2012-08-08

LIBOR不正事件で世界はどうなる!?

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 連日盛り上がりを見せているオリンピックも折り返しを過ぎ、残り5日となりました。その舞台ロンドンでは、LIBOR(ライボー)不正事件というリーマン・ショックを上回る(!?)資本主義の終焉をもたらす(!?)ほどの事態が進行中とのウワサ。一体、どんな事件なのでしょうか?そして、世界はどうなってしまうのでしょうか!?今回は、このLIBOR事件について扱いたいと思います

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「ロンドン銀行間取引金利=LIBOR(London Inter-Bank Offered Rate)」とは?


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 LIBOR(London Inter-Bank Offered Rate)とは、ロンドン銀行間取引金利のことです。
 LIBORに加盟する主要銀行が短期市場で資金を貸出す時の金利で、世界の金融取引の重要指標になっています。三菱東京UFJ銀行のほか農林中央金庫や米バンク・オブ・アメリカ、米シティグループ、英バークレイズ等、16行の主要銀行が申告する金利を英国銀行協会が集計し、ドルやポンドなどの通貨毎に毎日公表しています。資金が余ればLIBORは下がり、市場混乱などで銀行が資金を貸さなくなると上昇します。LIBORが高くなれば、住宅ローンの金利や企業への貸出金利も上がるということで、我々の生活にも直結する重要金利です。
(参考:OKCのブログ
LIBORの不正とは?
 この世界の金融市場に多大なる影響を与える「LIBOR」ですが、誰が?どのように操作したのでしょうか。
事件発覚の発端は、イギリスの主要銀行の一つであり、LIBORの数値に影響を与えうる銀行でもある「バークレイズ」です。
07年頃まではLIBORを実態よりも高く操作し、それに基づくローン金利を設定し、利益を稼いでいました。08年になると金融危機になったので、実態より低く操作し、高い金利が財務不安と解釈されることを恐れたようです。
 また、08年の金融危機時においては、イギリスの中央銀行である「イングランド銀行」も操作に一役買っていたのではないか?という疑念が生じています。当時(10月)は、インターバンク市場が機能不全に陥っており、信用不安の深刻さを察知したタッカー副総裁が、バークレイズに対して「英政権幹部がなぜLIBORがこんなに高いのか疑問を持っている」と伝え、「LIBORを意図的に低く申告するように」とも受け取れる発言を行っていたようです。もちろん当局は関与を強く否定はしているのですが。
何のために不正がおこなわれたのか?
では、これら金融企業は、何のために不正を行っていたのでしょうか。

今回問題とされているLIBOR不正操作疑惑の内容
1:有力銀行が実際に資金調達できる金利(他行から借り入れる際に支払う金利)よりも、高い水準の金利を英国銀行協会(BBA)に申請していた場合、正規の手数料(金利)のほかに、申告していた金利と実際の銀行間取引で支払う金利の差だけ、銀行は利益を得ることができる
2:逆に実際は銀行間の資金調達コストが高い(銀行間取引金利が高い)のに、実際より低く申告することで、その銀行の信用不安を払しょく、(高い金利でしか資金を借りることができない=他行がその銀行に対して不安を出だしている、リターンが多くないと資金を貸せないと判断)といった憶測を打ち消すことができる。
3:LIBORは様々な金融取引、金融商品(デリバティブ含む)の根幹的指標となっているので、LIBORの上下により、価格変動、価格連動する金融派生商品などが多数あり、事前に発表されるLIBORの値をある程度知る事が出来た場合、それを見越した金融取引、ポジションを取り、利益を上げることが出来る可能性がある
「LIBOR不正操作事件のまとめ」金 地金 ゴールドの世界より引用

今回、発覚したのは英金融ですが、かつての米金融もあったのではないかという見解もあります。


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上図から、FF金利とRIBOR金利は連動していることがわかります。しかし、07年サブプライム・ローン危機の頃、金利差が生じています。この影響を受けた銀行や証券会社は信用力が乏しいと判定され、資金調達できずに経営破綻していきました。借り手が破綻すると貸し手が信用を失う金融市場では、リーマン・ショックのような金融恐慌に発展しかねません。金融市場崩壊を防ぐ上で、英米の大手銀行による不正談合を黙認してまでも、LIBOR金利の引き下げを指導するFRBの様子が伺えます。
事件は世界になにをもたらすか?

