2010-06-10

日本の税システムを考える−8 一般取引税で社会が変わる!?(3)

こんにちは〜
これまで、「一般取引税を導入して夢のジパングへ」という論文を参照して、
日本の税システムを考える−8 一般取引税で社会が変わる!?(1)
日本の税システムを考える−8 一般取引税で社会が変わる!?(2)
と2回にわたり一般取引税の主旨について紹介してきました。
 上記論文では、その主旨に加え、実際に電子的実取引税(税率3.0%徴税額75兆円 既存国税を全廃した上で30兆円の追加財源が得られる)を導入した場合どのような得失があるのかも考察しています。今回はその考察を見ていこうと思います!
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★考察の対象となるモデルの適用原則は以下のように定式化されています★

 【電子的実取引税の適用4大原則】
1.ライフサイズ:実物経済ベース:実取引税制は等身大の実物経済の上に構築される.
2.ゼロトレランス:例外を許さない:実取引税制ではいかなる例外,特例措置も認められない.
3.アノニミティ:匿名性:徴税権者は徴税を行うために個人情報を必要とせず,また求めない.
4.モニタリングフリー:国民監視の禁止:管理者はシステムを国民監視の目的で使用しない.
【電子的実取引税税率3%モデル】
1.全銀ネット(内国為替制度)上のすべての資金移動に3%の取引税を課する.
  納税義務者は資金の受取人とし,移動にかかる資金に0.03を乗じた金額を
  即時オンラインで源泉徴収する.ATMからの送金も同様とする.
  本人口座への預金と本人口座からの出金には課税しない.
2.外国銀行口座への送金,外国銀行口座からの入金にも課税する.
  外国銀行口座へ/からの送金/入金の納税義務者も資金の受取人である.
  外国銀行本人口座への送金の場合も課税を免れない.
  受取人が外国人である場合も課税を免れない.
  外国銀行本人口座からの出金には課税しない.
3.現金取引には課税しない.
4.外国為替,手形,小切手,証券,債券などの公的クリアリングハウスには課税しない.
  クレジット,電子マネー,ポイント,地域通貨などの私的クリアリングハウスには課税しない.
  クリアリングハウスへの資金の持ち込み,持ち出しの時点で該入金口座に課税する.
5.銀行業務には課税しない(代りに破綻時の救済も行わない).
6.銀行は国の徴税業務を無償で代行する.
  銀行は電子的資金移動にかかわる手数料を(窓口業務を除き)徴収しない.
  銀行は徴収した金額を毎日定時に中央銀行に送金し国庫に納付する.
7.銀行は年度末に徴税額総額を集計し証書を作成して口座名義人に送付する.
  銀行は年度末(ないし各月末)に徴税統計を作成して監督官庁に提出する.
8.中央銀行は電子的実取引税システムを構築し,それを管理する.
9.すべての既存国税課目(消費税・所得税・法人税・相続税・・・)は撤廃される.
  地方税は引き続き存続する.地方自治体は独自の税体系を持つ.
10.電子的実取引税税率は国家予算編成期に国会でこれを定める.
   中央銀行は国会において取引税税率につき意見を述べることができる

  
以上を踏まえて、今回はどの様な可能性(メリット)があるのかを見ていこうと思います。
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◆超安定なシステムである
実取引税システムの課税ベースは全銀ネット上の内国為替トランザクション(決済)である.これは国内における金融取引以外のほとんどすべての電子的決済(送金)を含むと考えられる.つまり,実物経済の循環系であり血流そのものである.(中略)
金融機関には本来的な不安定さが付き纏っているが銀行間の貸し借りなどの不安定要因はこのネットワーク上には存在しない(中略)
電子的実取引税制では税率を調整することによってインフレーションを効果的に防止することができる電子的実取引税制を一種の市場に出回った通貨の回収装置とみなすことは正しい理解だ.(後略)

 
 実物経済に主軸を置いたシステムです。それは、経済を不安定状態に陥らせているマネー経済(博打経済)を、その対象に見ていないということです。更には、このシステムを用いれば、税率の調整でインフレをコントロール出来るので超安定的といえます。
 

◆限りなく公正である
すべての資金移動で「無差別」に同一税率が適用される.税制を歪めてきたすべての「特例」が廃止され,それに伴う業官の癒着が根絶される.(中略)
すべての国民・企業は公的扶助受給者を含め,例外なく「収入」に比例した租税を均等に負担する.(後略)

 
 同一税率を全国民にかけるので平等とおっしゃっていますが、累進課税のような税制がなくなり、所得の高い人も低い人も同じ税率というのは、本当に平等なのでしょうか?疑問が残ります。もう少し検討が必要かも知れません。
 

