何故AIGは幹部に高額ボーナスを払わざるを得なかったのか?
AIGは2.6兆ドルの不良債権=爆弾解体のために、爆弾犯=幹部社員に頼らざるを得なかった。
昨年からのアメリカ政府のAIG救済。
9月に850億ドルの支援策、それが1230億ドルに。
11月には1500億ドル規模に修正。
今年3月に新たに300億ドルの追加資金。
実に1800億ドル(約18兆円)もの公的資金が投じられた。
一方、産経新聞によると、AIGが幹部社員に支払ったボーナス総額は、2億1800万ドル(約209億円)にも達している。
アメリカ国民の怒りは大きく、本拠ビルや幹部社員宅に地域活動団体がバスツアーを組んで報道陣と共に押しかけ抗議デモを繰り広げるまでの騒ぎになった。
<公聴会に出席するリディAIG会長を非難する人々>
下院では3月19日、ボーナスに90%課税を課す法案が可決された。
日本では、これほど損失を出し、公的な資金がつぎ込まれて企業の延命が図られようとした場合、少なくとも企業倫理として幹部はボーナスに留まらず賃金カットなど進んで行い、社員も給料やボーナスのダウンも甘んじて受け入れて対処するだろう。
AIGは何故そうしなかったのだろうか?何故できなかったのだろうか?
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3月18日にアメリカ下院金融委員会で開かれた公聴会で行った、AIG会長兼CEOのエドワード・リディ氏の証言にその理由を伺う事ができる。
私の名前は、エドワード・リディです。6ヵ月前、私は、私の国を助けるため、引退生活から復帰しました。政府の要請で、私は義務を負い、AIGの会長兼CEOとして任務にあたるという非常に厳しい試練に挑戦しています。
※リディ氏はAIGへの支援の際、政府の要請により就任した。日本風にいえば、再建請負人といった立場です。彼の報酬は1ドルと聞きましたから、完全に社会への奉仕の心意気なのでしょう。
私たちは、一つの優先事項を心に留めて、全ての決断を慎重に行っています。それは、その決断の実行が政府への返済の助けとなるか、ならないかということです。
私たちの財政問題の根源となったAIGファイナンシャル・プロダクツ社(保険部門とは異なる金融サービス部門に属するAIGの子会社)が保有するポートフォリオで、私たちは1兆ドル以上の持高を縮小しました。にもかかわらず、そのポートフォリオは1.6兆ドルという非常に莫大なリスクを引き続き含んでいます。米国納税者の皆さんにとって財政的損失となる見込みが潜在的にとても大きく現実的なものとなっているため、私たちはこのビジネスを終焉へ向けて縮小しています。
※ポートフォリオとは、「投資対象の金融商品の組み合わせ」です。リスクを分散するために、複雑に組み合わせて投資、金融工学を駆使した金融商品が、最初は2.6兆ドルあり、まだ、1.6兆ドル分残っている。
その間、過度なリスクの発生を避けるため、AIGは、適切な人材を確保するための報酬システムに基づき、社員への残留手当てを実施しました。この支払いは、多くのAIGの問題の原因となったAIGフィナンシャル・プロダクツ社の社員に対して行われました。米国民の皆さんはこう尋ねます。「なぜ、この人たちに支払ったのか?」
私は、このビジネスの制御不能な崩壊を避けようとしています。米国納税者の皆さんに対する迅速、かつ完全な返済へ向け、AIGの支払い能力を改善するには、これしか方法がなかったのです。また、これが、米国政府がそれを回避するために支援を実施した、経済におけるシステミック・ショックを避けるための唯一の方法だったのです。
AIGで起こった過ちの大きさは、誰も想像することはできなかったでしょう。最も深刻な過ちは、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)ポートフォリオで、それがAIGの流動性の危機を招き、最終的に莫大な担保請求の対象となりました。。
※注意深く読むと、以下の事が分かります。
AIGフィナンシャル・プロダクツ社が仕組んだ、クレジット・デフォルト・スワップはAIGに危機をもたらせ、1兆ドルもの支払いを発生させた。
AIGフィナンシャル・プロダクツ社は、まだ、膨大なリスクを含んだ1.6兆ドルの金融商品を持っている。
この金融商品の『過度のリスク発生』を回避するために、同社幹部を残留させる必要があった。
『AIGのビジネスの制御不能な崩壊』=企業破綻 を避けるには、同社社員にボーナスを払って、リスク回避をするしかなかった。
つまり、AIGの2.6兆ドルのCDSは、扱いを間違えるとAIGそのものを吹き飛ばす『爆弾』なのである。
『爆弾』を、無事解体できるのは誰か?一番確かなのは、爆弾を作った『犯人』である。
この爆弾犯が、『安全に解体させたいなら、ボーナスを払え』と居直ったのである。
(これが、一年前のAIGとAIGフィナンシャル・プロダクツ社の幹部の関係だった。)
もし私が当時CEOであったら、間違いなく、一年前に設定された残留特別手当に関する契約を承認することはなかったでしょう。このような支払いをすることは非常に不愉快です。しかし、私たちは会社へのリスク、すなわち財政システムと経済に対するリスクが極めて高いと結論づけたのです。
※完全に破綻した企業ならば、乗り込んだ管財人によって、債務はもちろん、ボーナスや賃金カットなどそれまでの社員との契約がどうあれ大胆に大ナタを振るう事ができる。しかしながら、破綻させないように公的資金を注ぎ込んだので、既に契約された残留特別手当を払わざるを得なかったということなのです。
米下院金融委員会でのエドワード・リディ氏の証言についてから引用
結局、複雑に絡み合い2.6兆ドルにも膨れ上がったCDSという不良債権は、時限爆弾のようなもので、それを仕掛けたものしか『仕掛け』が分からない。従って契約どおり高額な報酬を支払って、幹部社員に解体させるしか手がなかったのが真相である。
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コメント2件
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