2011-01-28

TPPから見る世界の貿易情勢〜TPPのまとめ(米国の真の意図)

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 TPPとは何なのか?日本にとって、世界にとってどういう意味があるのか?というのが、当エントリーの最初に掲げた問題意識でした。TPPについては、まだまだ継続して見ていかなければならない重要な問題ですが、ひとまず、今回は『TPPのまとめ』ということでお送りします。
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関税の撤廃 ← マスコミで報道されるのはこのレベルの話
 関税が撤廃されることで輸出産業にとってはプラス、農産業にとってはマイナスであり、TPP参加を推進しようとしている政府に対して農産業側が反対しているという構図。実際、農村部でもTPP反対の機運は高く、各地で集会が開かれているという。ニュースで見るのはこの程度の話である。
 輸出企業にとってはTPPに参加しないと2010年までにGDPが10.5兆円減少し、81.2万人の雇用が失われるという(経済産業省試算)。逆に農水省は、日本がTPPに参加することでGDPで7.9兆円の損失と環境面で3.7兆円の損失があり、340万人の雇用が失われ、更に食料自給率が40%→14%に激減するという(農水省試算)。
 政府はTPP参加の線で進めようとしているが、それがあまりにも性急で、何がなんでも参加しようとしているように映る。そこに非常に違和感がある。実際、日本は東南アジア諸国などとEPAをすでに結んでいるし、日米間にしても工業製品の関税は数%しかないので関税が撤廃されてもそれほど大きな影響はないのである。
 では、こんなにやっきになってTPP参加を推し進めようとしているのはなぜなのか?元々は4つの小国(チリ、シンガポール、ニュージーランド、ブルネイ)の経済協定であったTPPに突如参加し、主導権を握ろうとしている米国には裏の狙いがあるのではないか?
非関税障壁の撤廃 ← ネットでちらほら見られる話、米国の裏の狙い
 マスコミではほとんど報道されないが、関税以外に非関税障壁もこの際取っ払ってしまおうというのが裏の狙いらしい。
 非関税障壁とは、関税以外の方法によって貿易を制限すること。主なものとして下記のようなものが挙げられる。
 
  非関税障壁の種類(主なもの)
   ・食品の安全基準(ex.牛肉)
   ・環境規制(ex.残留農薬)
   ・手続き(ex.税関手続)
   ・言語(外国語)
   ・・・・
 
まだまだ沢山あるが、確かに、これらが撤廃されることで貿易量は増えるだろう。そして、多くの外国人が日本に労働者としてこれまで以上に入ってくるだろう。
 日本(人)への影響は甚大である。食の安全が脅かされるし、失業率は高くなるだろう。何より日本らしさが根こそぎ破壊される恐れがあるのが最も怖いところである。
 しかし、米国の狙いは果たしてそれだけなのだろうか。非関税障壁の撤廃要求は何も今に始まったことではなく、もう何年も前から行なわれている。
では、米国の真の狙いは何なのだろうか?
米ドルの軟着陸作戦 ← 米国の真の狙い(本ブログでの仮説)
 第1次世界大戦後の「ブロック経済」は、各国の金本位制離脱によって必然的に「通貨圏⇒経済圏」へと帰結したということだった。(前回エントリー参照
 今回はTPPにより経済圏を作ることで、そこで通貨を統一してしまおうという狙いがあるのではないか。つまり、「経済圏⇒通貨圏」ということである。かつては金本位制で紙幣には金(GOLD)の裏づけがあったが、1971年のニクソン・ショックにより、ドルは不換紙幣となり、全ての国の通貨の裏づけはその国自身の経済力(による信用力)となっている。現在ささやかれているドル大暴落は米国経済力の弱体化が要因である。したがって、米国は、日本、中国を入れた新しい経済圏「TPP」を構築し、その経済力に基づく新貨幣(仮に新ドルとする)を作り、現在のドルを暴落前に新ドルに引き換えてドル大暴落を軟着陸させようという意図があるのではないか。もちろん、現ドルと新ドルのレートは米国経済が浮上できるもので、日本の資産はそれにより大幅減が前提となるだろう。米国はEU、ロシアと対抗するためにどうしても中国を取り込んでおきたいはずである。しかも中国は対米債権大国である。日本はある意味、政治力でどうにでもなる。しかし、中国はそうはいかない。日本、中国の参加で世界最大規模の経済圏を作るという美味しそうな話になんとか乗せようと画策しているのではないか。
 以上見てきたように、TPPとはマスコミが扱っているように、農業VS輸出企業という国内の問題ではなく、近い将来予想される米ドル暴落による破綻を回避するための一手段であり、日本はそのためにこれまで蓄積してきた資産を吸い上げられてしまうという問題である。

