2011-10-16

エネルギー市場はどうなっている?(6)〜巨大新興国の成長で激動する天然ガス市場

先行して天然ガスのLNG技術を開発し、日本へのLNG輸入を実現したロスチャイルドが、これにどう対抗したのかが気になるところです。
エネルギー市場はどうなっている?(5)〜石油利権を支配したロックフェラーと、それを入口、出口両方から切り崩したロスチャイルド

 
前回記事では、原油市場支配の歴史的変遷を見てみた。今回は、原油との親近性も高い天然ガス市場の構造について見ていく。

LNGtancer.jpg
LNGを運ぶタンカー

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●天然ガス市場の特性
①市場勢力は原油とほぼ共通
前回記事の最後のグラフからも判るように、エクソン・モービルやBPなど主要石油メジャーは同時にガスメジャーでもあり、その生産量は熱量換算で石油に匹敵する。これは、油田とガス田は重複する場合が多いこと、石油の精製過程でプロパンガスが作られるなど、生産過程での共通項が多いことが理由だ。市場の登場人物はほぼ同じと言ってよい。

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天然ガス油田

 
②石油と異なり他のエネルギー源と競合しやすい
車や航空機の燃料などは石油以外のエネルギー源に代替するのは難しいが、天然ガスは発電や産業部門の消費が大半で、他のエネルギー(石油や石炭、原子力など)との競合圧力に常にさらされている。
 
③パイプラインとLNGの2種の事業がある
陸続きの消費地に直接ガスを送るパイプラインと、−162℃で液化し輸送するLNG(液化天然ガス)がある。輸出入の総量は概ね5:2で、パイプライン輸出の主要国はロシア、ノルウェー、カナダ、オランダ、アルジェリア、LNG輸出はカタール、マレーシア、インドネシア、オーストラリア、アルジェリアなど、国によって分かれる。
 
網の目のように走る欧州のガスパイプライン(こちらより)

 
島国である日本はLNG輸入量世界一と全面的にLNG依存であり、主要輸入先はインドネシア、マレーシア、オーストラリア、カタール、ブルネイとなっている。
日本のLNG輸入量の推移(こちらより)

 


 
●天然ガスを巡るロックフェラーとロスチャイルドの攻防 
天然ガスのメジャーの代表格も、ロックフェラー系のエクソン・モービルとロスチャイルド系のロイヤル・ダッチ・シェルである。現在、エクソンは天然ガスの埋蔵量・供給量において民間企業として世界一、シェルはLNG事業では世界最大の規模を誇る。
 
 
この2社の歴史についてはこちらに詳しい。
Exon_Mobil.jpg VS R_D_Shell.jpg

前回記事にあるように、60年代に中東を押さえ、石油支配を磐石にしつつあったロックフェラーに対し、ロスチャイルド側は、OPEC〜国営石油会社化の仕掛け、原子力エネルギーへのシフトと同時にLNG技術開発を進め、日本などパイプラインの引けない国々への開拓を進めていく。
2回のオイルショックを経て、80〜90年代には世界のエネルギー市場の中で原子力の占める割合が増加し、ロックフェラーの石油利権が次第に弱体化してゆく。
 
世界の一次エネルギー消費の変遷

 
しかし、ロックフェラーも黙っていない。2000年代に入るとエクソンは、カタールのプロジェクトを皮切りに、シェルの後塵を拝していたLNG事業を本格的に拡大していく。ここに中国やインドなどの新興超大国も参入し、00年代前半はLNGビジネスの急拡大期となった。
 
LNG事業の進出先は、シェルがマレーシア・オーストラリア・ブルネイに強く、エクソンがインドネシア・カタールに強い。即ち、日本のLNG輸入先をみても、ロックフェラーとロスチャイルドが凌ぎを削っている状況だといえる。
 
さらにエクソンは、最近話題に上ることも多いシェール(頁岩)オイル・シェールガスの生産技術開発にこの頃から着手し、現物市場での巻き返しを図った。当然、シェルを初め他の資源メジャーもこの新たなエネルギー産出法に着目し、競って開発を進めているのが現在である。
 


 
●天然ガス生産・輸出世界一のロシア
上記では、国際石油メジャーのエクソンとシェルの攻防を見たが、忘れてはならない存在が、生産量約6000億立米、輸出量約1800億立米と、ともに世界の2割を占める世界一の天然ガス国家ロシアだ。その中心はメドベージェフ大統領が会長を務める国営企業ガスプロムで、西シベリアに世界最大級のガス田を持ち、総延長16万kmのパイプラインによって欧州へ供給している。
russia_gas
ロシアの主要なガス田

 
先日のニュースによれば、そのロシアが中国へ年間680億立米、1兆ドルに上る天然ガス供給を始めるという。これが実現すれば輸出量は一気に4割増となり2位のノルウェー、3位のカナダの2.5倍に及ぶ。
 
 
本シリーズの原子力資源編原子力技術編では、ウラン燃料およびウランの転換・濃縮技術分野においても、ロシアのシェアが非常に大きいことが判った。ロイヤル・ダッチ・シェルの出自は、19世紀のロシア石油にあることから、かつてはロスチャイルドとの結びつきは強かったと考えられるが、特にソビエト崩壊以降、世界寡頭支配勢力の覇権闘争の中で、ロシアがどのような立場を取っているのかが、今後のエネルギー市場を読む上でも重要になってくるのではないだろうか。
 
●カナダのガスにも手を伸ばす中国
 米国は石油同様、世界一の天然ガス生産国だが、同時に世界一の消費国=輸入国でもあり、天然ガス輸入のほぼ全てをカナダからのパイプラインに依存している。
 
現在、そのカナダのガスに対しても中国の国営石油・ガス企業が手を伸ばしつつある。カナダの最大手企業エンカナのガス権益の50%取得、デイライト・エナジーというガス企業自体の買収など、供給源の獲得に積極的だ。
 
●急増する天然ガスの“埋蔵量”
石油や天然ガスの「埋蔵量」は、新たな油田やガス田が発見されると増加する。天然ガスは上記のような市場の戦乱を反映し、近年この埋蔵量が急増している。シェールガスを加えれば、これまで約60年と言われていた可採年数が100年も200年も延びると盛んにアピールされている。
 
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天然ガス埋蔵量の推移

 


 
 
ロシアや欧米ガスメジャーなどの近年の活発なガス供給源開発は、中国、インドなど今後巨大消費国となってゆく新興勢力の需要増を見越したものだと考えられ、生産〜消費の各過程において、現在最も市場闘争の動きが激しいエネルギーだと言える。
 
次回は、特に発電分野および新興巨大国家の一次エネルギーにおいては、いまだに高い占有率を保ち続けているダークホース=石炭の市場構造をみてみる。

List    投稿者 s.tanaka | 2011-10-16 | Posted in 06.現物市場の舞台裏4 Comments » 

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コメント4件

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