2008-05-20

地方分権化のグローバリズムの歴史

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いまやグローバルスタンダードとも言えそうな勢いの「地方分権化」の世界拡大の潮流は、どうやら1980年代のヨーロッパが起点になっているようです。
当時の動きを改めて整理してみることで、ややきな臭ささを感じるその背景をさぐってみたいと思います。
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ヨーロッパにおける地方分権化の歴史をおさらいしてみます。
・1972年 イタリア:国の権限の多くが州に移譲
・1976年 イタリア:基礎自治体の再編成・分権化・市民参加に関する法律
・1982年 フランス:ドフェール法(地方分権改革に繋がる法律)
・1985年 EU地方自治憲章
・1990年 イタリア:地方自治法
一方、EU統合の経過を追ってみると以下のようになっています。
・1945年 第2次大戦終結
・1958年 EEC発足
・1967年 EC発足
・1979年 EMS(ヨーロッパ通貨制度)発足
・1985年 パスポート統一
・1992年 マーストリヒト条約調印(EU発足決定)
・1993年 EU発足
・1999年 単一通貨ユーロ導入
EUの統合について、以下のようなレポートがあります。
リンク)以下、抜粋

単一通貨が生まれ、ヨーロッパ軍ができる、外交政策ができる、外務大臣が任命されるというようなことで、EUは一つの国家のような体裁をとるようになってきた。
●統一した通貨になるということは、通貨管理が各国では行えなくなるということを意味する。関税主権、農業政策の主権などにつづいて通貨主権もEUに譲渡されてしまったということになる。これを称して国民国家の解体、あるいは弱体化といったりされている。
●20世紀後半になってくると、国家というものが相対化されてくる。たとえば国際機関、国連のようなものができてきた。あるいはさまざまな国際条約ができた。そうすると国家主権というものが無制限ではなくなってくる。関税権を放棄した自由貿易圏というものが至るところに出てきた。
●EUの加盟国内は人の行き来は自由。国境の検問はほとんどのところで廃止されている。域内では労働許可証が必要なくなっており、従来からスペインなどの南部からヨーロッパ北部へ移民労働があったが、これが93年1月1日から自由になり、労働許可証は要らなくなった
●職業資格というものを相互に認定し合っている。医師とか看護婦とかはいずれも域内で資格が通用する。EUの場合はこれ以外にも美容師、理容師、弁護士の資格を相互に認めようということになっている。このように資格の自由を認めないと域内の他国に自由移動ができるといっても仕事ができない。
地方参政権が93年1月1日に認められた。この地方参政権は市町村レヴェルだが、域内の外国人は投票でき、しかも被選挙権も認めるということになった。

地方分権化と市場統合については以下のような関連性があるようです。(リンク)以下、抜粋

●1970年代になると資本をもっと自由に動かそうということなって、ブレトン・ウッズ体制が崩壊し金融自由化が始まった。
各国の租税負担率と経済成長率の関係をみてみると、1970年代にはほとんど関係がなかった。まだ資本統制が働いていたと考えられる。
これがニクソン・ショックを経て1980年代になると、租税負担率の低い国は経済成長率が高く、高負担の国は経済成長率が低くなるという傾向が明瞭になってきた。これは、高負担の国から低負担の国へ資本が移動した結果とみることができる。
●ヨーロッパでは、こういった金融自由化、グローバル化、ボーダーレス化の流れに対して、2つの方向から対応しようとした。
一つは、国民国家を超えたEU統合。金融自由化を進めようとすると、規制緩和や国営企業の自由化などをしなくてはならない。そうすると弱肉強食、優勝劣敗の傾向が強まる。それでも冒険をしてもらわないとやっていけない。そのためにサーカスの空中ブランコ乗りが失敗しても死なないようにネットを張らなくてはならないが、ボーダーレス化が進展するなかでこれはもはや国民国家ではできなくなっている。
●そこで、地方分権によって地方自治体にセイフティネットを張り替えてもらうことになる。ただし、地方自治体はボーダーレスで現金給付はできないので、代わりにサービス給付によって社会的なセイフティネットを整備。ヨーロッパの地域社会では、医療、福祉、教育といった対人サービスはこれまで教会が担ってきたが、教会が行ってきたサービスを地方自治体が提供することによって、人々は市場経済で安心して生活し、ときにリスクを冒すことができる。
●市場経済を活性化させるためには、地域性を持った社会的セイフティネットが備えられている必要がある。
人々が安心して新しい環境にチャレンジできるように社会的セイフティネットを張り替える——これがヨーロッパにおける地方分権の動き。ヨーロッパではEU統合を進める一方、1985年に「ヨーロッパ地方自治憲章」を制定した。現在、世界34ヵ国で批准されている。

