2015-01-22

シャルリー・エブド事件の裏にある力学

1/7にパリで起きたフランスの「シャルリー・エブド」襲撃事件について「櫻井ジャーナル」さんの分析が鋭いので紹介します。
なぜフランスでテロが起きたのか? そのテロの背後には何があったのか? 世界情勢から説明してくれています。

襲撃事件の舞台になったフランスの動きを見ると、昨年7月、石油取引をドルで決済する必要はないと言い切っていたフランスの大手石油会社、トタルのクリストフ・ド・マルジェリ会長兼CEOは、その3カ月後にモスクワの飛行場で事故のために死亡、12月にはフランソワ・オランド仏大統領がカザフスタンからの帰路、ロシアを突然訪問してプーチン大統領とモスクワの空港ビルで会談、年明け後には西側のロシアに対する「制裁」を辞めるべきだと語っている。仏大統領がモスクワを訪問した頃、アメリカが「偽旗作戦」を計画しているという噂が流れ始めていた。ロシア嫌いで有名なアンゲラ・メルケルが首相を務めるドイツでも、外務大臣や副首相がロシアを不安定化させる政策に反対すると表明している。 《櫻井ジャーナル》 より

オランド
2014年12月6日(ロイター)
先進7カ国(G7)の首脳として初めてモスクワを訪れ、
ウラジーミル・プーチン大統領(62・左)と会談した
フランスのフランソワ・オランド大統領(60・右)
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2014年から始まったロシアへの経済制裁ですが、EU諸国は必ずしも賛同し続けていたわけではないということです。
EUとロシアの経済的な結びつきは強く、実際、ロシア経済制裁によるEUへの被害総額は、約400億ユーロとも試算されています(石油・天然ガス資源情報レポートより)。
つまり、ロシア制裁によって現実にEU自身が打撃を受けている以上、フランスやドイツは、ロシアと経済的に呉越同舟の関係にあるのです。

さらに注目すべきは、引用文中下線部の出来事、昨年の10月20日にロシア・モスクワのブヌコボ空港で起きた事故です。(事故の詳細
この事故(というか事件)で、フランスの大手石油会社、トタルのクリストフ・ド・マルジェリ会長兼CEOが亡くなりました。実はこのマルジェリ会長、ロシア、そしてプーチンと深い関係にあったことがわかっています。

マルジェリ

●ドル離れを明言
マルジェリ氏は、石油取引をドル決済する必要はなく、ユーロで行えばよいと提言していました。飛行機事故はこの発言の3ヶ月後に起きたのです。

●プーチン政権を擁護

 「パイプラインで結ばれた欧州はロシアの天然ガスなしで生きられない」
 「どんな制裁にも反対だ。私は冷戦を望まない。新しいベルリンの壁は必要ない」
 「欧米とロシアの対立は、ロシアを中国に接近させることになる」
との主張で、ロシアに顔を向けていた財界人でした。
そして、プーチン氏の親友でもあるゲンナジー・チムチェンコ氏が経営権を握る天然ガス大手の「ノバテク」と手を組み、北極圏ヤマル半島で総額2700億ドルにもなる大型LNGプロジェクトを打ち立て、ロシアはトタルの大きな取引相手国となる予定だった(2017年から供給開始予定だった)。
(参考:WEDGE Infinity

EUやフランスがロシアに接近することを、面白くないと思う連中がいたということです。当然それは、米国と金貸しということになり、不可解な点が多い今回の事件も、やはり金貸しや米国の組織的支援シナリオが準備されていたとみることができるでしょう。

テロの標的として、フランスが狙われたのは、オランド大統領やマルジェリ氏といった政財界の人間が、米国を見限りロシアと急接近したためであり、同時にこの事件がドイツ・メルケル首相への脅しにもなります。
いずれにせよ、米国・金貸しはロシアを孤立させることを望んでいるので、EUへの圧力は緩めないでしょう。
米国911テロから愛国法への流れがそうだったように、見せしめとしてのテロ行為を発動させ、テロ撲滅へと世論を誘導し、強権発動(軍事や法制強化)へと進ませようとしていることは明らかです。今後ともタカ派による政策のような事件や出来事が起きると思われます。世界情勢から目が離せません。

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