原油が高騰しているのはなんで?
私たちの生活にかかせない車。通勤や通学で直接利用するだけでなく、物品の輸送にも車は利用されています。
その燃料となるガソリン価格が、最近大きく上昇しています。
その原因を探っていきましょう。
と、その前にそもそも原油が、何に使われているのか?基本情報を整理します。
原油は沸点の高い順に、以下のように分かれます。
石油留分 | 石油製品 | 利用の仕方 | ①石油ガス留分 | LPガス | タクシー、ガスレンジの燃料 |
②ガソリン・ナフサ留分 | ガソリン・ナフサ | 車の燃料、石油化学製品の原料 |
③灯油留分 | 灯油・ジェット燃料 | 石油ストーブ、ジェット機の燃料 | ④軽油留分 | 軽油 | トラック・バスの燃料 | ⑤残油留分 | 重油・アスファルト | 船・火力発電所の燃料 |
たくさんの石油製品と利用範囲の広さがよく分かります。お世話にならない日がないくらいです。
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さてと、では原油価格の動きを見ていきましょう。
1.最近原油高になっているのはなんで?
「円安だから??」
いえいえ、原油はドル決済になっており、日本も原油購入には予め保有している外貨準備高のドルを使用しているので、このところの円安ですぐさま原油高になっているわけではありません。
8月29日のJ-CASTニュースによれば、ガソリンは4週連続160円台になっています。2012年9月ではレギュラー138円だったのと比べると急激な値上がりであることが分かります。
直近の高騰は、やはりエジプト政情不安とシリア内戦継続による供給量の減少懸念からなんですが・・・・。
しかし、実はそれだけではありません。
2.実は大きくは原油価格は上昇基調にある
*データは(財)日本エネルギー経済研究所石油情報センターさんからお借りしました。
実は、2012年4月のガソリン(レギュラー)価格は158円と現在と大差ありませんでした。10年スパンで見ると、価格上昇基調にあるのです。その理由は
①サブプライムローン崩壊:投資家が、実態のない金融商品から使用価値のある現物への投機にシフトしたため、必然的に原油価格が上昇基調になっているのです。その後にリーマンショックで一時経済が大きく落ち込み、原油需要の落ち込みを受けて、価格も大きくダウンしたものの、その後再度上昇基調に戻りました。
②中国・インドなどの経済成長:1990年頃から始まっている中国や、インドなどBRICsと呼ばれる新興国の経済成長により、原油の需要が高まり、それにより価格が上昇しました。
では原油高になるとどうなるでしょう?
ガソリンなど燃料が高くなる。それにより物価が高くなる。困るけど、これだけ??
そもそも原油価格はどうやって決まっているんでしょう?
3.OPEC(石油輸出機構)の復活
◆原油市場
世界での石油消費量は1日当たり約8400万バレル(年間約49億kL)で、そのうち消費量の多い北米(28%)、欧州(17%)、およびアジア(30%)が世界の三大原油市場となっています。
日本が輸入する原油のうち9割は中東地域からのもので、国別で言えば、サウジアラビアの28.2%を筆頭に、以下アラブ首長国連邦22.8%、イラン11.9%、カタール11.0%と続きます。
そう、OPEC加盟国が日本の輸入先なのです。
◆OPECとは
OPECとは石油輸出機構のことで
・イラク ・イラン ・クウェート ・サウジアラビア ・ベネズエラ ・アンゴラ
・カタール ・リビア ・アルジェリア ・ナイジェリア ・エクアドル ・アラブ首長国連邦
の12カ国が加盟しており、原油の生産・価格カルテル組織となっており、世界の原油価格をコントロールするために、定期的に総会を開いて、加盟国の原油の生産量を調整しています。OPEC加盟国の原油加重平均価格であるOPECバスケット価格が世界の原油価格の大きな指標となっています。
◆OPECの目的とは
元々アメリカ石油メジャーが、エネルギー支配目的で石油を廉価で大量に販売していました。その結果、自動車業界やその他石油製品含めて産業界が活性化し、アメリカは世界の大国になっていったのです。一方、これでは原油を輸出するだけの産油国は先進国に原油価格を叩かれ、一向に豊かにならないという構造。そこで1960年に、原油価格維持の為にアラブの石油産油国がOPEC設立し、供給量と価格調整を行うようになり、1973年の第一次オイルショック時には完全に価格決定権を持つようになったのです。
そして第二次オイルショック後もOPECの意向で、原油価格は高止まりを続けました。
しかしその後、非OPECの石油産油量増大により、石油価格が暴落することで、OPECの足並みも揃わなくなり、ついに1986年サウジアラビアが公示価格制を放棄しOPECが石油価格の決定できる時代が終わったのです。
◆OPECの復活
しかしこのところの石油高騰で、再度OPECの力が復活したようです。1970年代には70%を誇っていた原油生産量は、ロシア等の非OPECの生産増加により、比率は減少しましたが、今でもOPECは世界石油生産量のうち42%を占めています。
*データは(財)日本エネルギー経済研究所石油情報センターさんからお借りしました。
確かにOPECも一枚岩ではありませんが、その他非OPECは58%を保有する国はもちろんバラバラで、組織化されていないので、OPECの力は依然として脅威でもあります。
さらに言えば埋蔵量では実に世界の原油の7割がOPEC加盟国にあるとされています。そういう意味で、ここのところの原油高は、OPECの経済力を強める方向にあるのです。
逆にこれで困るのは、欧米金貸したち。原油高になれば、産油国は利益UPしますが、それを原料や燃料とする製品価格も上昇し、それにより景気が冷え込み→市場経済縮小となるからです。
日本を始めエネルギー輸入国は、産油国との関係強化に走り、世界的にもアラブを中心としたイスラム圏の力が台頭してくる可能性すらあります。
そう考えると、おそらくエジプトの混乱やシリア化学兵器使用などは、単なる「エジプト」「シリア」の問題ではなく、『 欧米 対 イスラム 』の構図で捉える必要があります。そして欧米にしてみれば、「正義」「人権」「民主主義」の名の下にシリア・エジプトに軍事介入を行い、欧米の序列下に組み込む企みと考えられます。
つまりエジプト・シリア問題は、実は原油価格上昇の原因ではなく、原油価格を下げる口実なのです。*ただ日本と違って、イスラム国を外からコントロールすることの難しさは、イラクで散々懲りているので慎重な動きにはなっているようですが・・・。
ということで、問題の発端となったエジプトの政情混乱を次回見てみましょう。
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