世界を動かす11の原理-7~「国益」のために、国家はあらゆる「ウソ」をつく~
今回から第7の原理を紹介します。
表題にあるように「国家のウソ」とそこから見える国家の「本音」と「建前」を見ていきます。
もう既にご存知の「ブッシュによるイラク攻撃」の本音(石油利権+基軸通貨防衛)と建前
(核兵器開発阻止)や、真珠湾奇襲は実はルーズベルトの「大ウソ」であったこと。
そして、ロシアプーチンの「クリミア併合」の「本音」と「建前」を見ていきます。
当ブログの「スパイの証言」シリーズでも扱ってきましたが、国家は間違いなくほぼ100%ウソをつくと見て世の中の出来事を見た方が良いと思います。
以下、「クレムリン・メソッド」~世界を動かす11の原理~(北野幸伯著)
からの紹介です。
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■■第7の原理:「国益」のために、国家はあらゆる「ウソ」をつく
■あらゆる組織も人間も、自己の「利益」のために「本音」と「建前」を使い分ける
(前略)
「国益」のために、国家はあらゆる「ウソ」をつく
これに関して、「リアリズム」の世界的大家ミアシャイマー・シカゴ大学教授はなんといっているか見てみましょう。
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歴史の記録から明らかなのは、あらゆるタイプのリーダー達が、「ウソをつく」という行為は恥ずべき行動だとして非難されるものだとわかっていながら、それでも「うそは国を動かすための有益なツールであり、しかも様々な状況で使えるし、使うべきだ」と考えている、ということだ。
リーダー達は他国だけでなく、自国民に対してもウソを使うのであり、彼らがそうするのは、それが最も自国の国益にかなうものであると考えるからだ。そして彼らのこの考えが、本当に正しい場合もあるのだ。もし戦略的に利益となるのなら、危険な敵国に対して――特に戦時に――は「うそを使ってはいけない」などと、いったい誰が言えようか。
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では、リーダーはどうやってウソをつくのか?
「本音」と「建前」を使い分ける。
「本音」というのは、「真の動機」「利益」。
それは第二章であげたような、「金儲け」「安全の確保」「エネルギー源の確保」「基軸通貨防衛」など。
「建前」とは、「真の動機」を隠すための、「もっともらしい理由」「キレイゴト」。
では、なぜ国指導者は、「本音」と「建前」を使い分けるのか?
本音を言ったら、国民が国を支持しなくなるから。
たとえば、ブッシュが正直に、「イラクには石油がたっぷりある。われわれは、それをゲットするためにフセインを排除しなければならない!!!」と言った。
アメリカ国民や国際世論は、そんな戦争を支持するでしょうか?
もちろんしないでしょう。
(中略)
「イラク戦争の開戦理由は全部大ウソ」であることを証明した、アメリカ上院報告書は、2006年9月に出されています。そして、2006年11月の世論調査がこれ。
イギリス、カナダ、イスラエル、メキシコ、つまり親米国家で、75%が「ブッシュは平和の驚異だ!」と認識していた。その他の国々は、もっとひどかったでしょう。
実際、ブッシュが、「ウソの理由」で、イラク戦争を始めたことで、アメリカの権威は失墜しました。いえ、「ウソがばれたことで」というべきですね。
ここまで出、何が言いたかったかというと、「世界の本当の姿」を知りたければ、
大国の指導者がアナウンスしている「建前」をそのまま信じてはいけない。
■日本を嵌めたルーズベルトの大ウソ
「ウソ」といったら、日本人として、この「世紀の大ウソ」をとりあげないわけにはいきません。
皆さん、「日本人は狡猾で邪悪な民族だ!」などと信じていませんか?
「その証拠に『真珠湾』を奇襲したじゃないか!」と。
これについて、ルーズベルトの前に大統領だったフーバーさんは、こんな主旨のことをいっています。
①ルーズベルトは、真珠湾攻撃をあらかじめ知っていた(つまり奇襲ではない)。
②ルーズベルトは、日本がアメリカを攻撃することを望んでいた。
③その理由は、アメリカが対ドイツ戦争に参戦するためだった。
(中略)
何とマッカーサーも、「日本側は戦争を回避するために努力したが、戦争を望むルーズベルトがそれをぶち壊した」と考えていたというのです。
私達の先祖達は、光線的な悪者ではなかった。むしろ、ずる賢いルーズベルトに嵌められた。「自虐史館」は、いい加減捨てましょう。
(中略)
■クリミア併合、プーチンの「本音」と「建前」
(中略)
ロシアが、ウクライナ領だったクリミア自治共和国とセヴァストポリ市を、「サクッ」と併合してしまった。
これについて、ロシア人の90%以上が支持している。この決定でプーチンの支持率はグングン上がり、2014年当初60%だったのが、夏には86%に達しました。
日本人には「理解不能」です。
なぜロシア人は、他国の領土を併合した大統領を支持するのか?
