2009-07-05

政府紙幣の可能性を探る 〜丹羽春喜氏の主張を検証する〜

政府紙幣の可能性を探る為、これまで金利や為替の仕組み等を追求してきました。
今回は、世間で取上げられている政府紙幣に関する議論の中で、大阪学院大学教授の丹羽春喜氏の主張に注目し、検証してみたいと思います。
3972181_o1.jpg
昭和天皇御在位60年記念10万円金貨
(画像は寺嶋コイン様のHPからお借りしました)
600x600-2009041900010.jpg
長野オリンピック記念1万円金貨
(画像はおたからや様のHPからお借りしました)
↓ご協力お願いします。

にほんブログ村 経済ブログへ


「カネがなければ刷りなさい」−ケインズも説いた救国の超ウラ技 ケチな減税より国民ボーナスを(「諸君」1998年5月号より)を参照させていただきました。(リンク)
丹羽春喜氏の主張を簡単に要約すると、

①デフレ不況と膨大な国家債務を抱える今の日本においては、国内の総需要不足が最大の原因で、緊縮財政を実施する事は、さらに総需要を減らすことになる。
②思い切った財政出動による大規模な内需拡大政策の断行が必要で、国家債務が足枷となって二の足を踏むくらいなら、国家債務とはならない「政府紙幣」を発行すればよい。
③国民に「臨時ボーナス」を支給する事で、総需要を増加させる事が出来る。
④現在の日本は、需要が不足して実質生産が生産能力を大きく下回っている状態(その差をデフレギャ
ップと呼ぶ)にあり、この眠っている生産能力の余裕が、政府紙幣発行の裏づけとなる。また、デフレギャップを生じている間は、インフレを生じない。
⑤現在流通している日銀券と、新たに発行される政府紙幣の、通貨の両建ての問題は、技術的な応用問題としていくらでも解決できる。

この中で③の財政出動により総需要を増加させるという点については、1998年以降の国債発行による大幅な財政出動を行なっても、デフレ状況は解消されず、総需要の延びには繋がらなかった今の状況を見れば、効果は薄いと考えざるを得ません。
また、④についても、生産能力の余裕があるかどうかという問題よりも、物が欲しいという意識があるかどうかという問題の方が大きく、品目によってこの意識に差が生じていれば、部分的なインフレを引き起こす可能性は残るのではないでしょうか?
例えば、余剰資金が土地などの投機に流れた場合、再びバブルを引き起こす事も考えられます。
⑤については、二つの紙幣が流通するという混乱を避ける方法として、ユニークな案を丹羽氏は提案されています。
それは、政府が持つ「貨幣発行特権」(現在流通している硬貨は国が発行しています。この発行特権には、発行量の上限がありません)を使って、例えば50兆円分とか100兆円分の発行権を日銀に売り、日銀はその権利を担保にして日銀券を発行するという方法です。

(例)政府が100兆円分の発行権を日銀に売る。
  →日銀から政府の口座に電子マネーで100兆円を振り込む。
  →この電子マネーを使って、財政投資先の銀行口座に振り込む。
  →銀行に振り込まれた電子マネーは、日銀と民間銀行の間で日銀券に交換されて市中へ供給される。

この方法は、政府紙幣という現物を刷らなくてもよく、既存の日銀券を流通させるだけで済むので、国民生活に混乱を与える事はありません。
また、国債を発行せずに財源が確保できますから、負債を作らずに借金を返済する事も可能になります。
非常に面白い案だと思います。
これらの事を総合して考えると、物欲自体が衰弱した現在の日本では、金さえあれば物を買うという需要側の論理は成り立たず、どこにどういう目的で金を使うかという供給側の論理が必要なのではないでしょうか?
また、国家債務という足枷によって、国民生活にとって本当に必要なところに必要なだけの資金が供給されないという壁を打ち崩すにはどうすればよいかという視点で、政府紙幣やそれに代わる手法を見ていく必要があると思います。

List    投稿者 minezo | 2009-07-05 | Posted in 03.国の借金どうなる?4 Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2009/07/962.html/trackback


