2012-08-14

『日本国債暴落の可能性は?』【14】金貸しが日本国債暴落を仕掛る可能性は?

これまでの分析では日本国債は暴落する可能性が高いと予想されます。
【10】国債暴落説の紹介にもありましたが、中でも「金貸しのたくらみ」によって暴落が仕掛けられる説が最も不透明で、リスクが高いと思われます。
untitled.bmp
<ゴールドマンサックスタワー:画像はこちらからお借りしました>
そこで、今回は、ゴールドマンサックス等の金貸しがギリシャ危機を仕掛けたように、日本にも国債暴落を仕掛けてくる可能性は本当にあり得るのか?を掘り下げてみたいと思います。
過去記事は以下をごらんください。
【1】プロローグ
【2】国債って何?:基礎知識の整理①
【3】国債発行と流通の仕組み:基礎知識の整理②
【4】国債発行の歴史と直近の発行残高(国の借金1000兆の実態)
【5】国債って誰が持ってる?(保有者の実態)
【6】コラム①:格付け会社って何?
【7】国債市場の動き?
【8】日銀の金融政策って何?:基礎知識の整理③
【9】日銀の金融政策の変化
【10】国債暴落説の紹介
【11】国債暴落しない説の紹介
【12】コラム②:国債暴落したらどうなる?事例に学ぶ
【13】ギリシャ、ユーロ危機にみる金貸しの手口?
応援よろしくお願いします↓

にほんブログ村 経済ブログへ


●「破綻(デフォルト)」と「暴落」の違い?
これまでの分析では、概念が曖昧だったかも知れませんが、実は「破綻(デフォルト)」と「暴落」では概念が違うのではないでしょうか?とりあえず、整理してみます。
「破綻(デフォルト)」:国家が借金が返せなくなり、債務不履行宣言をすること。利払い限界や購入資金の限界等の原因により、否応なく破綻に追い込まれてしまった場合に起こるケース。
「暴落」:国家が債務不履行宣言をしなくても、市場の価格が大幅に低下してしまうこと。国債が紙切れ(同然)になってしまうことは「破綻(デフォルト)」と同じだが、国家の政策判断ではなく、市場の需給によって起こる点が違う。金貸しが仕掛けるとすれば「暴落」。


●日本にもギリシャ危機と同じ手口があり得るのか?
ギリシャ危機における金貸しの手口の要点を整理すると以下のようになります。
【13】ギリシャ、ユーロ危機にみる金貸しの手口?
国債は安全だと信じ込ませる→金利が安いうちに国債を買い、同時に保険料が安いうちにCDSを買う→実は国債が危ないということをリークし、先物市場で空売りを仕掛ける→国債価格は暴落(金利は急騰)・CDS価格も急騰→先物空売りの利益とCDS売却益(元本は保証)の一挙両得の丸儲け。
%E3%82%AE%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E5%8D%B1%E6%A9%9F.bmp
<ギリシャ危機の様子:画像はこちらからお借りしました>
金貸しがギリシャと同じよう日本に仕掛けてくる可能性は十分あり得えます。
「11年夏・金融危機5 日本国債の暴落によって莫大な利益を得ることができる」
果たして、日本にも同じような手口で仕掛けてきているのでしょうか?
あまり公表データはありませんが、できる限り調べてみました。

●日本のCDS市場の実態
○日本にもCDS市場はある

>海外市場(日本を含む)については、BIS(国際決済銀行)による統計が代表的であり、2010年6月末時点の数字は30.2兆米ドルと報告されています。
>日本市場については、日本銀行が年2回公表する「デリバティブ取引に関する定例市場報告(吉国統計)」の中で市場規模に関する数字が報告され、2010年6月末時点のCDSの想定元本残高は11,104億米ドルとなっています。
>日本では1999年から個別銘柄のCDSが開始された。主に日本の主要金融機関(みずほ証券など)と外資系証券会社(ゴールドマン・サックスなど)の合計20社程度がマーケットで値付けを行い、数社のブローカー(東短,GFIなど)を経由して取引を行っている。
リンクより>

○日本国債CDSはおろか、米国債CDSも存在する

下記は、2012年5月7日(月)の価格です。
日本国債CDS 5年 USD建て:94.50bps
米国債CDS5年 :34.10bps
ギリシャ国債CDS5年 :5730.10bps
スペイン国債CDS5年 :478.55bps
イタリア国債CDS5年 :436.245bps
ポルトガル国債CDS5年 :1008.25bps
アイルランド国債CDS5年:563.84bps
フランス国債CDS5年 :190.76bps
ドイツ国債CDS5年    :84.50bps     
 日本国債94.5bpsとは年0.945%が保険料ということです。私が1億円のCDSを購入すると一年ごとに94.5万円の保険料を支払う必要がありますが、そのうち破綻がおきれば1億円もらえるということです。
 ギリシャはだれもが危ないと思っているので保険料が年57%にもなっています。
リンクより>