まず基礎知識として、「クリミアは元々ロシア領土だった」ことを知っておいて下さい。
実際クリミアは、1783年(エカテリーナ2世時代)ロシアに併合されてから、1954年までロシア領でした。
1954年からは、ウクライナの管轄になりました。
理由は、独裁者スターリンの後にソ連書記長になったフルシチョフが、「クリミアの管轄をロシアからウクライナに移す!」と決めたから。
なぜ?
当時フルシチョフの権力基盤は、まだ弱かった。それで、ウクライナ支配層の支持を得るために、クリミアをプレゼントしたというのです。
しかし、当時は、ロシアもウクライナも、同じ「ソ連」の一部。
「東京にあった土地が、埼玉県に移った」くらいの感覚で、問題にはなりませんでした。
ところが、1991年12月に崩壊。クリミアは、独立国ウクライナの領土となり、「別の国」になってしまいました。
ロシアも、この現実を一旦は受け入れました。
では、いったいなぜ、プーチンは考えを変え、「クリミア併合」を断行したのでしょうか?
第二章でも紹介しましたが、2014年3月18日のプーチン演説を見てみましょう。
2013年11月からウクライナで起こった、反政府デモについて、プーチンはこう語っています。
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「しかし、ウクライナの一連の出来事の背景には、別の目的があった。即ち、彼らは国家転覆を準備したのであり、権力奪取を計画した。市かも、それだけに留まろうとしなかった。テロや殺人、略奪を始めた。」
「民族主義者、ネオナチ、ロシア嫌いの人達、ユダヤ人は移籍者が転覆の主要な実行者だった。彼らは今現在もウクライナにはっきりいるのだ。いわゆる新政権は、言語政策を見直す法案を提出し、少数民族の権利を制限した。」
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プーチンの意見では、2014年2月の革命で誕生したウクライナ新政権は、「親欧米」であると同時に、「民族主義者」「ネオナチ」「反ロシア」「反ユダヤ」である。
「言語政策を見直す法案」とは「ロシア語禁止法案」のことです。そして、過激な民族主義者がクリミアのロシア人の驚異になって来た。
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反乱に参加した人によって、弾圧や懲罰的な驚異もすぐに起きた。もちろん、その最初の標的となったのが、ロシア語を話す人が多いクリミアだった。それに関連してクリミアとセバストポリの住民はロシアに自分達の人権と人生を守るよう要請した。キエフで起きたことをさせないよう要請した。」
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ウクライナで、反ロシアの民族主義者が政権についた。
そして、住民の6割が「ロシア系」のクリミアでは、人々が「民族主義者から弾圧されるのではないか?」と恐れた。
そして、ロシアに助けを求めた。
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「当然、我々はその要請を断ることはできなかった。クリミアとのその住民を悲惨な状況に置き去りにすることはできなかった。何よりも、クリミアの人たちが、自分達の将来を歴史上初めて自分達で決める平和で自由な意見表明の条件作りを助ける必要があった。」
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ほうっておいたら、民族主義者がクリミアのロシア人を虐待するようになる。
だから、助けないわけにはいかない。
これがロシア人の感情をゆさぶり、「介入」は圧倒的に支持されたのです。
「クリミア併合」の一つの理由はこれです。
この後、「クリミアを併合した」「もう一つの理由」を明らかにしました。
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「キエフではウクライナがNATOにはいるという話も出ている。クリミアとセバストポリにとってそれは何を意味するか?ロシアの偉大な軍事都市に、NATOの軍隊が出現することはロシア南部にとって脅威となるだろう。それはつかの間のことではなく、全く具体的な驚異なのだ。」
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これが二つ目の理由です。
クリミア半島のセヴァストポリ市には、ロシア「黒海艦隊」がある。2014年2月の革命で追放されたヤヌコビッチ大統領は、「新ロシア」。
それで、ロシアとウクライナ間で、「2014年まで黒海艦隊はセヴァストポリ市に駐留できる」旨の協定が結ばれています。
ところが、親欧米・新政権ができた。
プーチンによると、新政権は、欧米、特にアメリカの傀儡である。
であるならば、新政権は「ロシア黒海艦隊を追い出すだろう」。
そして、ロシアの宿敵である「NATO軍」がセヴァストポリ市に駐留するようになる。
これは、ロシアにとって「大いなる脅威」である。
そう、第二章であげた「安全の確保」「軍事的理由」です。
「クリミア併合」二つの理由。
①クリミアの人口の6割を占めるロシア系住民を、ウクライナ民族主義者から守ること。②ロシア黒海艦隊を守ること。
さて、どっちが「本音」でどっちが「建前」なのか?
「ロシア黒海艦隊を守ること」、いわゆる「国の安全確保」「軍事的理由」が「本音」
「ロシア人をウクライナ民族主義者から守れ!」がというのが「建前」
(後略)
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