コメント4件

 akio | 2010.01.13 23:00

何とも申し上げようもないのですが、銀行で10数年働き、証券で5年以上働いてますが、誰も答えが言えないのが現状だと思います
当たり前の話で、経済はずっと成長するっていてますが、そんなのありえないと思いますし、宗教ですね
私は、学生の頃、理系でして、優性遺伝の法則っておかしいってことで、木村資生の中立説をちょっとかじってましたが、そもそも人が考えた、有意なことと、自然が考えた有意なこと。環境が考えた有意なことってどう考えても整理がつきませんでした
中立っていう言葉が適切かどうかは分かりませんが、分散された関係かなあと思います
あまり、難しく考えてもしょうがないのですが、マスコミは、なんであのように分散がないのかなあ
いくつか、企業がある中で、みんな迎合するってのもあり得ないと思いますよ
私のいる、日本の証券会社のほうがまだましだと思うのですが
…..とはいえ、いいかげんですが
ただ、結構おっさん連中は中立だと思います
人情はあると思います
営業じゃないけど、なんかもう少し過去の人間関係に戻ってくれればと思いますね
なんとなくね

 s.tanaka | 2010.01.14 23:07

akio さん コメントありがとうございます。
> 銀行で10数年働き、証券で5年以上働いてますが、誰も答えが言えないのが現状
> 経済はずっと成長するっていてますが、そんなのありえないと思いますし、宗教ですね
その通りだと思います。特に銀行や証券にとって成長停止は致命的。
だから懲りずに、何度でもバブルを生み出しては破綻させている。でも、そろそろ、
永遠の成長など無いという現実に目を向けなければならない時が来ているんだと思います。

 はっくしょん | 2010.05.10 2:28

共同体の再構築が必要なのかもしれませんね
健康なお年寄りが多いうちに子育てを手助けして頂くきながら相談して知恵を受け継ぎ
2人以上の子供をもうけてお年寄りの世話をしながら兄妹が働き続けて支えあう。
別々に住むからコストがかさむのですから
まずは近くに住み、出かけの行き帰りに用事を済ませられる様にする
次いで誰かと同居して交代で世話をしながら働き続ける
空いた時間には誰でも入って世話が出来る
強迫観念に狩られたように 個 を気遣い過ぎて
お互いに傷付くよりも
お世話になります、今までありがとう
これからよろしくね それで再スタート出来そうな気もする
都心から少し離れた町で広い場所で安く住み
仕事をしながら十分に税金も払える状況をこれから作っていけるはず
覚悟があり お金・税金の使い道をしっかりと考え直せば少ない成りに回せるはずですね
証券業界を経験された aikoさま
以前から証券業界は不思議だと思っています
なぜ 預かり資金の運用での増減で成績を付けないのか?
顧客から資金を引き出す事で成績を付けるのは
証券会社の自己責任を顧客に転嫁する職業倫理が欠如しているとしか思えませんね。
一任勘定で運用を任せる口座がありますが
ラップ口座でしたね
定期的な報告と分析を積極的に顧客に公開していますでしょうか?
出来たばかりの頃に勧められましたが
実績を見てからと断りました
すぐに調整や暴落があり口座はマイナスばかりのはずです
この後 この商品をあまり勧めませんが
暴落の後に作った人は儲けられるはずですよね
この時に運用に失敗した原因や対処のまずかったところなどを分析してレベルアップして次に備えているのであれば
今頃は実績を誇った看板商品になっているはずですね。
投資信託と同じで3年が寿命でしょうか?
日本の証券会社、信託会社、運用会社それぞれが販売手数料、運用手数料、手数料手数料を取りますが
まともに騰がった投信を見たことがありません
今でも記憶に残る 
大和が出したデジタル情報通信革命 0101
基準価額が1万円を超えた事があったでしょうかね?
やはり 敗戦国から吸い上げて戦勝国に送金する装置でしょうか?

 s.tanaka | 2010.05.17 0:22

はっくしょん さま
コメントありがとうございます。
もしGDPが縮小したとしても、共同体の再構築は不可欠ではないかと思います。人々が求めているのはGDPの数字でももはや給料の高でもなく、活力そのものだからです。
ただ、既成の村落共同体や血縁家族は、生産というものを本体から切り離した段階から、共同体としての資格を失ってしまったのではないかと感じます。共にいる必然性が薄いのです。
だから、これからの社会で再構築されるべき共同体とは、生産という基盤を共有する何らかの集団になるのではないかと考えています。
>敗戦国から吸い上げて戦勝国に送金する装置
これは、言いえて妙ですね。

Comment



Comment