2013-05-24

『世界経済の現状分析』【20】〜アラブの春から2年 中東情勢の現状〜

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画像引用先

前回は、ASEANの現状分析からアジア分裂を狙う米国の存在について調査しました。
今回は、「〜アラブの春から2年 中東情勢の現状〜」と題して、その後の中東情勢をみていきたいと思います。
「アラブの春、民主化運動」から2年が経過した中東。始まりは、チュニジアでのジャスミン革命から始まり、エジプトなどの他のアラブ諸国に反政府運動が波及し、リビアではカダフィが政権の座を追われ、長期独裁に終止符が打たれることになりました。
また、若者を中心に普及したソーシャルメディアという新しいメディアが、急速にアラブ諸国に騒乱が波及することに影響したなどと当時は伝えられていました。

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○過去の『世界経済の現状分析』シリーズは以下をご覧ください。
『世界経済の現状分析』【1】プロローグ
『世界経済の現状分析』【2】米国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【3】米大統領選の分析その1(両候補の政策の違い)
『世界経済の現状分析』【4】米大統領選の分析その2(両候補の支持層の違い)
『世界経済の現状分析』【5】米大統領選の分析その3(米大統領選の行方?)
『世界経済の現状分析』【6】中国経済の基礎知識
『世界経済の現状分析』【7】中国経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【8】中国、新体制・習近平でどうなる?
『世界経済の現状分析』【9】中国経済のまとめ
『世界経済の現状分析』【10】欧州経済の現状①(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【11】欧州経済の現状②(独・仏 VS PIIGS 格差問題の分析)
『世界経済の現状分析』【12】EU経済の現状③(EUの政治状況、右翼化?)
『世界経済の現状分析』【13】ロシア経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【14】ロシア経済の現状〜プーチンの焦り
『世界経済の現状分析』【15】コラム:新たな天然ガス資源「シェールガス」
『世界経済の現状分析』【16】ブラジルの経済の現状(ファンダメンタルズと金貸しの戦略)
『世界経済の現状分析』【17】『世界経済の現状分析』インド経済
『世界経済の現状分析』【18】ASEAN経済の現状(ファンダメンタルズ)
『世界経済の現状分析』【19】ASEAN・アジア分裂を狙う米国TPP

□「アラブの春・民主化運動」の当時の状況
過去、るいネットブログでは中東諸国で「アラブの春」と呼ばれる民主化運動が次々と起こったことから、『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』と題して11回のシリーズで構造解明を試みました。
過去のるいネットブログ『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』を下記に紹介します。
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【1】:プロローグ
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【2】ニュースの整理:チュニジア編
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【3】ニュースの整理:エジプト編
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【4】ニュースの整理:イスラエル隣国諸国編〜孤立するイスラエル〜
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【5】ニュースの整理:リビア編
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【6】:欧州主導説
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【7】:米国主導説
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【8】説の紹介:民族意識主導説
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【9】コラム:ソーシャルメディアって何?
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【10】まとめ(1)金貸し支配との関係はどうなっているのか?
『なぜ今、中東民主化が起きているのか?』【11】まとめ(2)日本との関係?

□「アラブの春」以降の中東各国の情勢(詳しくはリンク参照)

集会の自由、政治参加、雇用創出」などを求める国民によって「アラブの春」はチュニジア、エジプト、リビア、イエメンの4カ国で政権の交代を実現させた。
4カ国は政権交代後も内政が落ち着かず安定しないこともあって、国民の求める生活の改善や雇用の創出はほど遠い状態にあるのが現状であるようです。
下記に各国の現状を紹介します。

□「アラブの春」以降の中東各国の現状
○チュニジア〜イスラム穏健政党「アンナハダ」が中核を成す政権〜
経済の減速と隣国リビアとの内戦によるチュニジア人の労働者の帰国が重なり、2011年の失業率は約19%まで上昇し、若年層の失業は深刻で、失業率は42%と若者の2人に1人が相当する高率となっている。
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○エジプト〜革命後1年で半減した外貨準備高〜
エジプトの経済状態を明確に示しているのが外貨準備高で革命以前は360億ドルに達していたが、ムバラク政権後内政の混乱から155億ドルへと減額となっている。その主要は外貨獲得源であった観光業が振るわず、海外直接投資の急減が要因となっている。
また、失業、物価高騰、社会不安挙げたらきりがないほど問題が山積している。
ムスリム同胞団の政権、自由公正党は汚職を徹底的に退治しようとしているが、官僚達(外交官や外国と関係のある部門の高官)による汚職問題や貧富の差が明確となっており、一般国民の生活は極限と言っていいほど困窮し、社会不満が渦巻いている

