世界を動かす11の原理-1~プロローグ:「世界のほんとうの姿」を知るための大前提~
著者の北野幸伯氏は、卒業生の半分は外交官に半分はKGBになるといわれる「ロシア外務省付属モスクワ国際関係大学」を卒業し、カルムイキヤ共和国(2014年現在、22あるロシアの自治共和国の一つ)の大統領顧問を務め、24年間に亘りモスクワに住んでいた経歴をもつ。
その間に、様々な支配者達との交流を通じ、ロシアだからこそ得られる情報を基に、世界を表から、裏から客観的に見てきた方。それをまとめたのがこれから紹介する『「クレムリン・メソッド」~世界を動かす11の原理~』です。
この書籍では、「どうやって世界情勢を分析し、未来を予測するのか?」その方法や原理を、11項目「クレムリン・メソッド」として紹介されています。
前回の『2016年世界情勢はこうなる!』シリーズで、ベンジャミン・フルフォード氏の書籍の内容を紹介しましたが、内容については、彼の見方とも共通する部分が多々あります。
今回『世界を動かす11の原理』シリーズでは、前回シリーズも踏まえての補足を加えながら、紹介していきます。
以下、「クレムリン・メソッド」~世界を動かす11の原理~(北野幸伯著)
からの紹介です。
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「クレムリン・メソッド」の11項目を挙げておきます。
①世界の対極を知るには、「主役」「ライバル」「準主役」の動きを見よ
②世界の歴史は「覇権争奪」に繰り返しである
③国家にはライフサイクルがある
④国益とは「金儲け」と「安全の確保」である
⑤「エネルギー」は「平和」より重要である
⑥「基軸通貨」を握るものが世界を制す
⑦「国益」のために、国家はあらゆる「ウソ」をつく
⑧世界のすべての情報は「操作」されている
⑨世界の「出来事」は、国の戦略によって「仕組まれる」
⑩戦争とは、「情報戦」「経済戦」「実戦」の三つである
⑪「イデオロギー」は、国家が大衆を支配する「道具」にすぎない
●「真実」は、「言葉」ではなく「行動」にあらわれる
私は、2008年に出版した『隷属国家日本の岐路―――今度は中国の天領になるのか?』のなかで、「尖閣諸島から日中対立が起こる」ことを予想しました。
ご存知のように、その二年後の2010年、事実「尖閣中国漁船衝突事件」が起こりました。そして、2012年に日本が尖閣を国有化すると、日中関係は戦後最悪になってしまいます。
そのことで、メルマガの会員をはじめ、多くのかたがたから、「2010年から現在までの出来事を、なぜ予測できたのか?」とよく質問されます。実を言うと、私は難しいことは考えず、ある「事実」を見て予想しただけだったのです。では、その「事実」とは具体的にどんなことか?
アメリカが撤退したある地域、或いはアメリカの影響力が低下した場所で、中国は過去に何をしたか?
単純に、その「事実」を見てみたかったのです。
すると、何がわかったか?
①ベトナムの場合
34の小島からなる南シナ海・西沙諸島。現在、ベトナム、中国、台湾が領有権を主張しています。1970年代初めまで、中国が西沙諸島の北半分、南ベトナムが南半分を実効支配していました。
皆さんご存知のように、アメリカが1960年~70年代初めに掛けて、南ベトナムを支配していました。しかし、1973年に撤退します。
その翌年の1974年1月、中国は、西沙諸島の南ベトナム実行支配地域に侵攻し、占領。
その後、どう諸島に滑走路や通信施設を建設。軍隊も常駐させ、着々と実効支配を強化していきました。
②フィリピンの場合
1992年、アメリカ軍は、フィリピン国内のスービック海軍基地、クラーク空軍基地から撤退しました。
フィリピン議会が、アメリカ軍の基地使用協定延長を拒否したからです。
アメリカ軍が去ったのを喜んだ中国。
1995年1月、フィリピンが実効支配していた南沙諸島ミスチーフ環礁に軍事監視施設を建設し、そのまま居座ってしまいました。
中国が起こしたこの二つの事件(事実)を日本に当てはめるとどうなるか?
