2012-02-19

2012年、新興国はどう動く?(6)〜インドの真の独立は何時の日か?〜

中国に次いで高い経済成長を続けるインド。これからも7%超のGDP成長率が持続しそうです。
シリーズ「新興国はどう動く?」今回はインド経済を支えているのは誰なのか、そして今後のインド経済を拡大させるのは誰か。支配構造や新興勢力などインドの行方を占います。
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まず、インド経済の特徴を押さえましょう。

輸出相手国は数年前まではアメリカでしたが、現在はアラブ首長国連邦(UAE)が一位です。イギリスがかつて東インド会社を設立しインドを支配していた頃から、中継貿易の拠点として栄えたのがUAEのドバイです。

UAEを経由して中東やアフリカ、旧ソビエト連邦諸国との取引が多く、経済発展中の国々との関係を深めようとしているのが伺えます


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輸出品は石油製品がトップですが、次いで金・宝飾品が二番目に来るのがインドの特徴です。
インドは金の消費量が世界一です。インド人と宝飾品の関係は歴史が古くヒンドゥー教の影響が原点にあります。カーマスートラに象徴される豊かな性の追求が、視覚に性的刺激をもたらす光り物=金・宝飾品に高い価値をおいたと思われます。
さらに、娘に婚資を持たせて嫁がせる父系制が深く関わっています。カーストの上層文化であったダウリー(持参財)が今やインド社会全体に浸透し、娘が3人いればマハラジャでも破産すると言われるくらいに多額になっているようです。


かつてイギリス(の商人)がインドの良質な木綿や茶葉、香辛料を求めた際も、インド人は金銀以外の品を欲することがなく、南米で略奪した金銀の多くがインドへ流れていったと言われています。

そのような背景でダイヤの研磨など宝飾品の加工技術が発展し、低賃金で加工された宝飾品がヨーロッパに輸出されているのです。


近年は工業化が進み輸送機器や医薬品なども輸出されるようになってきました。
後半は民需を支えている産業構造を解明します。

インドでは財閥が強く、上位20財閥が民間経済の60%を占めていると言われています。
中でもビルラ、リアイアンスと並びインド三大財閥の一つであるタタ財閥はインドにおける産業や商業に幅広く関与しており、ほとんどの領域で上位の勢力になっています。
ウィキペディア

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タタ自動車が誇る世界最安値の量産自動車ナノ

イランに本拠地を置いていたゾロアスター教徒(拝火教徒)が、8世紀頃イスラム教徒の迫害を逃れてインドに移住。その後、イギリスがインドを支配した19世紀にロスチャイルド系のアヘン王サッスーン家等と結びつき、インド独立〜サッスーン家の権益を受け継ぎつい先年まで軍事から政界まで全てをタタ一族が動かしてきました

保有するインド航空を使っての金の密輸や、全世界を驚愕させた1974年の原爆実験も原子力発電所を有するタタ財閥の力によるものです。

イギリスの植民地支配から、戦後の社会主義的計画経済や、その後のシン政権による自由化路線など変遷するインド社会で、連綿として強大な力を保持し続けてきたタタ財閥。ロスチャイルドの保護下で今後もその力を発展させて行けるのでしょうか。


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世界有数の資産家となったラクシュミ・ミッタル氏

一方、新興企業も活躍しています。粗鋼生産量世界一のミッタル・アルセロール社は本社こそルクセンブルグですが、インド人のミッタル社長が買収を重ねて築いた会社です。

インドの小さな鉄鋼会社のオーナーの息子として生まれたラクシュミ・ミッタルが、自らインドネシアを振り出しに途上国や東欧の国営鉄鋼メーカーの買収を繰り返し、世界一の鉄鋼会社を一代で作り上げる様。国営で赤字垂れ流していた鉄鋼メーカーを安値で買収、技術者などを大量に送り込み、経営をどんどん立て直していきました。

ミッタル社長は今でも電炉を動かせる技術者で財閥の御曹司とは異なります。しかし巨大化する中でやがて金貸したちの暗闘に巻き込まれていくのでした。

アルセロールの買収劇はすさまじく、ミッタル社にゴールドマン、シティ、クレディスイス、HSBC、ソシエテジェネラルが、アルセロール側にモルガンスタンレー、ドイツ銀、メリル、JPモルガン、BNPパリバがついて攻防が繰り広げられました。ただし、両社のM&A担当はミッタル社側のゴールドマンの欧州M&A部長のヨエル・ザオウイと、アルセロール社側のモルガンスタンレーの欧州M&Aチェアマンのマイケル・ザオウイ。会社こそ異なるものの兄弟で行われ、踊らされたようにも見えます。


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西葛西には2000人ものインド人が住んでいると言われています。
写真は年に一度のインド人祭り「東京ディワリフェスタ西葛西」


最後に今後のインド経済を占う中でもう一つ重要な要素に触れておきます。
インドは独立以来、経常赤字を続けています。IMFなどの支援もありましたが、経済の発展を支えるのは外国からの投資です。中でもモーリシャスからの投資が断トツです。

◆外国からの直接投資上位5位(2000〜2007年)
順位   国 投資金額(百万USドル) 構成比 (%)
1 モーリシャス 85,178 44.24%
2 アメリカ合衆国 18,040 9.37%
3 イギリス 15,363 7.98%
4 オランダ 11,177 5.81%
5 シンガポール 9,742 5.06%

これは印僑の存在が年々大きくなっていることを表しています。
印僑とは在外のインド人(NRI:Non-Resident Indian)のことを指します。その数は年々増加の一途をたどっており、世界で1000万人とも2000万人とも言われ、中国系移民に次ぐ規模となっています。

NRIの多くは稼いだお金の大半をインド本国への仕送りとしており、その莫大な金額はインド経済に大きな影響を及ぼす存在となりました。一方、インド政府側から見ても伝統的にNRIに対する依存度が比較的高い状況が続いています。1991年の外貨危機や2008年の世界不況においても、そこからの復活にはNRIが大きく寄与しています。2008年度では、世界的な金融危機の中でもインド準備銀行がNRI預金の金利を引き上げたこともあり、NRI預金流入額は約40億米ドルにも及びます。また、NRIによる海外直接投資の割合も非常に高く、アメリカやイギリスからの投資額にも匹敵します。

IT産業に限らず知的労働・肉体労働ともに世界で活躍するインド人たちが免税特典のあるモーリシャスを経由してインドに投資しています。NRIに混じって欧米などの投機資金も相当あるようですが、インド人の活躍が金貸したちから脱する新たな可能性を示しています。


カーストやイギリスによる長い支配の歴史から、ようやく動き出した巨像・インドの経済を分析してみました。

※参考書籍「赤い盾」廣瀬隆、「インドの鉄人」ティム・ブーケイ バイロン・ウジー

List    投稿者 tsuji1 | 2012-02-19 | Posted in 09.反金融支配の潮流No Comments » 

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