国際情勢の大変動を見抜く!-5~ロシアの経済制裁やIMFのウクライナへの融資はプーチンを悪者にする罠か~
アメリカがクリミアのロシア編入を受けて早々とロシアに対する経済制裁を決めたのは一体なぜなのか?これが今回のテーマです。
これは一般に思われているような「ロシアによるウクライナ関与を牽制する」という目的はないとのこと。であればやはりプーチン大統領に対する直接の圧力か?この時、アメリカとは先にも述べたようにグローバル派金貸し⇔オバマ⇔ネオコン⇔CIA(⇔イギリス王室≒ヴェルフ・ヘッセン)。
ウクライナは親欧米派(グローバル派)のポロシェンコ大統領となり、IMFの融資を受ける方向になった。その前提条件が「外資に開かれた経済構造にせよ」ということ。国営・公営企業の民営化に向かって進みだした。
グローバル派と真っ向から対峙する民族自決を先頭に立って推進するプーチンを誘い出し悪者にする罠ではないか?と思われる。案の定その後ロシアはマレーシア航空機撃墜事件の罠(アメリカ:ネオコンによる自作自演)に嵌められることになった。
『世界を操る支配者の正体』(馬渕睦夫 著)からの紹介です。
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■なぜいま対ロシア経済制裁なのか
今回のウクライナ危機の特徴は、アメリカがクリミアのロシア編入を受けて早々とロシアに対する経済制裁を決めたことです。なぜ、こんなに急いでロシアを制裁する必要があったのでしょうか。
クリミアの住民投票にあたってはロシア系自警団による投票所などの選挙施設の警備があったことは確かです。また、自警団が治安維持にもあたりました。しかし、ロシアの正規軍がクリミア半島に侵攻したわけではありません。住民投票はあくまで平和裏に行われたのです。この一連の動きは果たして経済制裁に値するだけの国際情勢の安定を害する行為だったのでしょうか。どう考えても、均衡を逸していると言わざるを得ません。
なぜなら、2008年のロシアのグルジア侵攻の際はG7は経済制裁しなかったからです。この時はロシア軍は国境を越えてグルジア領内深く侵攻し、グルジア国内を通るカスピ海石油のパイプラインを押えるまでに至りました。当時のEUの議長国フランスがロシアとグルジアの仲介に入り、ことを収めたのです。この時、アメリカは特に何もしませんでした。何もしないどころか友好国グルジアに冷たかったのです。
グルジアに対し、グルジア内で分離独立を要求している南オセチアで駐留ロシア軍平和維持部隊に対する軍事的挑発を奨励したのは、アメリカでした。それに従い軍事行動を起こしたグルジアに対し、ロシア軍が国境を越えて侵攻してきた際には、アメリカはグルジアを助けませんでした。結局EUの仲介に任せてしまったのです。グルジアではアメリカがバラ革命を主導して親米のサーカシビリ政権を樹立した(2003年末)にもかかわらずです。
このように、ロシア軍がグルジアという独立国に軍事侵攻したにもかかわらず、アメリカはロシアに対する経済制裁を口にしませんでした。ロシアのグルジア侵攻に比べれば、今回のクリミア住民投票基づくロシア編入ははるかに軽い事件と言わざるを得ません。しかし、アメリカは経済制裁を発動し、我が国を含むG7諸国をも従わせました。
国際法上、合法的な経済制裁は安保理決議を得る必要があります。安保理決議によらない経済制裁は、国連加盟国に何ら法的義務を課すものではないのです。したがって、我が国やEU諸国は対露制裁に加わらなければならない義務はありません。対露制裁を警告するバラク・オバマ大統領やジョン・ケリー国務長官の発言は「ロシアがクリミアを編入すれば大変なことになる」というだけで、全く説得力を欠くものでした。
一体アメリカはなぜロシアに対する経済制裁に走ったのでしょうか。ロシアとの経済関係、とりわけロシアから天然ガス輸入の多くを依存するEUが経済制裁に慎重であることはわかっていたはずです。
日本にとっても百害あって一理なしの対露経済制裁です。安部総理は就任以来プーチン大統領と5回も会談し信頼関係の構築に努めてきた矢先の出来事でした。我が国はアメリカとの同盟関係を無視することはできないので渋々制裁に同調はしましたが、その中身はロシアにとって実害のないものにとどまっています。言葉は悪いですが、日本としてはアメリカに対して面従腹背の態度を取ることが得策でしょう。EUも自らの国益を考慮して、決してアメリカの言いなりにはなっていません。我が国も、自らの国益を第一に考えて対露制裁問題に対処してよいのです。
そう考えますと、アメリカはロシアがウクライナに圧力を掛けるのを牽制する目的で経済制裁を決めたのではないと見なければなりません。何か、隠された目的があるように思えてならないのです。その目的を見破ることがウクライナ危機の本質を見抜くことにつながります。
■欧米はポロシェンコのウクライナを支援しない
ポロシェンコ大統領は就任後間もなくEUとの自由貿易協定に調印しました。ここに、昨年11月以来のEUとの関係強化を求めたウクライナ親欧米派のデモの決着が一応ついたことになります。
しかし、この協定はウクライナ経済にどれほどの恩恵をもたらすか大いに疑問です。EUとウクライナの間には圧倒的な経済力の差が存在しています。ウクライナの一人当たり国民所得はたったの3900ドルにすぎません。そんな中で、自由貿易協定がウクライナに利益をもたらすわけがありません。言うまでもなく、自由貿易は経済的優位にある国に有利なシステムだからです。
EUはそう簡単にはウクライナに経済支援を実行しないでしょう。ウクライナが数々の条件をクリアすることを前提にしているからです。アメリカは10億ドルの債務保証を表明しました。しかし、これはアメリカの民間企業がウクライナに融資するときにウクライナ企業等がアメリカ企業に負うべき債務を保証するというもので、アメリカ企業の救済措置にすぎないのです。ウクライナに対する支援ではなく、アメリカ企業に対する支援であるのです。
EUの150億ドルといわれるウクライナ支援は、もともと予定されていたものです。実施に当たっては種々の条件がありますが、中でもウクライナがIMFの融資条件で受け入れることの条件がウクライナにとって最も厳しいものです。IMFは融資の見返りに必ず緊縮財政を要求します。この構造調整融資なるものの実態は、外資に開かれた経済構造にせよということです。財政赤字を減らす緊縮財政とは、従来政府が担っていた事業を民営化することです。民営化とは、要するに欧米の外資にウクライナ国民の財産である国営企業や公営企業を安値で売却せよということです。
中でも深刻なのは住宅用ガス供給価格の値上げです。ウクライナ政府は、家庭用ガスを国家予算から補助金を出して国民に低価格で供給しているのです。この補助金を廃止すれば、家庭用のガス価格は値上がりして、家計を直撃することは火を見るよりも明らかです。ウクライナ政府と国民にとって今回のデモのつけはあまりにも大きかったと言わざるを得ないでしょう。
そんな中、日本政府は1500億円の経済支援をコミットしました。アメリカやEUと違って、実際に中身のある支援内容です。特に、水道事業の近代化のための1100億円の円借款は、ウクライナ国民の福祉に直接裨益するものです。但し、水道事業が将来IMFの構造調整融資の条件の一環として民営化される可能性には十分注意することが必要です。緊縮財政の行く先には公共事業の民営化が想定されているからです。
(後略)
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