2023-01-17

金融の構造② 債務マネー → インフレの構造と金利

金融の構造① 銀行システム(中央銀行+銀行)と債務マネー
・・・の続きです。

先進国の債務マネーに対して、ロシア発資源マネーの挑戦。
中東がロシア側について、金貸しの債務マネーシステムが風前の灯。

そして、世界の負債は300兆ドル(4京500兆円)に膨らんでいる。
この状況で、中央銀行は深刻なジレンマに陥っている。インフレ抑制→金利上昇を優先するのか、金融緩和を続けるのか?
どちらにしても先進国は、財政拡大→債務マネー発行拡大を続けるしか手がない。

インフレは続くのか?・・・と聞かれれば、上記の構造から“続く”。
それ以上に、現在の先進国の債務マネーの終焉が迫っている。ドルを頂点とした債務マネーの寿命はあと数年か。

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※インフレは、米国側である西側諸国の問題であることに注意。
ロシア・ユーラシア同盟にインフレは、ほぼ起こっていない。

今後を見るために、金融・貨幣の構造から読み解いてみる。
前回記事 リンク からの金融構造を概略まとめると

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① 中央銀行が国家・銀行に、国債(借用書)を担保に貸し付け、通貨を創造。
② 銀行が企業・国民に貸し付け、通貨を創造(預金マネー)。

※根本にある、中央銀行の紙幣の価値の裏付けは、徴税権にある(税金の先取り)。
※全体を通じてB/S(資産=負債)という構造で貫徹される。

これは西側先進国共通の構造。ドルだけが基軸性を持つのは、最初は金兌換、次に石油との交換という裏付け(ペトロダラー)と、国際決済SWIFTでの必要性から。その構造は徐々に崩れている。
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●通貨安とインフレの構造
インフレの原因は大きく2つある、一つは通貨(債務マネー)の過剰発行であり、もう一つは需要>供給。
※通貨発行は、発行者に利益をもたらすため、常に過剰発行されていく。そのためにインフレが起こり、信用を保つためには金利政策がある。

1. インフレの根源は通貨の過剰発行
インフレの最大の要因は中央銀行によるマネー(通貨)の過剰発行(ex異次元緩和や江戸時代の改鋳)。単純に通貨量が倍になれば、価格は倍になる。その分通貨価値は下落している。

通貨価値の下落は、まず外為レートの低下に現れる。
2014年~異次元緩和での円増発で、円はドルに対して約60~70%下落(10年に渡る円安傾向)
参考:ソロスチャート

通貨価値が下落し、次にインフレが起こる。ex円安 →輸入価格上昇 →インフレ。

※通貨の過剰発行によるインフレは、国家の負債を減額させる(密かな税金)。
日銀が目標としている2%のインフレの意味。50年間では64%のインフレとなり、国債価値は3分の1に減額する。現在のアメリカのように10%のインフレなら、10年で約3分の1へ激減する。
→通貨の発行が発行者にもたらす利益(通貨発行権・領主権:シーニョレッジ、徴税権)は、中央銀行と国家にある。
※ハイパーインフレを起こすのは簡単(通貨の過剰発行)、納めるのも簡単(通貨の回収)。ハイパーインフレを起こせば、財政再建はすぐできる(お上の伝家の宝刀)。

★さらに、基軸通貨であるドル増発は、世界に対して同じ構造(徴税力・支配権を持つ)であり、世界のインフレの根源となっている。中露のように、ドル圏から離れることは、この支配から逃れることを意味する。
※従って、各国の通貨価値を考えた時、基軸通貨ドルに対してと、ドルそのものの価値下落の2重で考える必要がある。


2.インフレのもう一つの原因:需要>供給 →インフレ

もう一つのインフレの原因は、需要に対しての供給不足から発生する。今回の世界インフレは、先進国の過剰発行マネーに対して、資源国が供給側から仕掛けたインフレ。
中露だけでなく、金貸しも地球温暖化、流通網の遮断や、ファンドによる資源先物での吊り上げでインフレを加速させている。上記のようにインフレ分、銀行システム+国家の負債は減っていく。
また、コロナで人々は以前より働かなくなったと言われる。労働面からの供給減があり、その割に消費はそのままという行動の変化がある。

※しかし、インフレの本質は、需要>供給よりも、通貨増発であることに注意。
吉田繁治氏によると、ドルと金がリンクを失った1970年以降の、この50年間で、通貨は、金・原油・株価に対して、年平均8%減価。これは預金金利が同等のレベルがないと釣り合わない勘定だが、金利は一貫してインフレよりかなり低い。知らない間に減価されていく仕組み。


3.金利

金貸しは好況時にはなるべく金を貸したい→マネー増発(信用創造)、しかしリスクが高まるとマネーの回収にはいる=リスクに見合った金利に上げる。
→必然的に好不況のサイクルが発生する。資本主義社会に特有。
国民・預金者から見ると、金利がインフレ率より著しく低いと、預金の意味を感じないので、通貨の信用問題になる。その意味で、金利は通貨の信頼度を現すことになる。

国家レベルで見ると
・金利を上げることは、中央銀行が国債の買い入れを控えること。そして、市民からの銀行への預金が増える。 →通貨が回収される(信用収縮)。
・金利を下げることは、中央銀行が国債を指値買いして、通貨を増発すること。
→昨年、日銀は10年もの国債の金利を0.25%に抑えるために、国債を買いまくった。→円増発。

※低金利→通貨増発はインフレを呼ぶが、低成長で実需がない場合、株や土地投機に向かい、バブル(資産インフレ)が発生する。現在の世界バブルの根源。


★今後のインフレどうなる?

中央銀行による財政ファイナンスは今後も続けざるを得ない(特に日本、昨年末29兆円の財政ファイナンス)。従ってインフレの根源である、通貨過剰発行は続けられ、インフレは続く(財政インフレと言われる段階へ突入)。

※インフレ対策として金利を上げても、その国債金利は誰が払うのか?→各国共に、国債に頼るしかない→国債増発、通貨発行量大。従って景気が悪化し、需要が減っても、インフレも酷くなる(財政インフレ、スタグフレーション)。

※円安はどうなる?
→ドルは6月まで利上げを進める見込み。一方で上記のように石油の裏付けは失った。従って6月以降ドルは急落していく。ドルに対しては、円等は上がっていく。しかし資源国通貨やドイツ・スイスのような財政赤字の少ない国家に対しては、通貨増発から下がっていく。
円は、ドルほどではないが、国債も円も次第に信用を失っていく。


★まとめ

・現状の西側世界は、国家支配(徴税権)、その上にアメリカ・金貸し(ドル支配)という二重の支配構造が組み込まれた通貨体制になっている。
・債務の根源は国家(徴税の先取り)、債権者は銀行を媒介して国民だが、通貨発行権を持つ中央銀行のさじ加減一つで、インフレもバブルも可能(金貸し支配)。
・誰かの債務(特に国家)=誰かの資産(特に金貸し)。それが溜まって4京500兆円。これは、インフレか資産税・預金封鎖が、必ず必要になる。(かっては戦争によって没収されてきた。)
・根源は、国家・金貸し支配⇒債務マネーという仕組み、それに対してロシアによる新通貨構想(資源を裏付けにしたリアルマネー)、この2つのシステムが当面併存、ドル崩壊の予測から新通貨システムへ収束していく?

by タロウ

List    投稿者 inoue-hi | 2023-01-17 | Posted in 03.国の借金どうなる?, 05.瓦解する基軸通貨No Comments » 

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