2010-08-05

日本の税システムを考える−13 エピローグ〜充足発の税システムへ〜

これまで、合計17回に渡って、日本の税システムの仕組みと問題点、ブログ界での新たな提言、そしてこれからの時代にふさわしい税制の提案を行ってきた。
【日本の税システムを考える】シリーズ過去の記事
第1回 プロローグ
第2回 税金の基礎♪〜税金の種類・税収合計額〜
第3回 戦後の税制の基礎を定めたシャウプ勧告とは
第4回 日本の税制の問題点 その1
第5回 日本の税制の問題点 その2
第6回 日本の税制の問題点 その3
第7回 番外編☆世界のおもしろ税♪①
第8回 一般取引税で社会が変わる!?(1)
第9回 一般取引税で社会が変わる!?(2)
第10回 一般取引税で社会が変わる!?(3)
第11回 一般取引税で社会が変わる!?(4)
第12回 一般取引税で社会が変わる!?(5)
第13回 一般取引税で社会が変わる!?(6)
第14回 番外編☆世界のおもしろ税♪②
第15回 新時代にふさわしい税システムとは?(1)
第16回 新時代にふさわしい税システムとは?(2)
第17回 新時代にふさわしい税システムとは?(3)
第18回 エピローグ(今回)
今回は、税シリーズの一旦のまとめに当たって、改めて大上段に「税」とは何か、そして、第15〜17回の提案のさらに先にある、税制の未来像を考えてみたいと思う。
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●税の本質は『社会(集団)統合負担の適正配分の仕組み』
国家という存在が成立して以降、一貫して、徴税制度はあらゆる国家社会に例外なく存在し続けてきた。歴史的には、中国や日本の租・庸・調(米・労役・絹)や江戸時代の年貢のように、様々な税の形態が存在した。これが、何にでも使える金銭に統一され、一定のルールで国民から徴収されるようになったのが今のシステムだ。
なんであれ、集団あるいは社会は統合されなければならない。そして統合するためには、物資であれ労働であれ金銭であれ、相応のコストが不可欠になる。従って税の本質とは、顔が見える範囲を超えて巨大化した集団・社会において、絶対的に必要となる統合のための負担を、その成員の間で適正に分担するシステムだと言える。
●私権統合時代に刻印された、税の否定的性格
一方、国家が行う「徴税」に対しては、歴史上ほぼ一貫して負のイメージがつきまとってきた。イメージだけでなく、実際に搾取や強制課題としての性格を多かれ少なかれ税は帯びている。このような税の否定的性格は、過去3000年間の私権時代に刻印されたものだろう。
かつて、物資・金銭あるいは労働などの形で庶民から徴収された税は、国家の支配者やその軍隊が消費する食料や衣類あるいは城になった。暴君の課す税は庶民に理不尽に重く圧し掛かり、その生活を苦しいものにした。現在の民主党のように、増税発言が政権のアキレス腱になるのも、このような庶民にとっては苦役にしか感じられないという税の性質・イメージ故だ。

godiva.jpg 
11世紀英国で、市民への重税をやめるよう夫の領主に進言し、その条件として全裸で馬に跨り
町中を歩かされたゴディヴァ夫人。この伝説がチョコのGODIVA社の社名とシンボルの由来に。

また、第15回〜第17回の記事で提案した、税制による政策誘導も、目的はどんなに素晴らしくても、結局はある政策を促進したい時は減税し、抑制したい時は増税しという、庶民をカネで動かす『アメとムチ』の方法論という印象は拭えない。
これら税のマイナス面の根本原因は、社会(国家)統合という課題の決定権が、一部の支配階級や統合階級の手のみに委ねられ、庶民はその負担だけを担う私権国家の構造にある。
●社会の当事者として誰もが進んで負担する、『充足発の税システム』へ
第15回〜第17回の記事で提起した新たな時代=共認時代の最終イメージは、言い換えると“誰もが当事者として自ら共認を形成し、社会統合を担う”時代である。
自らが当事者となって主体的に行う活動に対して、必要なお金を使ったり身体を動かすことを“苦”だと思う人間はいない。だから、誰もが社会の当事者となる共認原理の社会が本当に実現されたなら、私権時代に刻印された税のマイナス面は払拭される筈だ。
そこでは、自ら主体的に共認形成に参画し、そこで必要と認められたことに、喜んで必要な税を拠出するようなシステムに変貌していくだろう。
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善意でも強制でもなく、当然のこととして誰もが必要な負担を払う税システムへ

また、現在、税として徴収されたお金の大半は公務や公的事業の人件費として使われるが、誰もが社会統合を担うということは、誰もが公務の一部を担うのに等しい。第16回の記事で提起した「徴員制」などは、かつての「庸」に匹敵する労務としての税負担と見ることも出来る。このような税負担の多様化によって、現在のように金銭で計上される歳入・歳出は次第に小さくなっていくことも予想される(ただし、これは単なる民営化による“小さな政府化”ではない)。
このような充足発の税システムなら、今の日本のような取り返しの付かない程膨大な国の借金の問題も、姑息な脱税といった問題も起こらないのではないだろうか。こうしたシステムは果たして実現可能なのか?可能だとしたら、どのように構築されるのか?機会があればまた考えてみたい。
次回、本編以上に(?)好評の、番外編☆の記事を2本アップして、本シリーズを終了とします。
お楽しみに♪

List    投稿者 s.tanaka | 2010-08-05 | Posted in 03.国の借金どうなる?1 Comment » 

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コメント1件

 hermes bag outlet | 2014.03.13 4:41

hermes versandschein online ausdrucken 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 市場縮小の深層:11 「国家が過去の遺物であることが、鮮明になりつつある」

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