2013-12-23

中央銀行支配からの脱却(5)〜ビットコインは次代の通貨になりえるか?〜

前回記事で、ビットコインという仮想通貨の急速な広がりとその仕組みを紹介した。
最近では、授業料が支払える大学も登場した。

 世界初、仮想通貨で授業料を払える大学
キプロス共和国(東地中海上にある島)の私立大学であるニコシア大学が、デジタル通貨「ビットコイン」(Bitcoin)で授業料や手数料を支払うことのできる初めての大学になると発表した
 
大学の目標はさらに大きい。同大学の理事らは、キプロス共和国をビットコイン取引の中心、言ってみれば「暗号通貨のウォール街」にする計画を提案する予定だとも述べている。

 
 
中国ではビットコインブームが過熱し、取引所の取引量が世界一になった。ビルの1フロアを使ってビットコイン採掘専門のコンピュータシステムを構築する中国人(下の写真)も現れるまでになったが、先日、金融当局の規制がかかり、ビットコイン相場を半分に暴落させた。

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この銀行システムを介さない仮想通貨には中央銀行支配を打破する可能性はあるのか?そして、仕掛け人は誰なのか?をさらに追求する。

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■ビットコインが現在の通貨に置き換わる可能性は?
 
ビットコインは、果たして現在の通貨に置き換わることができるのか?
これを数字的な面から検討してみる。
 
前回記事にあるように、ビットコインの発行(採掘)限度はあと20年後ごろまでに2千万BTCとされており、現在は6割が採掘済み。11月の相場1BTC=1000ドルでビットコインが採掘し尽くされれば、ドル換算での総価値は200億ドル=約2兆円となる。これだとアフリカの小国のGDP程度。では、相場が上がればどうなるか。
 
金(ゴールド)と比較してみる。これまで人類が採掘した金の総量は約15万トン。1オンス(約0.03kg)1200ドルとすると、金の総価値は約6兆ドル(意外に小さい)。ビットコインの相場が現在から約300倍上がり1BTC=30万ドルになれば、完採後のビットコインの総価値はゴールドと肩を並べる計算になる。
 
日本のマネーサプライ(市場に出回る通貨の総量)は、2010年で約1000兆円(約10兆ドル)強となっている。よって、今後、相場が500倍に上昇すれば、ビットコインは日本のマネーサプライをカバーできる。
 
世界のマネーサプライはさらに日本の約6倍の60兆ドルである。従って、ビットコインが世界中のマネーサプライをカバーするには、3千倍に価値が上がり1BTC=300万ドルになる必要がある。

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ビットコイン総供給量の推移(10B=100億ドル)

 
現在までのビットコインの相場上昇は4年半で10万倍。しかもそのほとんどは今年起こったもので、今後数百倍という上昇があり得ないとは言い切れない。
 
ビットコインの特徴は、相場上昇が通貨としての普及に寄与するということだ。投機バブルであれ何であれ、相場が上昇することで多くの人間がこの仮想通貨を手にし、通貨としての使用機会も広がってゆく。そして、元に戻るのが困難なほど普及してしまえば、ビットコインは通貨として一定の地位を確立する。おそらく仕掛け人もそれを狙って現在のバブルを演出しているのだろう。
 
■国家とビットコインの駆け引きが始まった
ここに来て、国家がビットコインに様々な形で関与し始めた。
冒頭で紹介したキプロスや、ドイツ、カナダ、フランスは、積極的にビットコインを通貨として認めていこうというスタンスに見える。
 
フランスでは、ユーロと交換する場合に限り、銀行にビットコインの特別口座を設けることを金融当局が認めた。クーポンのような扱いを超えて、一種の通貨として取引できるレベルで信任を与えたのはフランスが初となる。
 
続いて、ドイツは財務省がビットコインの「私的な通貨」としての使用を容認した。
  
カナダはビットコインATMの初の導入国であり、さらに政府はビットコインを模した仮想通貨「Mint Chip」を導入した。
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バンクーバーのビットコインATMに並ぶ人々