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 モルガン・スタンレーのベッツィー・グラセック氏(ニューヨーク在勤)とヒュー・ファンステーニス氏(ロンドン在勤)は12日付のリポートで、LIBOR問題の調査に関連した法務費用はロイズ・バンキング・グループで5900万ドル、ドイツ銀は最大10億4000万ドル、RBSは同10億6000万ドル(約840億円)に上る可能性があるとした。
Bloombergより引用)

 今後、住友・みずほにも損害賠償請求訴訟が行われるはずであり、一説によれば、この損賠賠償請求額は1兆円をはるかに超える10兆円にも達すると言われており、仮にこのような額が認められば、邦銀の経営が破たんする事態になるかも知れません。
NEVADAブログより引用)

 問題となるのは金融機関の損失だけではありません。世界でLIBORを基準としている金融資産は4京円にものぼるといわれていますが(日経新聞)、LIBORが機能しなくなれば金融市場が大きな混乱に陥ることは避けられません。
何故、不正談合が表に出てきたのか。
普通は、業界団体(英国銀行協会)が取りまとめている指標は、参加銀行の暗黙の了解の元で操作されるので、その内部事情が表に出ることは殆んどありません。出ても、個別銀行の不正、個別トレーダーの不正として処理されます。
今回、バークレーズの不正だけではなく、『その他の銀行も同じように関与していた』、『イングランド銀行トップも低い金利報告へ誘導した』という報道が続きました。
多数銀行の不正レポートを出したのが、モルガン・スタンレーです。



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 ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作問題について、欧米の主要金融機関11社が負担する罰金や訴訟費用が2014年までに計147億ドル(約1兆1700億円)に上るとの予想が出ている。米金融大手モルガン・スタンレーのアナリストが試算、12日付の顧客向けリポートで公表した。
 同リポートの試算対象は、すでに不正を認めた英大手銀バークレイズのほか、モルガンが調査した米3社と欧州の7社の計11社。11社が支払う罰金の総額を約69億ドル、訴訟関連の費用総額を約78億ドルと見積もった。
 11社は米系ではバンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JPモルガン・チェース。欧州系ではクレディ・スイス、UBS、ドイツ銀行、ソシエテ・ジェネラル、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)、HSBC、ロイズ・バンキング・グループ、バークレイズ
LIBOR操作に絡む11行のコストは140億ドルとモルガン試算(日経新聞)より引用

 業界内の不正が表に出たのは、内部対立があるからです。
 モルガン・スタンレーは、ロックフェラー系の投資銀行です。ロスチャイルド系の投資銀行ゴールドマン・サックスの競争相手ですね。
 ここから、世界の巨大銀行(金貸し)の主流であるロスチャイルド勢力に対して、ロックフェラー勢力が攻撃した構図が見えてきます。
事件はどうなっていくのか?
 このLIBORをめぐる不正事件は、今後の世界市場にどのような影響を与えてゆくのでしょうか。NEWS−USサイトさんが予測しているように、資本主義の終焉まで至るのでしょうか。
 
 確かに、この事件が各国金融機関からの巨額の損害賠償請求から英国主要銀行の連鎖破綻に至れば、再びリーマン・ショック並みの世界金融危機第2波に発展するでしょう。しかし、英国金融勢力潰しの首謀者と目される米ロックフェラー勢は現在かなり力が衰弱しており、抵抗する英国勢を叩き潰すだけの力は残っていないように思われます。また、もし、再び2008年並みの世界金融危機が起これば、英国を潰して自分たちだけが生き残ることは到底不可能なのではないかと考えられます。
 
 最近のニュースから推測すると、当事者の各銀行は、イギリス銀行協会への申告を担当したトレーダーやマネージャーに捜査の焦点を当てようとしている、つまり、個々人のクビを切ることで事件に幕引きをしようと考えているようです。
UBS、LIBORでトレーダーとマネジャー20人余り解雇
 
 いずれにしろ、この事件によりバクチ金融の総本山である英国に対する金融規制強化が一段階進むのは間違いないでしょう。その意味で、この事件も、金貸したちの縄張りが確実に縮小していっていることを示す現象だと言えます。

List    投稿者 banba | 2012-08-08 | Posted in 10.経済NEWS・その他No Comments » 

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