直近の情勢を踏まえて、税の正体に踏み込む ~消費税の歴史と増税の実態~
最も身近で国民全員が国に支払っている税。戦後から日本国憲法により義務化されている納税ですが、収めた税は何に使われていて、なぜ増税を続けているのでしょうか。我々にとって最も身近な税といえば、消費税ではないでしょうか。年齢や性別を問わず全員が支払ったことがあるでしょう。まずは最も身近な消費税ができた歴史をさかのぼり、「なぜ?」を深めていきましょう。
◆01.消費税の歴史 導入から税率10%までの流れ
消費税が導入されたのは、1989年4月。竹下登首相のもとで消費税法が施行され、3%の税率で実施されました。
それまで物品やサービスにかかる税金は「物品税」で、毛皮製品やゴルフ用品などの「贅沢品」にのみ課税するものでした。しかし、国民の生活水準向上にともない、それらの品に手が届く人が増えたこともあり、「何をもって贅沢とするか」という判断基準が揺らいでいました。また、当時から「日本は将来、高齢化社会になる」といわれており、国内で働く人が減少し、国の財源である所得税(給料にかかる税金)が減ることも危惧されていました。そこで、将来の財源不足に備えて、買い物をするすべての人から税金をもらおうと、物品税に代わる税法として導入されたのが「消費税」です。消費税は導入後、1997年4月の橋本龍太郎内閣時に、3%から5%。2014年4月には、安倍晋三内閣時に8%となりました。2019年10月には10%へ移行しました。
これが一般的に報じられている消費税導入までの経緯です。消費税導入からすでに30年以上経過していますが、国内の財政は改善を見せていません。それどころか悪化の一途をたどり、増税が続いてきました。誰が得をしていて、本当の目的は何でしょうか。今後、「消費税」の正体についてより深く追求していきます。
◆02.なぜ「消費税」を増税する?
増税の原因は年々膨れ上がる国債(国の借金)と社会保障費です。社会保障費・国債費は20年前と比べて倍以上になっています。社会保障費と借金返済以外にほとんどお金が回っていないのが現状です。結果、税が引き上げられてはいるが、少子高齢化の進行もあり、社会保障の充足度の高度化は見られません。安定的な財源確保、社会保障制度を次世代に引き継ぐために、増税が繰り返されています。
ここで疑問なのはなぜ増税の対象が「消費税」なのかということ。財務省によれば、「消費税は物やサービスを購入する際、国民の誰もが負担します。そのため、現役世代など特定の世代に負担が偏らず、国民全体で広く負担を分かち合うことができる税です。」とありますが、本当にそうでしょうか。国民の誰もが負担をするのはその通りですが、負担は公平ではありません。低所得者と高所得者で消費税の負担は異なります。では、消費税を増税することで得をするのは誰でしょう。
大企業は消費税増税により利益をうけている組織の一つです。ご存じでしょうか。消費税の増税が推進される裏で法人税率が下げられています。消費税が導入されてから法人税の基本税率は1984~86年度の43.3%から2018年度の23.2%に引き下げられ、国税と地方税を合わせた法人実効税率も、1984~86年度の52.92%から2018年度の29.74%まで引き下げられています。
ここから見えてくるのは「消費税は大企業の税金を減税するために使われている」ということです。消費税が社会保障のために増税されたのであれば、税収も上がり支出も増えているはずです。しかし消費税が上がっても法人税が減税されているのが事実です。さらに、大企業と財務省は、根っこの部分で繋がりがあります。財務省のキャリア官僚の“天下り先”のほとんどが大企業です。財務省のキャリア官僚は、いずれ大企業に所属することになるため、間接的に消費税増税・法人税減税による恩恵を受けられるということです。具体的には、財務省のキャリア官僚の多くは、退職後に三井や三菱、トヨタやJTなどの役員となっており、非常勤役員というとても有利なポストを用意されています。これは、大企業が私情で財務官僚の天下りを受け入れていることが、国民全体の負担を大きくしていると言い換えることもできます。
◆03.まとめ 追求ポイント
今や強制的に支払うことになっている税ですが、その行方や金額の操作にはまだまだ、裏がありそうです。
ここからさらに「なぜ?だれが?何のために?」を深め、世界のお金の流れまで踏み込んでいこうと思います。
次回のポイント:消費税を増税することで大企業が儲ける仕組み (消費税の正体)
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