2012-05-25

『日本国債暴落の可能性は?』【6】コラム①:格付け会社って何?

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前回は、国債って誰が持ってる?について整理しました。今回は、その国債や国、企業を格付けする会社とは何者なのかをコラム①:格付け会社って何?をテーマに追求、調査してみたいと思います。宜しくお願いします。
『日本国債暴落の可能性は?』シリーズ過去記事は以下を参照。
【1】プロローグ
【2】国債って何?:基礎知識の整理①
【3】国債発行の歴史と直近の発行残高(国の借金1000兆の実態)
【4】国債発行と流通の仕組み:基礎知識の整理②
【5】国債って誰が持ってる?(保有者の実態)
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□格付けとは
格付けは、発行体の信用力に関する格付け(発行体格付け)と特定の債務に関してその債務者の信用力の格付け(個別債務格付け)に大別される。格付け会社は対象である債券発行側から手数料収入を得て格付けを行うというビジネスモデルを行っている。
ここで重要なのは、「債券発行体から格付け評価の手数料を受け取るビジネスモデル」を採っている点です。この現実が意味する事は、「かなり恣意的に格付けを行い、不正確な評価や市場混乱を引き起こす事が可能な構造」という事です。
ただの、格付け会社の一方的な意見であると言うことです。
□格付け会社の歴史背景

格付けは、鉄道会社の社債など償還期限の長い債券を対象として誕生したといわれています。
その後、企業の資金調達の方法が多様化し、金融商品の種類やデリバティブ(金融派生商品)など続々と新しい商品が登場したため、格付けの対象も投資家のニーズに対応して拡大してきました。
現在では長期債から優先株、銀行預金、保険や公社債投信などのファンド、さらには住宅ローンや自動車ローンなどのさまざまなローンを担保としたストラクチヤード・ファイナンス(資産担保証券)など、格付けにはなじまない証券も格付けの対象となっています。
また、格付けとは元来、個々の債券に対する信用力の指標でしたが、最近では企業の信用力そのものを評価する格付けも登場している。さらに国や政府機関の信用力を評価する格付けもあります。

□圧倒的力を持つ格付け会社のビッグスリー
ニューヨークに本社を置くムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズ、そしてニューヨークとロンドンに本拠を持つフィッチが有力な格付け会社ビッグスリーとして、世界の格付けの98%を手がけ、格付け産業の総収入の90%を占めている。
3大格付け会社の概要

ムーディーズ
1900年にジョン・ムーディーによって設立され、1909年にムーディーが最初の債券格付でアルファベットの記号を利用した格付を導入して以来今日まで、この表記法が信用評価の国際的なシンボルとなっています。ムーディーズの最初の格付は米国の鉄道会社250社以上の債券を対象としたものでしたが、1914年には、主要な事業会社と公益事業会社の社債に、1920年代初期には、米国の都市、またその他の地方公共団体の公共債まで格付対象を広げた。
スタンダード・アンド・プアーズ
創業は米国の鉄道会社に関する歴史的包括的な財務・業績データ本を出版したのが始まりです。現在のS&Pは、1941年、プアーズ出版とスタンダード統計所という2社が合併した事により生まれた。
フィッチレーティングス
1913年にジョン・ノレス・フィッチがニューヨークに設立。1924年に今では一般的となっている「AAA」から「D」までの格付け表示を他社に先駆けて導入しました。

□格付け会社は世界をどう見ている?
近年の各国の格付け状況
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日本国債各付け推移
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近年の状況として、リーマンショック後の不況による税収減や、過去最悪の予算を組むなど財政膨張路線をとる民主党への政権交代など不幸が重なり急速に財政が悪化したため、2011年1月にAAからAA−へと格下げ。
そして、欧米格付け会社フィッチは2012年5月22日、日本の円建て長期国債の格付けを、「ダブルAマイナス」から1段階引き下げ、上から5番目の「シングルAプラス」にしたと発表した。
フィッチによる格下げは2002年11月以来、9年半ぶりで、格下げの理由について、日本の「財政健全化に向けた取り組みが切迫感に欠けると思われ、(財政再建)計画の遂行は政治リスクが伴う」と指摘。消費増税についても「依然として政治的な論争の的になっている」とし、消費税法案の成立が見通せない現状に言及している。
ギリシャ国債格付け推移
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2010年初頭、ギリシャが財政赤字を隠蔽していた事が発覚し、ユーロ圏の通貨危機が起こり、世界的なソブリン不安へと拡大していきました。それによって、3大格付け会社は国債格付けの値を下落させた。
□格付け会社はなぜ民間か?
なぜ民間企業にしかすぎない格付け会社が、国家の経済を破綻に追い込むほどの影響力を持っているのか?
●格付け会社の罪業
日本の財務省」も言う通り、格付け会社の格付けは極めて「定性的」であり、要は格付けの根拠がさっぱり分からないのです。
これに対し、公認格付機関は「言論の自由」に保護され、「目論見書等への記載内容の同意に伴う民事責任」を免除され、「投資顧問業としての義務も実質的に免除されている。」などと言った意味不明な理屈で反論し、責任逃れができるジャーナリストとしての特権まで確保している。
しかし、「主権侵害になるような言論の自由」やら「世界経済を混乱に陥れ、各国国民を苦しめる言論の自由」など存在しません。
とはいえ、日本などのわずかな例外を除き、欧米主要国などは政府の国債消化を「国際金融市場」に頼るようになり、格付け会社の影響をダイレクトに受けざるを得ません。結局のところ、いわゆる「グローバリズム」の弊害の一つであり、世界経済に混乱をまき散らすだけの格付け会社など、世界にとって無用の存在である。
●世界で格付け会社設立が広がるワケ
新たな格付け会社を設立する動きが各国で活発になってきている。中国やロシア、ヨーロッパではドイツのコンサルティング会社ローランド・ベルガーの創始者が新しい格付機関の設立を準備している。
□まとめ
以上より現在の状況をまとめると・・・
・格付け会社とは「格付けは言論の自由である」などと言った理屈で一方的な意見を言い、恣意的に格付けを行う集団であること。
・世界経済に混乱をまき散らすだけの格付け会社はマーケットから相手にされなくなっている。
・各国独自の新たな格付け会社を設立する動きが活発になってきている。
・格付け会社はマスコミのような存在で無用である。

このように、2007年のサブプライム問題、08年のリーマン・ショックから抜け出せない世界経済は今、まさに米国の債務上限問題、欧州のソブリン危機に直面している。そうした中、欧州を中心に「新たな格付け会社」設立の動きが急浮上している。
格付け会社の意見だけで世界経済が混乱する社会は考え直す必要があり、市場の認識を明確に捉えなければならない。また、世界経済に混乱をまき散らすだけの格付け会社はマーケットから相手にされなくなっているのが現状である。
上記より、格付け会社はマスコミのような存在であり、いいかげんであることがわかったのではないでしょうか。
しかし、このような状況において、新たな格付け会社の動向は今後も注目していく必要があるだろう。
次回は、ヨーロッパ各国で金利上昇など不穏な状態である「国債市場の動き」について調査・追求します。いったい国債の変動は何が原因で誰が操っているのか?・・・お楽しみに。
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List    投稿者 seya | 2012-05-25 | Posted in 03.国の借金どうなる?No Comments » 

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