2019-09-06

国際情勢の大変動を見抜く!-28~普通の国家として考えると見誤る中国~

習近平

中国を見るときに忘れてはならない重要な視点として3つ挙げています。

  1. 中国は共産党の独裁国家であるということ
  2. 中国人は超個人主義者であるということ
  3. 中国人に国家感はないということ

儒教の国中国は、家族としての結びつきは強いが、それを超えた集団、国家としての意識が希薄な個人主義の人種ということです。その意味で中国共産党が強制圧力によって統合する国家ということになっている。   中国人は個人の儲けにしか興味がないので、中国経済が抱える三重苦(:①国営企業の民営化の行き詰まり、②巨額不動産投資がバブルの後遺症、③活路を見出すために始めたAIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路構想の停滞)によって、統合が危うくなっているというのです。   アメリカが現在中国に圧力を掛けている背景には、そのような国力低下が背景としてあるようです。

 

『知ってはいけない現代史の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。

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■2017年 G20ハンブルクサミット

◇通説   :「相互に連結された世界の形成」をテーマに率直な意見交換が行われた。

◇歴史の真相:世界の運命に決定的な影響を及ぼすのは米露関係であり、中国は蚊帳の外であることが明確化した。

 

●G2とは米露のこと

私が奇妙に思うのは、たいていどのメディアもロシアと中国を同列に論じている、ということです。これは、日本の旧親米保守層の発想でもあるでしょう。こういう見方は世界の権力構造の本質を見誤ります。

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2017年7月7日、ドイツのハンブルグでG20首脳会議が行われました。G20サミット自体は実質的討議の内容に乏しいのが常です。それよりも各国首脳にとっては、その場を使った個別会議に意味があります。

このサミットで、トランプ大統領とプーチン大統領との初めての直接会談が行われました。当初30分の予定を大幅に超過して2時間15分の長時間会談となりました。米露、米中、露中、日米、日中、日露など主要国間の首脳会談が行われましたが、最も注目を集めたのはやはりトランプ・プーチン会談です。

 

なぜなら、世界情勢に決定的な影響を及ぼすのは米露関係だからです。いくら中国が米中をG2として世界を管理すると虚勢を張ったところで中国の独りよがりに過ぎず、GDPの数字の上では米国に次ぐ経済大国とはいっても中国という国は、軍事力とりわけ核戦力については米国との釣り合いを維持しているロシアのはるか後塵を排している国です。さらに、エネルギー資源と食料を自給できない中国はアメリカと並ぶ超大国にはなりえません。ロシアに厳しく中国には甘いブレジンスキーも、同様の理由で中国は超大国にはなれないと指摘しています。

 

遡ると、2015年11月のG20サミットはトルコで行われましたが、その時のオバマ大統領とプーチン大統領のふるまいには印象深いものがありました。衆人環視の中、会議場のロビーのソファで二人きりの会談を行っていました。当時は米露不仲が盛んに報じられていましたが、これ見よがしにひそひそ話をする米露首脳の姿は、世界を管理するのは米露でありそれ以外はない、G2とは米露だ、ということを世界に知らしめました。この時の首脳会談の隠れた標的が中国だったことは明白です。

 

●普通の国家として考えると見誤る中国

現在、中国経済は三重苦に悩まされています。安定型の経済へ移行するための国営企業の民営化を基軸にした構造改革は行き詰まり、2008年のリーマンショックを受けて投入した巨額不動産投資がバブルの後始末はほとんど手がつけられておらず、人民元の国際化も進んでいません。国内経済がよろしくないので活路を見出すために始めたAIIB(アジアインフラ投資銀行)や一帯一路構想も進んでいません。一帯一路構想とは、中国西部と中央アジア・欧州を結ぶ「シルクロード経済態=一帯」と、中国沿岸部と東南アジア・インド・アラビア半島・アフリカ東部を結ぶ「21世紀海上シルクロード=一路」の2つの地域でインフラ整備及び経済・貿易関係を促進する構想のことです。

 

ここで、中国を見るときに忘れてはならない重要な視点を3つ紹介しておきましょう。

 

①中国は共産党の独裁国家であるということ、②中国人は超個人主義者であるということ、③中国人に国家感はないということ、の3つです。

 

この3つの視点からすれば、共産党による独裁体制は経済の衰退とともに崩壊するだろうことが予測できます。一つの制度・体制は70年以上は持たないという経験則がありますが、それによれば中国建国70周年の2019年以降数年内に中国共産党一党支配体制が崩壊することが予想されます。

 

中国人は、儲かる限り共産党独裁であろうと軍閥割拠の内戦状態であろうと政治体制には関心がありません。しかし、今や儲けることが困難になりつつあります。共産党の正統性を支えているのは経済だけです。経済が衰退すれば共産党に忠誠を誓う国民は皆無です。

 

トランプ政権の誕生で、中国は日米を離間させて日本をたぐりよせる「微笑外交」を展開していくことになるでしょう。アメリカの対中姿勢は今後ますます厳しいものになる、とにらんでのことです。これに対して日本は、自民党や大企業が「チャイナマネー」になびかなければ大丈夫です。ところが、現実に自民党の要人に親中派が多いことや、経団連が依然として中国重視の姿勢を維持している現状を見ると、中国の対日工作が水面下で相当進んでいることが窺えます。つまり、中国の先方は、表で「微笑外交」のポーズを取りながら、裏ではチャイニーズマネーにモノを言わせて日米分断化の謀略を進めていると言えるのです。

 

ジャック・アタリという、ミッテラン大統領の補佐官を務めたこともあるユダヤ系フランス人の経済学者がいます。グローバル市場推進勢力の理論的支柱の一人です。私は「グローバリストの代理人」と読んでいます。このあたりが、2025年までには中国共産党の一党独裁は終わると言っています。これはつまり、グローバリストにとって中国の共産主義体制はもはや必要でなくなった、という意味でもあります。

 

トランプ大統領は「自由で開かれたインド太平洋戦略」と打ち上げて、中国の一帯一路構想に冷水を浴びせました。「21世紀海上シルクロード=一路」を相殺する戦略です。アメリカは本気で中国を抑えようとしています。習近平が焦らないわけがありません。

 

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は元々安倍総理が2016年に公式発表したものです。日米の緊密な連携はこういったところにも表れており、したがって習近平日本に擦り寄る姿勢を示さざるを得ません

 

。   日米関係が脆弱な時に中国は日本に対して強圧的になります。日米関係が堅固な時には、中国は日本に秋波を送ります。これは中国の地政学的弱点です。日中関係は改善したなどと浮かれている時ではありません。油断は禁物です。中国が日本に融和的な態度をとること自体は拒否すべきことではありませんが、そこに隠された意図を読み誤ってはいけません。再度強調しますが、中国の目的は日米関係にくさびを打ち込むことです。

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