1997年日本銀行法はなぜ改正されたか?
現行法に全面改正されたのがすごく最近のことだと知って驚いた。それまで日本銀行は戦時下の昭和17年に公布された法律に基づいて経営されていたのである。
旧日本銀行法
昭和17(1942)年2月24日公布:法律第67号
第一章 総則
第一条 日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ施策ニ即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス
日本銀行ハ法人トス
第二条 日本銀行ハ専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ
第三条 日本銀行ハ法令ノ定ムル所ニ依り通貨及金融ニ関スル国ノ事務ヲ取扱フモノトス
② 前項ノ事務ノ取扱ニ要スル経費ハ法令ノ定ムル所ニ日本銀行の負担トス
改正日本銀行法
日本銀行法(昭和十七年法律第六十七号)の全部を改正する。
第一章 総則
(目的)
第一条 日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする。
2 日本銀行は、前項に規定するもののほか、銀行その他の金融機関の間で行われる資金決済の円滑の確保を図り、もって信用秩序の維持に資することを目的とする。
(通貨及び金融の調節の理念)
第二条 日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする。
(日本銀行の自主性の尊重及び透明性の確保)
第三条 日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。
2 日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。
(政府との関係)
第四条 日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。
(業務の公共性及びその運営の自主性)
第五条 日本銀行は、その業務及び財産の公共性にかんがみ、適正かつ効率的に業務を運営するよう努めなければならない。
2 この法律の運用に当たっては、日本銀行の業務運営における自主性は、十分配慮されなければならない。
http://chigasakioows.cool.ne.jp/hourei-shi.htm
旧日本銀行法はまさしく国家の意のままになるように制定されたものですね。
主文を読む限り、日本銀行の自主性確立が内外から求められてようやく1997年に晴れて全面改正のときを迎えたことが伺える。日本銀行のHPに掲載された解説はもちろんのこと、経済評論家や学者が発表している論説はこぞって「政府からの独立」を謳い、肯定的に捉えているが・・・
続きの前にポチッと ↓↓
象徴的な(わかりやすい)改正点である日本銀行券発行高限度額廃止について見てみよう。
旧日本銀行法
>第四章 銀行券
第二十九条 日本銀行ハ銀行券ヲ発行ス
第三十条 主務大臣ハ前条第一項ノ銀行券ノ発行限度ヲ定ムベシ
主務大臣前項ノ発行限度ヲ定メタルトキハ之ヲ公示ス
第三十一条 日本銀行ハ必要アリト認ムルトキハ主務大臣ノ認可ヲ受ケ前条第一項ノ発行限度ヲ超エテ銀行券ヲ発行スルコトヲ得
改正日本銀行法
第五章 日本銀行券
(日本銀行券の発行)
第四十六条 日本銀行は、銀行券を発行する。
2 前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。
http://chigasakioows.cool.ne.jp/hourei-shi.htm
旧法では日本銀行券発行限度額は大臣(=国会)で決定することになっていた。つまり大蔵官僚が立案して国会審議を経て決定した限度額を超えて発行することは原則としてできない。しかし、金融調整のための限外発行も常態化していたのが実態であった。
そしてバブル崩壊後、金融破綻が相次ぐ非常事態が訪れる。95年の兵庫銀行を皮切りに木津信用組合、阪和銀行と続いた銀行破綻に限外発行で対処するには限界があり、その後も北海道拓殖銀行、山一證券、徳陽シティ銀行、みどり銀行と、さらに大型の金融破綻が続くことが確実な情勢では、日銀が自由に銀行券の発行限度額を変えられることが政府にとっても望むところであった。96年から98年にかけて発行残高は極端に増大した。
実は、日銀の自主独立性を目指した法改正ではなく、国会審議を経ずに発行高を調整でき、また国民の目から見えにくくするのが真の目的だったのではないか?現にその後日本銀行券発行残高は日銀の国債保有高とパラレルにかつ急激に増え続ける。財政法第5条で日銀の国債引受を禁じているにもかかわらず。
政府の意のままに紙幣を増刷する蜜月関係は以前となんら変わっていない。法改正により国会を通さなくなった分、ハードルが下がった。
結果的に、政府と日銀は市場拡大を演出するため紙幣を増刷する。旧法にあった規制を政府自ら取り払ったことによって、ますます国は借金を増やし続けている。
55%の株を政府が握ってはいるものの、民間企業である日本銀行が持つ巨大な債権が悪魔の手に渡らないことを願ってやまない。
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2007/12/431.html/trackback
コメント4件
NOA | 2008.03.26 8:10
地球温暖化やその原因が二酸化炭素の増加にある、と何時からか宣伝され始め、まるで科学的定説でもあるかのような錯覚を持たされていると言う欺瞞の構造を、このブログを読んでいる問題意識の高い方々は皆さんご存知なのでしょう。
二酸化炭素排出権が株の様に売買され、また一つイカサマ商売が増えて、国民が払う税金が権力者の食い物にされるのですね。
watasin | 2008.03.26 23:08
京都メカニズムの仕組みは大きく4つで
①排出量取引
②クリーン開発メカニズム
③共同実施
④吸収源活動
がありますね。特に日本に置いては丸紅を始めとして開発途上国での②が行われています。しかしこれも事業を他国で起こしてはじめて排出権がもらえるのでやればやるだけ排出量は増える構造になっています。
結局市場が潤えばいいという仕組みばかり。
ま、ホントうまいこと考えられていますね。。。うーん。
でもそもそもCO2が温暖化の主原因という誤った認識が世界的な常識化しているのもその前段階での罠だったってこと。仕業は世界金融資本なのか、もう許せないですね・・・。
hermes bags britain | 2014.02.02 9:00
hermes uk website 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 排出量減らすよりも排出権の方が安い!?
なめねこ | 2008.03.25 20:38
日本ほど、環境技術の進んだ国は先進国でも他にはないわけで、何度考えても、その事をモット主張できないのかと思ってしまいます。
ところで、日本にはそもそも資源と呼べるものが殆ど無いもの事実。私は、あくまで批准するなら、他国に排出権を買うのに金を払う位なら、原子力は別として、環境技術の開発に金をかける方が良いと思います。