2019-06-21

国際情勢の大変動を見抜く!-17~ジャック・アタリは世界政府樹立のために市場万能主義の恐怖を刷り込む~

ジャック・アタリ

前々回はグローバリズム思想を広めたアイン・ランド、前回はその思想を深くアメリカの政治に浸透させたブレジンスキー、今回は3人目。ヨーロッパで、ランドの市場における利己主義思想と同じ個人主義思想を掲げ、その歴史的必然としてのグローバル市場化。そして個人主義によるグローバル市場化が人類滅亡に繋がるという危険性を謳い上げて、それを回避する唯一の方法が世界政府樹立としている。彼らは奇しくもユダヤ系で金貸しの手先。

 

ジャック・アタリは未来を予測しそれを当てた「預言者」として有名だが、なんのことはない、金貸しの計画を書き、政府を動かしそれを知っていただけ、或いはその計画を実行しただけ。

 

彼は、アメリカのキッシンジャー的な存在。キッシンジャーはロックフェラーの番頭。アタリの親玉について具体名は書いてませんが、フランス政府→EUを動かしていることから推察するとロスチャイルドか。

 

彼の主張は以下。

・マネーを操る個人(私人)が市場の支配者である

・個人のマネーが国家を無力化する

・「世界の唯一の法と化した市場」が「超帝国」をつくる

・市場万能主義の超帝国では超格差社会になる

・「超帝国では自然環境は喰い物にされ、軍隊・警察・裁判所も含め、全てが民営化される」

 

・市場万能主義社会は人類を滅ぼす危険性がある

・「人類の残された選択肢」とは民主的世界政府の樹立

・民主的世界政府は「超民主主義」に基づくもの

・「超民主主義」とは世界のあらゆる悪を超越する新たな人類の境地

 

盗人猛々しいとはまさにこのことを言う。現代の悪とは国家に寄生し、養分を吸い尽くす金貸し勢力自分自身のことではないか。

上記主張は、世界政府樹立という目的があり、そのために詭弁:架空観念を並べる倒錯観念そのもの。

 

嘗て原爆規制を錦の御旗にアインシュタインや湯川秀樹が提唱した世界政府樹立のプロパガンダの焼き直しと筆者は言う。確かにすべてはマッチポンプ。

 

「金貸し支配」の視点で歴史を振り返っていくと、史実が炙り出されてくる。ある意味非常に分かりやすい。次回はこの金貸し支配の構造について紹介します。

 

 

『世界を操る支配者の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。

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■ジャック・アタリという「預言者」

 

フランスにジャック・アタリ(1943年~)という人物がいます。本章で取り上げる3人目が、このアタリです。アルジェリア生まれのユダヤ系フランス人アタリは、サルコジ元大統領の下で、21世紀に向けてフランスを変革するための政策提言を行った「アタリ政策委員会」の委員長を務めたことで、一躍日本でも有名になりました。2006年に『21世紀の歴史―未来の人類から見た世界』を刊行し、21世紀の世界政治経済情勢の見通しを予測しました。この本は日本に対する否定的評価に満ちていますが、グローバリズムとは何かを考えるうえで、貴重なヒントを与えてくれています。

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アタリがまじめな学問的知識に基づいて21世紀の未来を予測したのであるならば、本書は丹念に読まれてしかるべきでしょう。しかし、残念ながら本書は一種のプロパガンダ本です。学問的誠実さによって書かれた本ではなく、これからの世界を設計する勢力の未来図を描いてみせたものです。

 

その理由は彼の経歴からうかがい知ることができます。アタリはフランソワ・ミッテラン大統領の下で大統領特別補佐官を勤めましたが、このとき38歳という若さで職に就きました。ミッテラン大統領の時代は東西冷戦の終了、ヨーロッパ統合の深化(ヨーロッパ単一市場からヨーロッパ連合―EU―へ)という激動の時期でしたが、ミッテランの側近として、ドイツ再統一に際しては西ドイツのコール首相やイギリスのサッチャー首相などと直接渡り合ったと言われています。

 

このような彼の経歴を見ますと、アタリはフランスあるいはヨーロッパのキッシンジャーの役割を果たしたように感じられます。キッシンジャーがロックフェラーなどアメリカのエスタブリッシュメントの意向を受けて、歴代のアメリカ大統領に絶大な影響を及ぼしたことに鑑みますと、アタリもヨーロッパのエスタブリッシュメントの意向を受けて、ヨーロッパ首脳に影響力を及ぼしていたことが容易に想像できます。ヨーロッパのエスタブリッシュメントとアメリカのエスタブリッシュメントは表裏一体ですから、アタリの著作を読めば、この世界を動かしている人々の考えがどこにあるのかを知ることができるのです。

 

『21世紀の歴史』の中で大いに参考になるのは現状分析です。アタリは明確に21世紀初頭の世界を次のように概観しています。

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現状はいたってシンプルである。つまり、市場の力が世界を覆っている。マネーの威力が強まったことは、個人主義が勝利した究極の証であり、これは近代史における激変の核心部分でもある。すなわち、さらなる金銭欲の台頭、金銭の支配が、歴史を揺り動かしてきたのである。行き着く先は、国家も含め、障害となるすべてのものに対し、マネーで決着をつけることになる。

