2009-04-16

食料自立への道を探る2.飢餓マップ、アフリカが何故、食料不足なのか

FAO(国際連合・食糧農業機関)が、発表するハンガーマップ(世界飢餓地図)があります。これは、栄養不足の人口が、全人口の何パーセントかを示したものです。
色の一番濃い(赤い)国が、栄養不足人口が35%を超える諸国です。次のオレンジが20%〜34%の諸国です。
地図から分かるように、アフリカ大陸の多くの国が、栄養不足・飢餓に苦しんでいます。 
 
    
 
   ポップアップです。
 
   出典:国際協力新聞、HUNGER MAP 
 
  この地図を見て、アフリカ諸国を「貧困大陸アフリカだなぁ」との感想を誰でも持ちますが、何か変ではないでしょうか。
 アフリカ大陸の気候を考えて下さい。温度が高く、降水量にも恵まれていますので、植物生産力は、大きいのです。この優れた気候条件を食料生産に活かしているなら、栄養不足には陥らないはずです。(もちろん、サハラ砂漠以南の乾燥地帯、熱帯雨林の生茂る地帯等、穀物・食料生産に厳しい地帯がありますが。)
 今回は、気候条件に恵まれたアフリカ大陸が、何故、飢餓大陸になってしまったのか。その理由を探っていきます。 
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(1)食料・農産物の自由市場化が根本原因 
 
 まずは、農業協同組合新聞の特集分析から見てみます。
   増える世界の飢餓人口(2)、小規模農家・・・ アフリカの食料自給(明治大学勝俣教授)」

 アフリカでは飢餓、栄養不足発生の要因は地域によって異なる。 
 
 1つは構造的要因だ。これはハンガーベルト(飢餓地帯)と呼ばれるサヘル地帯の気候、土地条件にある。ここはサハラ砂漠南部から赤道にかけての地帯でセネガル、ブルキナファソ、モーリタニア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、チャド、エチオピアなどの国々がある。半乾燥地帯で降水量が不安定、干ばつが発生しやすく、そもそも農産物栽培が厳しい慢性的な飢餓地帯である。 
 
 一方、サヘル地帯から南は雨量が豊富だ。しかし、ここでは貧困と内戦によって飢餓が起きる。つまり、2つめの要因は政治的要因である。もちろんこれらが組み合わさることもある。
1980年代初頭のエチオピアの大飢饉は大干ばつと内戦がもたらしたものだった。

◆市場化の実験場にされたアフリカ 
 
 ギニア湾に面した西アフリカ諸国をはじめ、米や小麦を輸入に頼っている国は多い。自国で生産していれば今回のような事態はなかったかもしれないが、実は食料輸入は植民地時代にはじまり、自国の農業としてはコーヒーやカカオなど換金作物に力を入れてきた経緯がある。独立後もそれら第一次産品は先進国に輸出できるからと換金作物生産には力を入れたが、自国民の食料を安定して確保するという政策をアフリカの指導者がとったか。 
 
 ミレット(ひえ)やソルガム(とうもろこし)など地域で伝統的に食べてきた食料生産を政府が支援し、たとえば国が買い上げるなどの政策はとってこなかったのである。

なぜ、食料自給という考えが出てこなかったか。 
 
 そこには1980年代からのIMF(国際通貨基金)と世界銀行による構造調整政策がある。 
 
 これは途上国に対して融資を行う条件として貿易自由化と民営化を求めた政策だが、背景には米国の新自由主義エコノミストの主導による世界市場化という意図があった。背後には巨大アグリビジネスが存在し、まずはアフリカで市場化・自由化の実験を行った。日本のように生産者の利害を反映して抵抗の強い国では難しいが、アフリカなら元首とその取り巻きを説得すればうまくいくと考えたのである。 
 
 その結果、食料は外国から安く買えばいいとなった。
 食料自給政策などは価格メカニズムを歪める、国際分業すべきだ、というお馴染みの理屈を国際機関は押しつけたでのある。