一方で、中国は冒頭で紹介したように、ビットコイン取引所の取引量も世界一となったが、国家が規制に転じて暴落の引き金を引いた。
 
タイのようにビットコインを違法と判断した国家もある。
   
これらの国家の関与はどのよう思惑を持ってのものだろうか。
 
一つは、力を持ってきたビットコインが勝手に蔓延り、中央銀行制度を脅かさないよう予め既存の秩序に組み込んでしまおうという狙いだ。しかし、それだけの理由ならば、タイのように初めから規制を強めてしまえば良い。
 
もう一つは、この仮想通貨に、ドル一極支配を崩す可能性を見出しているということだ。現在のところ、ビットコインを積極的に認めているのが主に欧州の国々が中心であることからも、それは窺える。(渋谷でビットコイン取引所を経営しているのもフランス人)。国境を自由に越えるビットコインが普及していけば、全ての通貨の需要が下がるが、相対的に最も弱体化するのはドルだ。 
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渋谷のBitcoin取引所「Mt.Gox」

 
少なくとも、国家として無視できるレベルではない存在にビットコインが成長してきたのは間違いない。今後はさらに国家の思惑が絡み様々な事態が起きるだろう。
 
■仕掛け人は誰なのか?
サトシ・ナカモトという日本人が理論発案者で、その後自然発生的に広がったとされるこの仮想通貨だが、一人の人間の論文だけではここまでの拡大は考え難い。かつ、「誰も管理していないが機能している人工物」というものは、おそらくこれまで存在していない。従って、仕掛人である組織は間違いなく存在している筈である。
 
一説では、ビットコインは英国のNPOから広がり、アメリカで中央銀行制度に反発するリバタリアンの支持を得たのが急拡大の理由だという。
 
中央銀行制度の問題点を知り、これを変えていこうとする市井の人々が中心的な仕掛人であるならば、ビットコインは脱金貸し=脱中央銀行支配の新たな可能性と言えるが、果たしてそう楽観できるのだろうか?
 
一つの疑問は、この間この仮想通貨がインターネットはもちろん一般メディアでも、黙殺あるいは問題視されることなく頻繁に話題に上っていることだ。ビットコインが反金貸し派の仕掛けであり、その拡大が金貸しにとって許されない事態ならば、支配下にあるマスコミを使って潰しにかからない訳が無い。しかし、現在はむしろブームを煽っているかのようにも見える。
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Bitcoin普及サイトは何故かメガメディアの名前をズラリと掲載

 
もしビットコインが世界支配層の仕掛けだとしたら、その目的は何か。
 
現在、金貸しが作り上げてきた金融システムは崩壊の淵を彷徨っており、中央銀行制度も国家の膨大な借金により限界に来ている。そのことを金貸し、とりわけ中心的な制度設計者であるロスチャイルドらはかなり前から察知し、次の手を打たなければならないと考えてきたのは間違いないだろう。
 
仮に、ビットコインがほぼ完全に普及した際に、根元のプログラムを自在に動かせる者がいれば、その人間が次の実質的な通貨発行権者になる。当ブログの記事にあるように、ロスチャイルドが現在集めていると思われるゴールドと、ある程度普及したビットコインをリンクさせ、「仮想通貨による金本位制」を成立させるという離れ業も考えられる。
 
そうなれば、「通貨発行権があれば、他には何もいらない」という初代ロスチャイルド以来のテーゼは全く変わらず、その発行方法が印刷機から難解なコンピュータプログラムに変わっただけとなる。さらに、全ての使用情報が記録・蓄積されるというビットコインの特性を悪用すれば、携帯やメールの会話と同様にマネーの流通経路まで完璧に押さえることすら可能だ。
 
このように、金貸しが中央銀行に代わる次の支配の道具として仮想通貨を実験しているという考え方も、現在のところは十分に成立してしまう。この点を明らかにするには、「オープンソース」が謳われ、「セキュリティは銀行以上」とされるプログラム本体、そして、現在の実質的な管理者≒仕掛け人が誰なのかの全容解明が不可欠だろう。 

List    投稿者 s.tanaka | 2013-12-23 | Posted in 09.反金融支配の潮流No Comments » 

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