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この記述は、グローバリズムとは市場が全権を持つ世界であり、マネーを操る個人(私人)が市場の支配者であることを鮮明にしています。キーワードはマネー、個人、市場です。アタリは徹底した唯物主義者です。世界を覆う市場の力とは、唯物主義的観点からの世界の分析なのです。

 

これらは、奇しくもアイン・ランドの主張と軌を一にしています。アタリが「個人主義の勝利」と高らかに記すのと、ランドが徹底した利己主義こそ人間の権利であると訴えるのは、同じ意味を持っています。共通項は、政府(国家)の否定です。個人がマネーの力によって国家を無力化できると言っているのです。

 

たしかに、アタリが言うように「現状はいたってシンプル」なのです。マネーが全てなのです。アタリが「国家も含め、障害となるすべてのものに対して、マネーで決着をつけることになる」というのは、やがて国家も民営化されるということです。アタリはこう続けます。「世界の唯一の法と化した市場」が「超帝国」を形成し、この超帝国が富の創出の源泉であり、極度の富と貧困の元凶になる。つまり、市場万能主義の超帝国では超格差社会になると言っているのです。そして、「超帝国では自然環境は喰い物にされ、軍隊・警察・裁判所も含め、全てが民営化される」、すなわち国家が民営化されるのです。

 

実際に国家(政府)機能の一部は、すでにかなり民営化されています。例えば、アメリカでは一部の刑務所が民営化され、民間企業が刑務所を運営し、着実に利益を上げています。投資家にとっては、刑務所はローリスク・ハイリターンの確実な投資先です。犯罪者は増えこそすれ減ることはありません。刑務所需要が供給を上回るので、刑務所経営企業への投資は確実に儲かるのです。また、イラク戦争で有名になりましたが、軍事請負民間会社も出現しました。ブラック・ウォーター社がそれです。現在のウクライナ紛争においても、東部の親露派武装勢力の鎮圧にアメリカの民間軍事会社の傭兵が使われていると言われています。

 

■世界政府樹立のために市場万能主義の恐怖を刷り込む

 

アタリは単に恐ろしい未来図で私たちを脅しているだけではありません。この点が重要なのですが、アタリは市場万能主義社会は人類を滅ぼす危険性があるとして、このような悲観的な未来を避ける方法を提言しています。要するに、人類が滅びたくなければこの道しかないといっているのです。アタリの言う「人類の残された選択肢」とは、民主的世界政府の樹立です。民主的世界政府は「超民主主義」に基づくものであり、「超民主主義」とは、現在の世界のあらゆる悪を超越する新たな人類の境地であるとするのです。

 

一見すると、大変美しい未来のような錯覚に陥りますが、つまるところ世界政府を作って市場を規制する必要があるという主張です。世界政府ができれば、世界の紛争を抑制することができるというわけです。つまり、アタリの主張のゴールは世界政府を樹立することにあり、そのために市場万能主義の恐怖を刷り込もうとしているのです。まずは市場の力が既存の国家を凌ぐことを示し、そのような世界が来ると市場の欲望をコントロールできなくなって人類が滅ぶ危険があると脅し、人類の滅亡を防ぐ方法は世界政府しかないと人々を信じ込ませようとしているのです。

 

このような手法は以前にも存在したことがありました。懸命な読者の皆さんならお気づきかと思いますが、第二次世界大戦後にアルベルト・アインシュタインやバートランド・ラッセル、それに日本人で最初にノーベル賞を受賞した湯川秀樹らが唱えた原子爆弾管理のための世界政府樹立運動です。原爆が使用されれば人類が滅亡するので、各国の枠を超えた世界政府が一元的に原爆を管理する必要があるという主張でした。グローバル市場は人類を滅ぼす危険があるので、各国の主権を超えた世界政府がグローバル市場をコントロールする必要があるという主張と、手口が同じではありませんか。

 

原子爆弾の一元的管理運動を陰で支えたのが、アメリカの大富豪のサイラス・イートンであったことは、拙著『国難の正体』で述べた通りです。アタリは、そしてアイン・ランドもそうですが、世界政府の樹立を目指す勢力の代弁者なのです。

 

アタリは『21世紀の歴史』で2008年の世界金融危機を予見したと、我が国でもてはやされました。しかし、アタリが詳細な経済分析によってそれを予言したのではなく、金融危機を起こす計画を知っていたと解釈することができます。その後の彼の著作、『金融危機後の世界』や『国家債務危機―ソブリン・クライシスに、いかに対処すべきか?』などを読むと、世界各国が抱える危険な水準の債務問題を解決するには地球中央銀行や世界財務機関の設立しかないと主張していることからも、アタリの一貫した姿勢をうかがうことができます。

 

『金融危機後の世界』でアタリが強調するのは、先に『21世紀の歴史』で提唱した世界政府を樹立する条件を、リーマンショックの教訓から改めて提示している点です。その教訓から、利己的な行動を戒め、利他主義に根差した労働の必要性を指摘し、真に希少なるものは時間であるので、自由時間を増やした人々に充実感をもたらす活動に対しては特に大きな報酬が与えられるべきことを強調しています。このあたりの見解は一見アイン・ランド流の徹底した利己主義礼賛と矛盾しているようですが、そうではありません。ランドの私的なマネーの力によるグローバル市場化の道筋を示し、アタリはそのグローバル市場化が完成したのちの世界政府樹立の必要性に重点を置いているのです。

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