List    投稿者 shushu | 2011-01-28 | Posted in 10.経済NEWS・その他6 Comments » 

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コメント6件

 saki | 2011.12.11 1:49

大変興味深くいつも拝読させて頂いております。反面いくつかの疑問もあります。
政府紙幣の発行への切り替え=いままでの貯蓄は無しということですか・・。
数千万以上の貯蓄をコツコツされた方のショック、親の相続を当てにしていた資産家、年金暮らしでフロー所得がない大量の老人など精神的な立ち直りかなり難しいように思われます。
また、この政府紙幣はどこまで世界から信用されるのでしょうか?石油を中心に資源を持たない日本に輸入もハイテク産業の輸出も外貨稼ぎもない。そしていわゆる幻想企業の失業者も相当な人数になるでしょうし、
それ以外の生活必需品を生産する企業のリストラもはんぱないでしょう。ガソリンも入らないのであれば車も乗れない。電車も船もない?
上記、描かれた世界は江戸時代の生活水準に
戻るということでしょうか・・もしくは旧ソの国営企業経営に戻るのでしょうか・・
国が銀行に金を貸すと言うやり方は賛成ですが・・

 福田 幾夫 | 2011.12.11 22:47

自分も色々と勉強していると中央銀行のやり方は詐欺だとゆうのが解りました。
バンバン印刷したお金を市場に供給するだけで利子を取るのは本当に詐欺ですよね。
自分としては国家紙幣でも地域通貨でも良いのですがミヒャエル・エンデの唱えた減価する貨幣が理想に見えます。年率12%程度紙幣の価値が減価していけばお金を欲望に任せて貯める人が居なくなるので世の中良くなりそうな気がするのですが。
あと残る問題は政府や民衆より強力なグローバル企業の存在を許すかどうかですね。

 kuwamura | 2011.12.29 19:57

Sakiさん、いつも読んでいただきありがとうございます。
おっしゃるように、リセットとなれば今まで貯蓄してきたお金も紙くず同然となり、人々のショックは大きいと思います。(お金を持っている人ほど)
そしてしばらくは国家からの食料配給・新紙幣の援助によってなんとかやっていくのだと思います。
そのような状況下で、「金が無くなった」と過去にしがみ付いていても何も始まりませんし、まともな人間は「協調」の方向に収束します。
また、危機状況における「みんな同じなんだ」という同一視の感覚は、共認機能の原点であり、人々の次に進むための大きな活力源となります。
つまり、「旧紙幣の廃止」は「皆が同じ地平に立てる」ことであると認識を転換し行動した人間が評価を獲得していける時代に入るということです。
これは、若者を中心として私権意識の消滅→共認原理への転換が加速していることと、3.1.1の大災害時に世界からの日本人の民族性に対する評価の点から、十分に考えられるステップかと思います。
ただし、問題は残ります。既存の国家が存続し、旧いやり方を踏襲するなら、また同じことの繰り返しとなります。国家紙幣へのシフトは、言い換えれば金貸しからの脱却することであり、既存の国家体制を解体し新たな統合機関を作るということと同義です。これは本当に超難問ですが、どのように構築していくかに関しては続きのシリーズにて明らかにしていますので、是非ご参照ください。

 匿名 | 2011.12.29 20:10

福田さん、コメントありがとうございます。
「ミヒャエル・エンデの唱えた減価する貨幣」勉強不足であまり存じ上げないのですが、お金に有効期限のようなものがあり、使わなければ価値が下がっていくというやつですよね。きっと、銀行に貯金をしない⇒無尽蔵なお金の創出が抑制できる、また経済が活性化するという利点(今回のシリーズではプラス成長は必要無いとしているが、)があるのでしょうか。
次のシリーズでは、これまでの思想家が唱えた学説を紹介し、「次代の経済のあり方」をより具体的に提示していく予定ですので、是非そちらのほうも見ていただけたら幸いです。

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