2019-06-13

国際情勢の大変動を見抜く!-16~アメリカが干渉しやすくするための「民主化」~

ブレジンスキー

前回はグローバリズム思想を広めたアイン・ランドを紹介した記事でした。

今回は二人目。カーター大統領の国家安全保障問題担当補佐官、オバマ大統領の外交顧問を務め、深くアメリカの政治に関与したズビグニュー・ブレジンスキー(ユダヤ系ポーランド人と言われる)の紹介と、アメリカのグローバル化の具体的戦略について紹介します。

 

その前に、グローバル化の一つ市場経済至上主義、すなわち経済は市場の調整に任せておけばうまくいくという思い込みは、根拠のない洗脳と筆者は断言します。これは倒錯観念が人々をいかに物を考えなくさせてしまうか、という恐ろしい実態を浮き彫りにする内容です。

 

そして市場絶対の倒錯観念を巧みに操りアメリカ政界から世界戦略に展開したブレジンスキーについては、ロックフェラーと手を組んでか?その正統性を主張し、世界戦略を展開していきます。

 

アメリカの戦略は、まず民主化する、次に民営化する、そして最後にグローバル化する、という三段階のレジーム・チェンジ方式とのこと。

 

民主化とは複数政党制を実現→選挙を実施。アメリカの意向にそぐわない候補が当選した場合は、不正選挙の言い掛かり→デモ扇動→再選挙。アメリカ傀儡が容易な政権にするというやり方。

・選挙には金が掛かる→金を融資する勢力の影響力△

・選挙民を誘導→メディア(情報)を握る→情報操作→世論形成

すなわち、アメリカの言う民主化とは、金と情報による支配を容易にするという意味とのこと。

実例として、アラブの春を挙げている。これは先の東欧カラー革命と目的は違えどやり方は同じ。

 

是非本文をお読みください。

 

『世界を操る支配者の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。

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■市場は侵しがたい権威なのか?

 

私たちはここで自らの頭で考えなければなりません。市場経済至上主義、すなわち経済は市場の調整に任せておけばうまくいくという思い込みは、根拠のない洗脳です。私たちは市場の実態を知らされることなく、市場の力を信望するように日々洗脳され続けているのです。

 

そんなことはないとおっしゃるかもしれません。では、日々の株式市場の解説を聞いてみてください。メディアに登場し当日の株価の上下を解説する市場アナリストと称する専門家たちは、どんな分析をしているのでしょうか。彼らの解説を聞いても何も実態が分からないのが正直私の感想です。当然です。彼らは株式市場の真実を決して教えてくれません。誰が日々の株式動向に影響を与えているかということを決して教えてくれないのです。

 

その理由は簡単です。その実態が明らかになると一般の人は株を買わなくなるからです。私たちにとって、本来株というものは当該会社の成長を見守り喜びを感じるという、いわばタニマチ的な意味合いがありました。しかし、いまは全く違います。単純化していえば、主として外国人投資家は毎日コンピュータの端末をいじるだけの株取引をして、いくら利益を上げるかというマネーゲームに興じているだけです。このような株式運用は果たして健全な経済活動でしょうか。

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このような素朴な疑問は一笑に付される危険があります。マネーゲームの毒にすっかり漬かってしまった人々からは、お金を儲けてどこが悪いという答えが返ってくるのがオチでしょう。

 

かつて、リーマンショック後、国の税金で救済してもらったアメリカ企業のCEOが巨額のボーナスを支給されていたことが問題になりました。その点が話題になったあるテレビ番組に出演した経済専門家が、これらの額を払わないと契約違反で訴えられるから会社は払うべきだ、巨額の報酬を提示しないと優秀な人材が集まらなくなる、などとコメントしていました。日本人の経済専門家の解説です。まったく本質から離れたコメントであることに気付かれたことでしょう。これが、市場原理主義の弊害の一例です。

 

日本人の経済専門家も発想は全く新自由主義的発想、すなわちグローバリズム的発想に凝り固まっているのです。このような解説を毎日聞かされていると、市場というものが侵しがたい権威をもった存在に見えてくるから不思議です。市場が好反応していると言われると、反論できなくなっているのです。そこで、これから市場を至上のものとして批判を許さない状況にしたのは誰なのかを探ってみたいと思います。新自由主義を突き詰めればグローバル市場化に行き着きます。

 

