2007-08-27

シリーズ「不動産投資ファンドの成長は続くのか?」12

【第12回:世界金融不安→世界恐慌は起こるか?】
 
前回の記事以降、参院選挙で民主党が圧勝、世界同時株安など政治と経済で大きな動きがありました。
 
世界同時株安は米サブプライムローンを発端としたものですが、根本問題は『アメリカ経済の行き詰まり』『ファンドの信用不安』にあり、日本における不動産投資ファンドの今後と直結した内容ですので、今回は世界金融不安→世界恐慌の可能性とファンドの今後について予測してみます。(前回は、こちら
 
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上の写真はドイツ銀行のシニア・アドバイザーになったグリーンスパン。
その後、FRBはドイツ銀行に資金を調達した(金額など詳細は不明)。
画像は「HEATの雑記」さんから拝借(内容も画像もお勧め。人物の表情が秀逸)。

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──<分析のポイント>────────────────────
 
■まず押さえておくべきポイントは、「ファンド」という金融システムは世界金融資本が編み出した肝いりのシステムだということ。グローバリズム・新自由主義の拡大と共に金融支配戦略上重要なシステムですから、彼らはそう簡単に手放す訳にはいかない。
 
■また、「ファンド」は世界金融資本が中心となって拡大してきたので、ファンド破綻による被害を直接被る。ヘタをすると抱えている関連ファンド、証券会社、銀行など中枢といえる部分を失う可能性すらあるので、何らかの対応に迫られる。
 
■加えて「ファンド」は世界中に広がっており、国家レベルでも「国富ファンド」と呼ばれる巨額な国家資金が投入されており、当該国にとってはファンド破綻は財政危機と結びつく可能性があるので、今回の危機は何とか回避するか、最小限の被害に留める必要がある。
 
■反面、アメリカの覇権が終焉を迎えている今、台頭勢力がこれを機会にアメリカの巻き返しを牽制する動きに出てくる可能性がある。主導権争いは今後はさらに加熱する。
 
──<「ファンド」の本質>───────────────────
 
■改めて、「ファンド」とは、今までの「金貸し金融」(利子で儲けて、元手の数十倍の金を動かすことで更なる利益を生み出すシステム)に継いで編み出した「第二の騙し金融」であるという認識が重要。無から有を生み出すが如く、あらゆるものを証券化して金を動かすことで搾取を推進するシステム。
 
■騙しの中身は、「価値がある」または「価値が上がる」という『幻想』に基づいている点にあり、市場にその様に思わせれば(=騙せれば)成立し、騙した方が確実に儲かるシステムになっている。マクロで考えるならば、経済成長が続く限りは騙し続けられるが、景気が後退したり経済成長が止まった瞬間に「騙し」「幻想」は破綻する。
 
■また、資金を集めては企業を買収し、利用価値がなければ高値で売り払う。外国の企業や土地の取得が容易になるので、実質上の支配も容易に進められる。土地と労働力(生産力)は、国家そのものであるという認識に立てば、土地と労働の乗っ取りは国家の乗っ取りと同義だ。
 
──<状況認識>───────────────────────
 
■今回のサブプライムローンの破綻もファンドの信用不安も、アメリカの景気後退、経済成長の限界が根本にある。これは明らかにアメリカのイラン戦争や石油戦略の失敗が直接的な要因であり、ロックフェラーは墓穴を掘ったわけだ。恐らく彼らは過信していたのだろう。基軸通貨は安泰でアメリカ経済はまだまだ持続し、世界をリードし続けられると。ファンドはまだまだ成長し、中国・インドという経済成長過程の国家に進出することで拡大できると・・・
 
■アメリカ(ロックフェラー)の失敗は明らかなのだが、この失敗は全世界に波及する。欧米も中国も相当にファンドに資金を投入しており、ファンドの信用失墜は世界経済にとって致命的になる規模に達している。
 