中国は、「尖閣諸島はわが国固有の領土である!」と宣言している(最近は、沖縄県全部が固有の領土と主張)
アメリカのパワーが衰えれば、中国は尖閣を取るためにアグレッシブになっていくだろう。
そして、アメリカの衰えは著しいから、日中は尖閣を巡って対立することになるだろう。
2008年の時点で私はこう予測し、そのことを本に書いたのです。
「過去に、中国は、ベトナム、フィリピンに対し、こういうことをした」というのは事実です。私は、その事実から、「日本にも同じことをする可能性がある」と予想、予測しただけ。何も難しいことはありません。
●「愛」が「世界のほんとうの姿」を知るのを邪魔している
ところが、多くの人は、そうドライに考えられません。『隷属国家日本の岐路』にそのことを書いたところ、事実、2010年に日中関係が悪化する前まで、多くの人から様々な批判も多々寄せられました。
その根拠は二つです。
一つは、「中国は「平和的台頭」を宣言しているので、あなたの書いているような「バカなこと」はしないはずだ」というもの。
こういった人達とメールでやり取りしていると、ある共通点が見つかりました。
彼らは何らかの理由で、おそらく「中国が好き」な人達だということです。
4000年と言われる中国の歴史と文化に、畏敬の念を抱いているのかもしれません。
ひょっとしたら、職場や会社に中国人の親しい、あるいは善良な友達や知人が居るのかもしれません。もっと言えば、中国人の恋人が居たり、中国人と結婚していたりしているのかもしれません。
とはいえ、「それ」と「これ」とは別問題。「中国は『平和的台頭』を宣言しているので、あなたの書いているような『バカなこと』はしないはずだ」
これは、どこまでが「事実」で、どこまでが「中国への愛」「人間愛」に基づく「主観」なのかよくわかりません。
確かに、中国が「平和的台頭」を宣言しているのは、「事実」です。ところが、「いっていること」と「やっていること」が異なっている。
こういう場合、
「言っていること」より「やっていること」を重視しなければならない。
たとえば日本の政府高官が、「消費税を上げるつもりはありません」と言った。しかし、政府は、実際に「消費税の増税」をやった。そうなったら、政府高官が「上げるつもりはありません」と言ったことは、何の意味もない。
同じように、中国が「平和的に台頭する!」と言っても、実際にベトナム、フィリピンを攻撃していたら、「攻撃した」という行動を重視する必要があります。
「世界のほんとうの姿」を知りたければ、「言葉」よりも、「実際の行動」を重んじよ。
●いまだに「21世紀に戦争が起こらない」と信じ続ける「平和ボケ」日本人
もう一つの批判は、以下のようなものでした。
「いまの時代、そんなこと(中国が尖閣を侵略すること)があるわけないでしょう、あなた!」
この人は、確かな事実的根拠もなく、単に希望的に、「現代に、戦争など起こりえない」と信じているのでしょう。
私は、こういう人達を、「平和ボケ」と呼びます。
しかも、かなりの重症です。
日本人の多くが、「第二次世界大戦後、世界は平和になった」「人類は二度の世界大戦で数え切れないほどの教訓を学び、戦争の悲惨さや無意味さを体験した。だから、21世紀に戦争など起こらない」などと信じているのです。
これは「事実」でしょうか?
それとも単なる「妄想」でしょうか?もちろん「妄想」です。では、「事実」はどうなのか?
●世界では、今も戦争状態が続いている
21世紀に入ってから起こった主な戦争(内戦も含む)を列挙してみましょう。
①2001年~・・・アフガン戦争
②2003~2011年・・・イラク戦争
③2008年・・・ロシアvsグルジア戦争
④2011年・・・リビア戦争
⑤2014年・・・ウクライナ内線
⑥2014年・・・アメリカと同盟国による「イスラム国」空爆
「いまの時代、戦争なんか起こらない!」「20世紀は戦争の時代だった。でも21世紀は平和な時代」
これは「事実」でしょうか?それとも「妄想」でしょうか?
私達は、ほとんど日本人しか掛らない「平和ボケ」という重い病気をまず徹底的に治す必要があります。もちろん、それは簡単なことではありません。「戦争」を直接知らない昭和20年(1945年)生まれの人達は、もはや70歳になろうとしています。つまり、いまの日本人のほとんどは、生まれたときから「平和な国」で育った。そのような人々が「戦争」をイメージするのが極めて難しいのは当たり前だからです。
しかし、もしあなたが「世界のほんとうの姿」を知りたいと思うならば、日本以外の世界では、今もまだ戦争時代は続いている。という材前提をまずは認識しておく必要があります。
なぜなら、それは「事実」なのですから。
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