・外貨準備急減のエジプト、頼みの綱はIMFかカタールのみ(詳しくはリンク参照)

◎外貨準備が急減し、政策余地がほとんどなくなる
◎IMFの支援なしでは議会選挙まで持ちこたえられない可能性
◎政治的合意が不可欠だが、野党は選挙をボイコット
◎カタールが追加支援実施しても根本的問題は解決せず
エジプト政府は25日、修正した経済改革プログラムの一部を公表した。また、投資庁のサーレフ長官は48億ドルの融資実行に関する国際通貨基金(IMF)との交渉を来月初めに再開することを明らかにした。こうした動きは融資に対する緊急性が新たに生じたことを示唆している。エジプトは昨年11月、IMFからの融資を受けることで暫定的に合意したが、その後の街頭での激しい抗議行動を受けて最終調印が延期されていた。
 エジプト政府は資金がほとんど枯渇し、IMFに頼るか、湾岸諸国の友好国であるカタールに追加支援を要請するしかない現実を認識しつつあるようだ。モルシ大統領の出身母体、イスラム組織「ムスリム同胞団」を中心とするエジプト政府が数カ月遅れで打ち出したのは、外貨準備の減少に歯止めを掛け、国家全体を揺るがしかねない財政赤字の解消に取り組むプログラムだが、新たなプログラムは外部の金融支援を前提にしている。
中略
そのため、エジプト政府がすぐさま実施できる選択肢はIMFとの交渉再開などに限られるものの、IMFは一定の緊縮措置を要求し、それによって選挙キャンペーンの最中に街頭での抗議行動がさらにエスカレートする恐れもある。別の選択肢としてカタールへの追加支援要請もあるが、カタールが既に実施した支援をもってしても、エジプトの外貨準備の急減は防止できなかった

○リビア〜イスラム勢力と世俗派の対立〜
社会不安、失業率17%等、現状に不満をもつ若者たちを引きつけているのが、様々なイスラム団体であり、地域に根ざす部族主義、部族社会に由来する衝突が散発している。従来から抱える部族社会の対立構造は一部で顕在化している。イスラム政党内部では路線対立で、政治的な空白が長引いているのが現状である。

○イエメン〜国際社会からの資金支援に頼る経済〜
政権交代した4カ国の中で経済状態が最も悪いのがイエメンである。国連の推計によると約1000万人超のイエメン国民が十分な食料を得ておらず、26万7000人の子供が生命の危機である。
政策として、イエメン内戦による経済的影響を最小化し、経済・開発を復興させ、貧困・失業を削減させようと努めるとしている。この状況下において、各国政府及び国際機関からの援助を要請している。イエメンが早急に必要とする援助額は約100億ドルと見ている。

□まとめ
○「アラブの春」以前
今までの長期独裁政権の抑圧に対する反発に加え、反米感情の蓄積、経済悪化と失業増への不満が蓄積され、それらがイスラムの民族意識を上昇させ(イスラム教では本来独裁などありえない)、アラブの春・民主化運動へと繋がっていきました。

○「アラブの春」以降・イスラム勢力の拡大が招く対立〜多様な勢力間での対立が浮上〜
民主化により、独裁専制で抑制されていた国内におけるイスラム教の宗派間並びにイスラム教と他宗教との対立が顕在化している。また、少数派が多数派を支配するという構造上の問題も表面化している。域内の国際機関は存在するが今般の民主化に伴う混乱にはその役割を果たしていないが現状である。

○今後の行方・・・
米国勢力が仕掛けたアラブの春・民主化運動は、中東各国の根底にあるイスラム民族意識や反米感情を今まで以上に高め、今後も現政権の中で、各国イスラム政党が続伸していくのか?
また、この状況の中で、欧州勢は中東の資源は一定確保しつつもイスラム勢力の動きを尊重し多極化の戦略でいくのか?その中で中東の民主化は根付くのだろうか。今後の行方も留意する必要がありそうです。

次回は中東情勢が上手くいっていないのかはなぜか?米戦争屋、金貸し勢力が関連しているのか?を追求したいと思います。
お楽しみに。

List    投稿者 seya | 2013-05-24 | Posted in 10.経済NEWS・その他No Comments » 

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