■グローバル市場化をめざすアメリカは左翼

 

これまで見てきたように、私たちはグローバル市場化を当然の前提として経済を考えている危険性があります。なぜ危険かと言うと、グローバル市場化を全と見なして対策を立てるか、あるいは世界の趨勢だから仕方がないとあきらめてしまうからです。いわば、歴史の必然の流れであると自らを納得させてしまうという危険なのです。

 

しかし、私たちはともすると忘れやすいのですが、東西冷戦が終了するまでは、共産主義が歴史の必然と称された時期がありました。1917年のロシア革命以来70年に亘って私たちは共産主義という「歴史の必然」と戦い、共産主義を崩壊させることに成功しました。共産主義社会は資本主義社会が行き着く先ではなかったことが、目の前で証明されたのです。

 

このような否定できない経験をしたにもかかわらず、いまなぜグローバル市場化が歴史の必然の現象だと考えられるようになっているのでしょうか。本章で強調して取り上げたい二人目の人物が、グローバル市場化が歴史の必然であることを鮮明に謳い上げたズビグニュー・ブレジンスキーです。すでに触れましたように、ブレジンスキーの名前はつとに有名です。かつてはカーター大統領の国家安全保障問題担当補佐官を務め、最近ではオバマ大統領の外交顧問を務めたほどのアメリカ政界の重鎮です。ブレジンスキーの経歴に鑑みれば、彼の著作はアメリカの世界戦略と緊密に関連しているとみてよいでしょう。彼は2004年に出版された『The Choice』の中で、グローバリズムに関して詳細に論じています。

 

ブレジンスキーによれば、グローバル化、すなわち世界経済への自由な参入は、新しいテクノロジーがもたらした自然で避けられない帰結であるのです。この点はアメリカの大富豪デヴィッド・ロックフェラーも回顧録で、グローバルな相互依存は確固たる事実であって、今世紀のテクノロジーなどの革命によってこの事実は覆せなくなった。世界のどこでも国境を越えての資本投下、商品や人の自由な流れが、世界経済の成長と民主的な制度をもたらす根本的要因となる、と断言しています。つまり、グローバル化はもはや避けられない現象であり、必然的に経済成長と民主化をもたらすというのです。

 

彼らはグローバル化があたかも自然な流れであると主張しますが、よく読めば彼らが人為的にこのような流れを創造したことがわかります。例えば、WTO(世界貿易機関)、IMF、世界銀行はグローバル化の事実を地球規模で具体的に組織した機関であるとブレジンスキーは述べていますが、IMFも世銀も第二次大戦末期に設立された機関です。要するに、そのころからこれらの国際機関は世界のグローバルを推進する手段と見なされていたのです。そう考えますと、同じ時期に設立された国際連合も、政治や社会の分野などで世界のグローバル化を推進するための国際機関であることが明らかになります。

 

ブレジンスキーの主張の問題点は次の言葉から明白になります。ブレジンスキーは、「国家の評価は民主化の程度だけでなく、グローバル化の度合いによってもなされるべきである。グローバリゼーションが公平な競争の機会をすべてのプレーヤーに用意するという考え方は、現実かどうかに関係なく、この新しいグローバリゼーションの教義に歴史的な正統性を与える重要な根拠になった」というのです。この文章をどう解釈すべきでしょうか。

 

注意すべき点は、グローバリゼーションが実際に世界に福利をもたらすかどうかにかかわりなく、グローバリゼーションは歴史的な正統性を持つと断言していることです。もっと正直に言えば、グローバリゼーションは世界に不公平をもたらすものであるが、歴史的に必然の流れであるので、これに抵抗することは歴史に反することになるという脅しでもあります。

 

このブレジンスキーの論理に従えば、アメリカはグローバリゼーションが不十分であることを口実に、当該国に干渉することが許されるという一方的な結論になります。まさに一方的な論理ですが、アメリカが今日さまざまな国に軍事干渉も含め介入している事実は、このブレジンスキー・ドクトリンが決して机上の空論でないことを教えてくれています。

 

つまり、私たちの常識とは逆に、アメリカこそ世界の現状変革を目論む革新勢力、すなわち国際的な左翼であるということです。この点は、以下に述べるブレジンスキーのレジーム・チェンジを求めるアメリカの三段階戦略が如実に示しています。

 

■アメリカが干渉しやすくするための「民主化」

 