○CDS価格のグラフ
以下のリンクをクリックしてグラフをごらんください↓
リンクより>
このグラフを見ると今年2月には125レベルにあったCDS価格が、7月には100を切るレベルに低下してきています。8月に入ってさらに低下する傾向にあります。
現在は欧州ユーロ危機等を背景に、比較的「安全」とされる日本国債に人気が集まっている状況にあり、日本国債の金利は低下傾向にあります。
今年年初(H24.1.4)では指標となる10年ものが0.997%だったものが、8月時点では0.8%前後に低下しています。
リンクより>
CDS価格の低下傾向は、国債金利の低下傾向を受けてのことと考えられますが、ギリシャ危機における金貸しの手口から考えると、今は安いCDSを仕込んでいる期間と見ることもできます。

●金貸しの仕掛けと思われる気になる動き
○ニューエッジ・ジャパン証券による株式先物の仕掛け

>東日本大震災直後の2011年3月15日、日本の株式市場の先物で一時1600円安という大暴落が起きた。 この商いで、ニューエッジ・ジャパン証券という聞き慣れない会社が全体の3割近い約5000億円も売り叩いていた。
>「ニューエッジは、コンピュータによるロボット・トレーディングを戦略とするフランス系の証券会社
>日本経済に好材料が何もないのに日本国債が飛ぶように売れているのは、世界の投機マネーの緊急避難先になっているからに過ぎない。
>日本が1000兆円という世界最大の借金を抱え、財政破綻寸前にあることは紛れもない事実だ。破綻で儲ける旨味を知ってしまったモンスターたちが、次に日本を狙っている可能性は極めて高い。
リンクより>

○日本国債「外国人の買い占め」で大暴落の現実味(週刊文春・7月5日号より)

>問題はそうした中で外国人保有率が高まっていることだ。国債全体の外国人保有率は三月末時点で8.3%、これだけでも高いが、短期債に限れば、実に18.5%
まで高まっている。
リンクより>

○安住財務大臣の発言

>米銀による有価証券の自己売買を禁止する米国の新金融規制「ボルカー・ルール」について
>同ルール当初案は日本国債も規制対象だったが、日本政府はの対象から除外するよう強く要請
>「金融市場を収縮させては世界経済の減速を招きかねない。規制が厳しすぎると法人取引に支障が出る」と強調
リンク>より>

200px-Minister_Azumi%5B1%5D.jpg
<安住財務大臣:画像はこちらからお借りしました>
米国当局が金融規制(金貸しの暴走に対する規制)をする動きになっているのに対し、日本の財務大臣は日本国債を規制の対象にしないよう要請。一体何を考えているのでしょうか?理解に苦しみます。金貸しの言いなりになって彼らが仕掛けをしやすいように配慮しているのでは?と疑われます。少なくとも規制をしなければ、金貸しは仕掛けやすくなります。
○既に国債暴落に備える金融商品がある
1.T&Dアセットマネジメントが運用する「日本債券ベア」
2.野村アセットマネジメントが運用する「スーパーボンドベアオープン3」
リンクより>

●まとめ
これまでの分析を踏まえると、金貸しが日本国債暴落を仕掛けてくる可能性は十分あり得るのではないかと思われます。その理由をまとめてみます。
1.日本国債の発行残高はもはや返済不可能なレベルにまで積みあがっており、利払い限界や購入資金の限界(←貯蓄率の減少)等の原因により、いずれ破綻(デフォルト)は避けられないという状況にある。金貸しが日本国債の信用不安を煽るネタとしては十分である。
2.日本にもCDS市場は存在する。その実態は掴みにくいが、CDSを規制する法律がないというところから考えて、日本国債にもCDSが仕掛けられている可能性はある。
3.従って、金貸しがギリシャと同じような手口で暴落を仕掛けることは可能である。
4.金貸し側からすると、とりわけ米国覇権の崩壊によって、D・ロックフェラーは追い詰められており、日本国債の暴落を仕掛けることによって、日本買い→日本支配に生き残りをかけるという戦略的動機は十分成立する。

日本国債は、いずれ破綻(デフォルト)することは避けられないとはいえ、現状ではギリシャ等に比べるとまだ日本経済は強さ保っており、直ちに破綻(デフォルト)に追い込まれるとは考えにくい状況にあります。しかし、国債残高と個人金融資産のバランス分析から、資金繰り上13年にはデッド・エンドを迎えるという説もあり、予断は許しません。【10】国債暴落説の紹介
一方で、ドルVSユーロの金融戦争の成り行きによっては、D・ロックフェラーが追い詰められた焦りから、破綻(デフォルト)する前に暴落を仕掛けてくるリスクもあります。
いずれにしても破綻(デフォルト)が先かor金貸しの仕掛けが先か、時間との戦いになっているのは間違いないでしょう。


次回は、本シリーズ全体を通しての要点をまとめ、残課題を整理します。お楽しみに。

List    投稿者 yukitake | 2012-08-14 | Posted in 04.狙われる国の資産No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2012/08/1904.html/trackback


Comment



Comment