以上を概観すると、市場経済の拡大のために国民国家を希薄化させ、その結果必要な社会のセーフティネットを張るために地方分権を進めるという関連性があるようです
EUというフレームが出来上がった結果、いろいろな制度が国家を超えたEUの機構の中で作られている。
そして、EU機構には議会という存在が一応設置されているものの、国民国家に比べて一般市民からより離れた位置にあり、奥の院でごく一部の人たちによって制度化(実体化)されている。
EU統合については社会システムの変化といった見方が一般的だと思われますが、国際金融資本の望む方向へと市場が拡大され、それを補完するために地方分権化を進めるように、資本家たちの息のかかった一部エリートたちによって誘導されてきていると見た方が正確ではないかと思います。
市場拡大、ボーダーレス化、国際的な市場での競争激化といった動きは必然的なものであり、そのような状況に対応するために地方分権化を進める、というよく言われるストーリーは大きなウソではないかと思われます。
欧米発のグローバルスタンダード(と誰かが勝手に言っているだけ)に追従して地方分権化を進めるということは非常に危ういのではないかと思います。
一方、民主主義あるいは地方自治を追求するという立場から地方分権化を進めるという別の立場があるといわれています。
このような立場とは何なのかについて、次回整理してみたいと思います。
byわっと

List    投稿者 wyama | 2008-05-20 | Posted in 03.国の借金どうなる?6 Comments » 

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コメント6件

 yamasyo | 2008.08.16 21:01

ケインズさんは、経済学者たちの中では偉大な教祖としてその後も信者を拡大していったようですが、最近はあまり名前を聞かなくなっているような気がします。
世界中の高名な学者先生たちの頭脳を洗脳しまくった存在の背後霊のような位置に金貸したちが居たという、その関係構造にも興味をそそられるところですね。

 s.tanaka | 2008.08.16 21:10

まず為替をドカンと落として資産格差をつくりだしておいて、製品を米国が買い取る加工貿易国(=安い工場)に仕立て上げ、一方でより大事な食料については輸入依存を進めることで日本を経済的に支配していく、というのが当時の米国の青写真。
その背後に、米国の他国支配の道具としてドルを世界中にバラ撒かせる金貸しの戦略が働いていたのかな、という感じがしました。「ゴールドスミス」「グッゲンハイム」←これ気になりますね。

 mihori | 2008.08.18 14:32

yamasyoさん☆コメントありがとうございます♪
>世界中の高名な学者先生たちの頭脳を洗脳しまくった存在の背後霊のような位置に金貸したちが居たという、その関係構造にも興味をそそられるところですね。
なんとなく“学者が有名になれる=金貸しの都合がいい理論を提唱している”ぐらいの感覚になってきますよね。特に、経済理論とかってそうなんだろうなぁ。。。と思ってしまいます。

 mihori | 2008.08.18 15:44

s.tanakaさん☆コメントありがとうございます♪
>その背後に、米国の他国支配の道具としてドルを世界中にバラ撒かせる金貸しの戦略が働いていたのかな、という感じがしました。
本当に、日本の高度経済成長を見てもだし、他のこのブログの記事を読んでると、どこにでも裏には“金貸し”の存在があるんじゃないかと思ってしまいます。
>「ゴールドスミス」「グッゲンハイム」←これ気になりますね。
ゴールドスミスは、ちょっと勉強したことがありますが、グッゲンハイムはまだ勉強不足であまりピンとこないです(>_s.tanakaさん☆コメントありがとうございます♪
>その背後に、米国の他国支配の道具としてドルを世界中にバラ撒かせる金貸しの戦略が働いていたのかな、という感じがしました。
本当に、日本の高度経済成長を見てもだし、他のこのブログの記事を読んでると、どこにでも裏には“金貸し”の存在があるんじゃないかと思ってしまいます。
>「ゴールドスミス」「グッゲンハイム」←これ気になりますね。
ゴールドスミスは、ちょっと勉強したことがありますが、グッゲンハイムはまだ勉強不足であまりピンとこないです(>_<) 調べてみま〜す☆

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