このアメリカの戦略を要約するとこうなります。まず民主化する、次に民営化する、そして最後にグローバル化する、という三段階のレジーム・チェンジ方式です。

 

民主化とは要するに複数政党制を実現し、選挙を実施させることです。そうすれば、アメリカにとって好ましくない候補が当選した時、選挙が不正であったと言いがかりを付けてデモを扇動し、好ましい候補が勝つまで選挙のやり直しをさせることができます。民主化あるいは民主政治とは、外部から干渉しやすくするための制度なのです。選挙には金がかかります。政治家が金を必要とするようになれば、金を融資する勢力の影響力が増すことは小学生でもわかる論理です。選挙民を誘導するにはメディア(情報)を握ることが必要です。情報操作によって、世論を好ましい方向に誘導することができます。すなわち、アメリカの言う民主化とは、金と情報による支配を容易にするという意味なのです。

 

2010年にチュニジアを皮切りに「アラブの春」現象が吹き荒れました。元世銀上級副総裁のジョセフ・スティグリッツはチュニジアやエジプトの民主化デモを評して、「チュニジアとエジプトの独裁政権に対する若者たちの蜂起は、心情的に理解できる。社会を犠牲にして自らの既得権益を守ろうとする、凝り固まった老人だらけの指導層に彼らは嫌気がさしていた」と解説しています。

 

しかし、私はこの解説を素直には受け取りません。このような老人が支配する中東の国はチュニジアやエジプト以外にも多く存在するからです。特にサウジアラビアなどはスティグリッツが指摘する典型的な国でしょう。しかし、サウジアラビアが同じように非民主的であっても、この種の運動は決して起こりません。その理由はご承知の通りです。サウジ王室とアメリカの石油利権が密接に絡んでいるからです。

 

この一連の「民主化」現象は、これらの国民が民主主義に目覚めたからでは決してありません。アメリカがコントロールし難い政権を、暴力的デモを扇動して引きずり落したのです。リビアのカダフィ政権がその典型的な例です。カダフィ大佐は、私たちが欧米のメディアを通じて刷り込まれてしまった変わり者の独裁者ではありません。カダフィは欧米の干渉を排して石油資源をリビア国民の福祉のために使った愛国者でした。それ故に「民主化」デモを仕掛けられて、最後は白昼暗殺されてしまったのです。

 

現在のシリアも似た状況にあります。シリアのアサド政権は世俗政権でそれなりに安定していました。そのため欧米資本は中々入り込めなかったのです。シリアは主要な産油国ではありませんが、中東地域の地政学的な陽光を占める中堅国です。シリアでは今尚反政府勢力との流血の内戦が繰り広げられていますが、だれが見ても疑問を抱くのは、反政府勢力はなぜ強力な武装をしているのかという点です。彼らの武器は誰が援助しているのでしょうか。

 

シリアの内戦はどう考えても民主化勢力と独裁政権との戦いではありません。比較的まともな世俗政権のアサド大統領を倒すという武力闘争に他なりません。にもかかわらず、我が国のメディアを含め欧米のメディアは、なぜ判で押したように反政府勢力を民主化勢力と報じているのでしょうか。

 

私たちは、このような洗脳にはっきりと気付く必要があります。この洗脳が効果を上げている背景には、東西冷戦時代の古い思考に染まってしまって、そこからいまだに脱出できない私たちの心理が存在しているように思えます。

 

言うまでもなく、第1章で検討したとおり、ウクライナ情勢もまさしく同じパターンでした。「アラブの春」や東欧カラー革命と違う点は、今回はウクライナそのものがターゲットではなく、狙いはプーチン大統領のロシアであったことです。第2章で見たプーチン抹殺のシナリオを思い出してください。「シナリオ1」で指摘した暴力デモによるプーチン失脚と、親欧米政権の樹立とは、ロシアの「民主化」になるのです。また、「民主化」によって成立した政府は欧米から民営化を要求されるでしょう。つまり、もし金融危機が生じてIMFの支援を仰げば、融資の見返りに緊縮財政と大幅な民営化を要求されることになるでしょう。このようなプロセスを通じて、ロシア経済はグローバル市場に飲み込まれていくことになります。

 

ウクライナ情勢の本質が見えにくくなっているのは、私たちが洗脳されているからである点を、この際改めて強調しておきたいと思います。

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