 IMF・世銀のいわゆる『ワシントン・コンセンサス』(新自由主義政策)が、アフリカ諸国の貧困・飢餓の根本原因です。 
 
   文中にでてくるミレットは、こんな穀物です。 
 
    パールミレット(唐人黍)
    mirett.bmp

西アフリカが原産と考えられています。「トウモロコシ」に似た姿で、高 さは1〜3メートルになります。干ばつ耐性の強い作物で、アフリカやインドなどの夏雨型半乾燥地域では、「ソルガム」とならぶ主要な穀物となっています。茎頂に穂状花序をだし、小さな穎果をいっぱいつ けます。種子は粥やパンなどの食用のほか、家畜の飼料にも利用されます。別名で「トウジンビエ(唐人稗)」とも呼ばれます。

     写真及び解説:ボタニック・ガーデン、パールミレット (唐人黍) 
 
 
(2)植民地支配による人為的国家、脆弱な国家では、食料政策を打ち出せない 
 
 勝俣教授は、アフリカ諸国の飢餓を、世界銀行・IMFの新自由主義政策に原因をみています。では、何故、簡単に新自由主義政策が貫徹されているのでしょうか。国民の飢餓に最も強く反応するはずの国家は、どうして無力なのでしょうか。 
 
 アフリカ諸国の国家特徴をみる必要がありますね。 
 
 FAO日本事務所のサイトにアフリカ解説からです。
  アフリカの歴史

アフリカの悲劇 
 
 アフリカの悲劇は、歴史上の奴隷制、その後の植民地政策・ヨーロッパ列強のアフリカ分割が挙げられます。新大陸に多くの働き盛りの人々を強制的に送られて、アフリカ経済はまずそのために発展が著しく阻害されました。その後、植民地政策・ヨーロッパ列強のアフリカ分割により、アフリカの人的・物的資源は一層搾取され、その上、現在地図を見てよくわかる、アフリカの地元の人々や社会・歴史を無視した「一直線」の国境が欧州列強各国によって引かれたのです。

    一直線の国境線を確認してみましょう。 
 
    africakap.bmp
    地図出典:外務省・各国地域情勢・アフリカ

 第二次大戦後、アフリカ諸国はヨーロッパ列強から政治的独立を勝ち取りましたが、その後、多くの国で、紛争・内戦・軍事クーデターが繰り返されました。この政情不安定には、このような人工的な国境が大きな原因の一つであります。 
 
 又、戦後の冷戦時代で、米ソともに独立したばかりで人工的国境線上に成立している脆弱なアフリカ諸国を、援助をネタに自分の陣営に取り込もうとし、紛争が長期化する傾向がありました。
 特に資源が豊富であったり、軍事戦略的に重要と米ソが考えられた国々には、米ソの支援が会い争うように行われ、その国の内政不安継続を支援したといってもよいでしょう。
 これらの援助は米ソの国益のために行われたものであり、アフリカ諸国の発展を考えたものでは必ずしもなかったので、アフリカ諸国の植民地時代からの2・3の換金作物や天然資源に依存する経済構造には変化もなく、寧ろそれが助長される傾向にありました。

19世紀から20世紀前半は、欧州列強による植民地分割で、第二次世界大戦後は、米ソの冷戦による資源争奪下に置かれ、国家が国家の呈をなしていないのが、アフリカ諸国なのですね。 
 
 国家の呈をなしていないアフリカ、脆弱なアフリカ国家では、食料自給策を強力に進めるのが困難なのです。最後に、その点を簡単にみてみましょう。

 アフリカ農業はふたつの側面を抱えていますが、どちらも難しい状況です。 ひとつは主要作物(とうもろこし、ミレット、キャッサバ、米、ソルガム等)の生産です。
 これらは生産の伸びが一部の例外を除いて停滞傾向です。
 もうひとつは換金作物(コーヒー、紅茶、ココア、綿花等)の生産・輸出です。 これらも、1970年代までは堅調であったものの、その後価格の下落傾向もあり不調です。 
 
 農産物の輸出価格の下落等外的な要因への脆弱性以外にも、アフリカにおいて、以下のような内的要因で農業発展は阻害されています。 
 
 政治不安・内戦等による農地破壊、農民の難民化、労働力不足
 ガバナンスの悪さと農業軽視の政策
 集団土地所有制度に見られがちな生産意欲減退
 基本的農業インフラストラクチャーの未整備で、ポストハーベストのロスが高く、コストも高く、肥料利用率も低い。
 市場整備・アクセス・情報が未発達