◆円滑な貨幣循環を促進する
(前略)貨幣発行権が「政府」に帰属することは明らかであるが,その源泉は「政府」の有する貨幣の強制通用力にあり,この強制力に裏付けられた普遍的交換媒体として貨幣は対価なしに使用することを得て来た.電子的実取引税制で金融取引を非課税とする代償として銀行に「送金手数料の無料化」を要求しているのはこのためである.(後略)

 
 円滑な貨幣循環を行う為に、手数料無しにしようということでしょうか。そもそも「お金は国が発行する権利を持つのだから」関係ない銀行が右から左に動かすだけで手数料をとるのはおかしい!と言っているようにもとれます。
 

◆匿名性と捕捉率100%が両立する
(前略)実取引税制では国民の経済活動を監視したり干渉したりすることなく,市民生活の匿名性を守りながら捕捉率100%の完全な徴税を実現できる.徴税者は税金を直接・即時に徴収できるので,原理的に納税者の氏名を知る必要がない.(後略)

 
 補足率100%ということは脱税も防げますね!匿名性の確保は、国民のプライバシーを配慮してのメリットですね。
 

◆徴税コストがゼロになる
(前略)電子的実取引税の場合,好不況に関わりなく徴税コストはつねにゼロである.つまり,これだけで1兆円の経費削減が可能になる.銀行は無償で徴税業務を代行する義務を負うが,これは一種の「労務による納税」と考えられる.とは言え,それも全自動無人装置で実施されるのだからほとんどゼロと言って差し支えなかろう.

 
 徴税コストに1兆円もかかっているのですね!ビックリしました 全自動無人装置で徴税するようになれば税務署員も必要なくなり、公務員も削減されますね。
 

◆税の申告が不要になる
(前略)これまで消費税の収集と納付は流通の各段階でそれぞれの企業に無償で押し付けられてきた.この負担は国税庁の徴税コストには反映されていないが,決して小さなものではない.企業はこれらのリソースをもっと生産的な部門に振り向けることができる.最終消費者が納付した消費税が業者の懐に入ってしまうという「益税」の問題も解消する.

 
 6月になると私の勤める会社の経理部は、法人税の申告などの作業で日曜もなくなるくらい忙しくしていますが、この税制が適応されたら経理の人たちもラクチンですね
 

◆脱税が不可能になる
個人・企業・団体を問わず,銀行口座を持ち通常の経済行為を行う経済主体はすべて徴税対象となるので,脱税を行うことが「原理的」に不可能になる.(後略)

 
 銀行の口座間の振込では課税されるので、課税されない現金取引が増えていくのでは? 🙄 と疑問がのこるところです・・・
 

◆マネーロンダリングができなくなる
電子的実取引税は資金の移動ごとに多重にかかってくるので,犯罪性資金のマネーロンダリング,トンネル会社,不動産の転がし,多重下請けなどの非生産的活動を抑制する効果があると考えられる.(後略)

 
 マネーロンダリングが出来なくなるだけではなく、口座間のお金の移動を減らすため統合・合併されていく企業が増えていくような効果はありそうですね。今後、市場縮小は不可避ですから、これからの社会の在り様に適したシステムと言えそうです。
 

◆税制はシンプルで透明なものになる
電子的実取引税の仕組みは誰にも理解できる.複雑怪奇な税法の特例措置は一切不要になる.税務署もマル査も不要である.(後略)

 
 

◆痛税感のほとんどない税制になる
(前略)電子的実取引税はおそらくほとんど「痛税感」のない税になるだろう.実取引税ではお金が手に入る前に「源泉徴収」されるところにポイントがある.人は一度手にしたものを手放すことには苦痛を感じるが,手に入れる前に失うことに関しては比較的鈍感であるからだ.むしろ痛税感のないことが弊害になる可能性すらある.

 
 論文中には「税がそれ自体経済(貨幣)循環の一部であるということがよく理解されるようになるだろう。」と書かれていましたが、痛税感が全くないというのは、今よりも税に対して関心がなくなり、疎くなっていく気がします。これが、ここで言っている弊害の一種なのかなと思いました。
 
 今回は、電子的実取引税を導入したらどの様な可能性(メリット)があるのかを見てきました。
 法人も消費者も恩恵を得られ、更に現状の税収より30兆円も増えるという点に、まだ疑問が残ります。もう少しどこからの税収が増えていくのか、詳細を見ていく必要がありそうです。
 次回は、論文の中で提唱している、企業に電子的実取引税を適応した場合に従来の税制に比べてどう変わるか?どの様なメリットがあるのか?を検証していきます。それでは、お楽しみに〜

List    投稿者 yhonda | 2010-06-10 | Posted in 03.国の借金どうなる?No Comments » 

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