2017-08-04

世界を動かす11の原理-6~中国によるアメリカ没落計画~

温家宝 野田 温家宝

前回は主にロシア主導でのアメリカ没落の計画を見てきました。今回は中国です。

中国はロシアよりも露骨にドル離れを断行しようとしました。「世界共通通貨」を提案や、驚くべきは「日中の貿易取引でのドルはずし」です。

それは、当時の中国:温家宝首相と野田首相との会談で取り交わされました。日本では大きな問題になっていませんが、アメリカにとっては「原爆級」の爆弾でした。

 

それに対してアメリカが黙っているわけはありません。

野田政権が1年4ヶ月足らず短命に終わったのは、このような動きがあったからとも推察される。

(参考:新ベンチャー革命

 

以下、「クレムリン・メソッド」~世界を動かす11の原理~(北野幸伯著)

からの紹介です。

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「リーマン・ショック」後、中国が企む「ドル崩壊」のための新手

2008年9月15日、リーマン・ショックから、世界は「100年に一度」と呼ばれる「大不況」に突入したことは、これまで繰り返し述べてきました。

この危機が起こった理由は、一般に「アメリカ不動産バブルの崩壊」「サブプライム問題」などと説明されます。

もちろん、私もそれを否定しません。

しかし、世界的な「ドル離れ」の動きも、機器の大きな原因だったことは間違いないのです。

そして、ついに「多極主義者」が望んでいた「アメリカ没落」が起こった。

その結果、「ドル攻撃」を主導してきた欧州やロシアが身にしみて感じたことは何か?

 

ドル体制が崩壊すると、俺たちもメチャクチャ困る。

 

既述のように、ロシアのGDPは2009年、マイナス7.8%だった。欧州は2010年、PIGSと呼ばれる国々(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)で国家債務問題が深刻化し、大騒ぎとなりました。

しかし、もう「走り出した列車」を止めることはできません。

世界では、「リーマン・ショック」の後も、粛々と「ドル攻撃」が続けられています。

もはや「日常茶飯事」と化し、例をあげたらキリがなくなりますが、いくつか代表的なものをあげておきましょう。

まず、中国は2009年3月、「ドルを基軸通貨として使うのはもうやめて、全く別の世界共通通貨(SDR※)をつくりましょう!」と提案しました。

(※SDRについては、本文参照)

 

(中略)

 

中国は、アメリカの強さの源泉である「ドル基軸通貨体制」を崩壊させ、ドルをただのローカル通貨にした。

 

もちろん、これが実現したら、アメリカは崩壊します。驚愕したオバマはすぐにコメントを出し、「ドルに換わる国際通貨は必要ない!」と断言した。

そりゃ、アメリカは「基軸通貨」の「特権」を手放したくないに決まってる。

ちなみに、この提案を支持しているのは、ロシアなど一部の国に限定されています。

しかし、こういう提案が出てくること自体、「アメリカの衰退ぶり」を示すエピソードといえるでしょう。

 

現在、世界では「ドル攻撃」を最も力強く行っているのが、中国とアメリカです。

中国は、「人民元の国際化」政策を積極的に推進している。

ロシアのプーチンは、外国の首相が来るたびに、「私達の国の貿易は、ドルではなく、ルーブルとあなたの国の通貨でやりませんか?」と提案しています。

 

日中貿易取引の決済通貨を「円と人民元」に変えようとした野田総理(当時)

(前略)

日本も「アメリカ没落」「中国台頭」に手を貸していたのです。

2011年12月25日付、時事通信をご覧ください。

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中国国債購入で合意=円・人民元の貿易決済も促進―日中首脳会談

時事通信12月25日

〔北京時事〕野田佳彦首相と中国温家宝首相は25日の会談で、日本政府が人民元建て中国国債を購入することで合意した。

貿易取引で、円と人民元による決済を促す方針でも一致。両国の経済関係を緊密化し、一段の貿易拡大につなげるのが狙い

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「円と人民元による決済を促す方針で一致」(=ドルを外し、アメリカを没落させる)

もしあなたがこれまで通りの「ごく普通の日本国民」であれば、この記事を見て特に何も感じなかったでしょう。

しかし、「世界の本当の姿」のいくつかを既に知っているあなたの頭は、「くらくら」しているはずです。

そう、日本の総理大臣(当時)は、アメリカに対し、「原爆級」の爆弾を落としていたのです。

なんといっても、日本はGDP3位、中国は2位。

日中韓貿易で「ドルはずし」が実現すれば、アメリカの没落は急加速することでしょう。

記事には続きがあります。

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ただ、人民元の国際的な立場が上がることで、基軸通貨である米ドルの地位が低下する「ドル離れ」に拍車が掛る端緒になりかねず、欧米諸国の反発も予想される。(同前)

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「欧米諸国の反発」といっていますが、実は「アメリカの反発」ですね。

では、野田さんは、なぜ中国側のこんな「大胆な提案」に同意したのか?

 

おそらく、温家宝から、「円、人民元で直接決済すれば、取引コストが安くなりますよ!」と言われ、「それはいいですな!」と、気楽な気持ちで賛成したのでしょう。

野田さんは、「反米親中の民主党」なので、ひょっとして「わざとアメリカを没落させ、中国の覇権奪取を後押しするためにドルを外した」という可能性も無きにしもあらずです。しかし、野田さんはその後、「尖閣国有化」を断行し、中国とケンカした人。

ですから、「事の重大さを知らずにやっちゃった」のだと思われます。

 

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