   アフリカとFAOから 
 
 人々の栄養不足・飢餓は、個々の単位集団では解決できず、超社会集団である『国家』の役割です。しかし、アフリカ諸国は、この国家が人為的な国家、脆弱な国家なので、食料自給政策へと国家意志が形成できないのです。 
 
 なお、このシリーズ中で、アフリカに芽生えている、国家意志・食料自給への動きを改めて取り上げます。 
 
 
参考記事を最後にのせておきます。 
 
FAO・飢餓人口9億6300万人に増加 
 
農業協同組合新聞特集 
 
増える世界の飢餓人口(1) 
 
増える世界の飢餓人口(2) 
 

List    投稿者 leonrosa | 2009-04-16 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?7 Comments » 

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コメント7件

 honyu | 2009.10.14 0:33

特別引出権(SDR)について、まとまったサイトありました。
→http://www.imf.org/external/np/exr/facts/jpn/sdrj.htm
>SDRは通貨ではありませんし、IMFに対する請求権でもありません。むしろ、それはIMF加盟国がもつ自由に利用できる通貨に対する潜在的請求権といえます。SDRの保有者は次の二つの方法でSDRと引き換えにこれらの通貨を入手することができます。一つは、加盟国間の自主的な交換取り決めを通じて、もう一つは、IMFが強い対外ポジションを持つ国を指定して、弱い対外ポジションを持つ国からSDRを購入させることによってです。また、SDRは国際準備資産としての役割に加え、IMFや一部の国際機関における会計上の国際通貨としての側面も保っています。
少し調べて見ると、ドル基軸通貨の換わりの通貨としてSDRが騒がれているのだと思っていたが、通貨ではなかったということにびっくりした。

 honyu | 2009.10.14 1:00

米ドル表示の1SDRの価値が毎日更新されているサイトで、各国のSDRの配分が算出できるものもありました。
→http://www.imf.org/external/np/fin/data/ms_sdrv.aspx
→SDRの配分
計算方法
【U.S. dollar equivalent】の縦軸で見ると、4通貨のドル換算したIMFへの融資額が出ていて、その段の5段目に4通貨の総計が表されている。
総計を分母にして、各ドル換算した融資額を総計でわって100で掛けると各国の配分が100分率で算出できる。

 miyu | 2009.10.14 1:23

SDRを普及させるためには、今流通しているカネ(ドル)を引き上げ、引き換えにSDRを発行するという方法があると思います。
◆ロシア、外貨準備の米債比率引き下げIMF債購入へ(http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-38494020090610)
◆ブラジル、100億ドルのIMF債を購入へ
(http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-11801920091005)
◆中国、IMF債を最高500億ドル購入
(http://www.business-i.jp/news/bb-page/news/200909040051a.nwc)
最近上記のニュースでその動きが見られます。
かつてゴールドスミスなどの金細工師たちが、金貨を預かった証拠として「預り証」=「債権」を発行し、それが金貨そのものと同様の価値をもつようになり金貨の代替物=「紙幣」として流通し始めたという仕組みと同じと言えるのではないでしょうか?

 経済問題研究所 〜508号調査室〜 | 2009.10.14 1:47

HSBCの活動拠点が新興経済へと本格的にシフトした

元記事:HSBC bids farewell to dollar supremacy (Telegraph:2009年9月20日 By Ambrose E…

 SEN | 2009.10.14 18:33

人民幣(中国元)は変動通貨制ではなく恣意的ドルペッグだと思う今日この頃
中〜小規模経済国には良いかもしれないけれど・・
国債取引される通貨には適応できないのが問題
変に利ざやが取れてしまうとフェイクマネーが暴走する危険があると思います。

 細谷 幸喜 | 2012.03.29 15:28

コモディティバスケットを調べていたら、素晴しいサイトに出会い感謝です。
ロジカルな説明には敬服いたしております。
今後とも参考にさせて頂きます。

 wholesale bags | 2014.02.10 10:34

金貸しは、国家を相手に金を貸す | ドルに代わる通貨システムは?〜1.『通貨バスケット』とはなにか?〜

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