6章 これからの金を見るポイント」の要約より、世界へと視点を拡げ、金(ゴールド)が今後、どのような動きをしていていくか?について探っていく。
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■1.1990年代の大量金売却と99年ワシントン協定は何を意味しているのか?
・世界の中央銀行は29,000トン(2010年)もの金を公的保有しているが、1990年に欧州各国が次々と大量売却に踏み切った。表向きの理由としては欧州各国の対外準備資産における金のシェアは50〜60%前後とかなり高く、外貨準備ポートフォリオのリバランスを図るというものである。
・この結果、金価格の下げを加速する結果となり、市場の不安感は増す一方となった。そこで1999年、「ワシントン協定」が結ばれ、中央銀行の金売却に関しては年間400トンという総量を決めた。協定直前まで金価格は250ドル台/オンスを低迷していたが、この条約締結を機に一転に上昇基調に入った。協定は現在も引継がれている。
1990年代、全世界的に金を売却した真の理由は、基軸通貨である米ドルの価値を維持するためだと考えられる。(シリーズ11参照)金売却の結果、公的保有された金保有量が減少し、民間による金買いが加速したため、金の行方が不透明となった。
1999年、「ワシントン協定」によって中央銀行による金売却の制限がかけられたが、実際はどんどん流れていった。また99年は、ヨーロッパでユーロ導入の最終決定がなされた年、さらに金の価値が下落から上昇に転じた年、ITバブルが活発になった都市であった。
よって、99年に何らかの転換があった。
■2.金価格変動の要因と不透明さの高まり
・オイルショックの時には、インフレヘッジとして金に買いが集まり、オイルマネーの金買いもあって、金は一時期4倍まで急騰したが、原油価格が急落すると、金価格も低迷化した。つまり、オイルショック当時の金価格急騰はオイルショックが圧倒的要因であった。
・しかし、直近の金価格上昇は、それを超える要因がある。低金利、ドル安、サブプライム信用不安、インドや中国の高度経済成長など、様々な要因が絡み合っている。ゆえに持続性も、相対的影響も強い。
・金の市場データはGFMSが30年来毎年発行している世界需給データを細部にわたって確度の高い数字で公表している。ただし、生産量に関する唯一の不透明性は生産量が増している中国の金生産量であるので、不透明性が増してきている。
・需要サイドもかなり高い確度で把握されている。ただ、投資の分野では、欧米の投資需要量がつかみにくい事は事実。金融商品化してくると、複雑ゆえに追いきれない。
中国による金買い・金生産が不透明さを増し、金ETFなどの投資市場がさらに不透明さを加速させている。
世界は、ドル基軸通貨体制から離陸路線を取り始め、一方で、表には見えないかたちで金の動きが活発になっている動きが読み取れる。
■3.今後の金市場の行方
○今後の経済動向
・サブプライム危機以降のマクロ経済は縮小均衡となるだろう。その結果、自国通貨安の政策で輸出を増やし、隣国を踏み台にして自国だけ這い上がろうとする政策をとり、地域ごとにブロック化していく。主要には、ドル、ユーロ、アジアがブロック経済化し、各地域で地域基軸通貨が決まるという段階に入るだろう。
・そこに金を含めた通貨バスケットなどが使用される可能性がある。しかし、バスケット通貨がうまくいったためしはなく、ドルが引き続き基軸通貨らしいかたちで、当分は危うい綱渡り状態が続くのではないか。
・国際金融市場は、国家の介入、金融規制によって、レバレッジは大幅に縮小し、投資銀行やヘッジファンドの業務は縮小を余儀なくされるだろう。
○米国と中国の今後の動き
・米国と中国の関係は敵対関係にあるが、中国は対米輸出で資金を貯めこんでおり、米国債を購入して米国の赤字をまかなっているため、お互い持ちつ持たれつの関係にある。ドル安になると一番の不利益を被るのは中国であり、また、外貨準備の大半をドル・米国債で構成されるためドルを買い支えることを余儀なくされる。一方アメリカは外貨準備の8割を金で保有しており、「仮面夫婦」の関係を今後も続けるしかないだろう。
○中東の今後の動き
・サブプライム危機により痛い目にあった中東地域は、その失敗をもとに次に目をつけたのがチャイナマネーである。国際的な天然資源獲得に強い意欲を燃やす中国と、中東以外の地域に分散投資先を物色するオイルマネーとの相互の目論見が一致するかたちでの協働路線に入っていくだろう。
■4.まとめ
90年以降、ドル基軸通貨体制を保つために、大量の金売却が行われたが、99年、ワシントン協定による金抑制(ただし、流出は止まらなかった)、金投機市場の活発化、金価格が上昇に転じた年であった。
その一方で、なおも金売却が続いていること、中国の不透明な生産量や動きが加速していること、金ETFなど金投資市場によりさらに金の不透明さが増している。そして、この動きは、現在の米ドル基軸体制および金融市場の崩壊過程の動きと連動性が見られる。
そして、サブプライム危機を契機に、世界はいよいよ新しい経済システムの構築に足を進めたと考えられる。この金の不透明さの高まりは、次なるブロック経済、バスケット通貨体制の準備が見えないところで進められていることを表しているのだろうか?
次回は、亀井幸一郎「純金争奪時代」の「第3章 金が示す世界経済転換の兆候」を要約し、最も動きが不透明であり、勢力を強めている国家、”中国”がどのような動きをし、何を画策しているかを探っていきたい。
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