■FRBもECB(欧州中央銀行)も日銀も突発的な世界金融破綻をさける為に過去最大の資金注入を余儀なくされた。特にアメリカ(FRB)は、今後もなりふり構わず資金注入と金融危機回避の政策を打ち出して沈静化を図り、ファンドシステムを守ろうとするだろう。ファンドシステムの保護と世界恐慌回避は世界金融資本の意志でもある。
 
■しかし、アメリカの覇権は終わったのであり、誰もが金融システムを守る意志はあっても、アメリカを守る筋合いは無い。アメリカの覇権を持続させることに手を貸す者は(日本以外は)いない。国際金融資本も(ロックフェラー以外は)アメリカに固執する理由はあまり無い。ただし、支配を継続する必要はある。
 
■国際金融資本は数ヶ月前には今回の状況を予測していたと考えるのが自然だ。彼ら直系の主要銀行等は体制を整え準備を進めていた感がある。また、欧州のコールローン取引における信用危機も金融市場の動きが緩慢になる休暇期にタイミングを合わせて意図的に引き起こされた可能性がある。各国中央銀行の対応は比較的大胆で素早かった。ストーリー(脚本)はすでに出来上がっていることだろう。
 
──<今後の予測>───────────────────────
 
■主要中央銀行による資金注入とFRBの利下げによって今現在は沈静化しているものの、この間、中国は利上げを行い、ECBは近々の利上げを否定していない。これらはアメリカに対する牽制と思われる。アメリカは今後も相当な資金注入や経済対策を余儀なくされる。
 
■世界金融資本は関連する銀行、ファンド、証券を保護する体制を整えた上で、今後タイミングを見計らって意図的に小さな破綻を演出する可能性がある。世界恐慌には至らない範囲で弱体ファンドや銀行は潰すなどバブルを精算することは必要だ。
 
■今後のアメリカ経済の落ち込みは避けられないだろうが、基軸通貨は維持できる程度のものにコントロールされるだろう。台頭する基軸通貨がまだ育ってはいないからだ。逆にこれを機会にユーロがドルに替わる基軸通貨として力を付けていく転機となる。
 
■アメリカ経済は一端の落ち込みを見せるが、、不良債権処理や経済復興に際して再びファンドが活躍し、強い国際金融資本は再びアメリカで収益を上げられるのである。例えば、国家的な設備投資として「原子力発電建設の推進」などをはめ込んでいくことは容易に想像できる。結局どう転んでも国際金融資本は儲かる筋道である。実際、今もFRBの資金注入(証券の買取)によって、紙屑同然の証券(担保)によって利益を上げているファンドもあるほどだ。
 
■数ヶ月後には小クラッシュ現象は起こるだろうが、世界的な視点では部分的に止まると予想する。当然ある程度の株価の下落やファンド等の破綻もあるだろうが、大きな混乱は回避されると予想する。彼らはその準備を着々と進めていることだろう。(不謹慎だが)お手並み拝見という心境で望むのが肝要ではなかろうかと。
 
──<今後の日本>───────────────────────
 
■これは、次回へ(引き延ばして御免なさい・・・)
 
 
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(by コスモス)

List    投稿者 cosmos | 2007-08-27 | Posted in 04.狙われる国の資産1 Comment » 

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コメント1件

 leonrosa | 2007.10.18 12:03

追伸です。
FRB議長講演の翌日に、米国財務省ポールソン長官も講演を行っている。
サブプライムローン発の金融不安について、FRB、米国財務省、米国証券取引委員会(SEC)が参加する作業部会を設置したことを明らかにしている。
参考:米、サブプライム包括対策・財務長官表明「最も深刻なリスク」(10/16日経)
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt1/20071016AS2M1603G16102007.html
日経には書かれていないが、テレビ報道では、シティ銀行等の救済基金設立について、検討の場を財務省が用意したことを、ポールソン長官が認めていた。
(同氏の話し方が、余り滑らかではないのが印象に残りました。気質がそうなのか?テーマ故なのか?はわかりませんが。)
19日には、G7(財務相・中央銀行総裁会議)が開催される。
日銀、日財務省への取材・報道は、どうなっているのだろうか。

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