2010-03-21

GDP信仰からの脱却14〜共認原理社会の実現度を指標化する:社会編

GDPに代わる新たな指標は、豊かさを達成した現代の次の先端課題である「共認原理社会の実現度」ではないか、という提起から、前回記事では、企業における共認原理の実現度を表す指標とはどういうものかを検討し、大きくは4つあるのではないかと結論した。
その一つは「情報公開度」、もう一つは「イントラネット等での発信数・発信者数」。そして「経営権限の委譲度」。さらに、その成果指標として「社員の定着度(≒会社の魅力)」。もちろん、共認原理へ転換することによって活力上昇した企業では、売上やシェアなど、従来のモノサシで見た社会的評価も、同様に上昇していくことになるだろう。
では、これを「社会」というレベルにまで拡大した場合には、どのようなことになるだろう。今回はこれを考えてみる。
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●企業以外の集団の共認原理への転換
社会には、企業以外にも様々な“集団”が存在する。学校や病院、家族などだ。これらの集団では、どのような視点が有効だろうか。
学校や病院は、一つの経営体であるという側面では企業と同様に考えることができる。象徴的な存在は、「家族」だろう。
「家族」は、子育てや教育という重要課題を担う現代の最小集団だが、現在、企業以上に社会の活力衰弱を象徴する存在でもある。私権を追い求めていた時代には家族もやはり輝いていた。それは、消費だけの場となった家族とは、豊かさの最終的な享受の場だったからだ。そして、豊かさの実現とともにその子育て・教育機能は機能不全に陥ってしまった。即ち、現代家族というカタチそのものが豊かさ追求の時代の産物だったと言える。
従って、「全員参加の社会」を考える時の視点は、家族という集団内で子育てや教育をどううまくやっていくか?という問題ではなく、「みんなで子育て、教育」をどう実現していくか、言い換えれば、現在は家族内部に閉じられている子育てや教育機能をいかに周りに開いていくか?という切り口が必要になるだろう。
この課題の指標化は難題なのでここでは切り口にとどめるが、学校と保護者の協働の度合い(単なるPTAではなく教育の当事者としての教師と親の協働)、企業であれば“子連れ女子社員”の採用度、などが考えられるかも知れない。
●集団を超えた社会(地域〜国)の共認原理への転換
企業や家族といった集団を超えた場として、地域や国というものがある。これが今回の本丸だ。日本は一応、議会制民主主義を標榜しているが、とても「全員参加型の社会」とは言えない。それは、社会統合を担うべき議会や行政が、自分たちの利益や権利を第一に考え、社会のことは第二義に考える存在になってしまっているからだ。

 だが、宗教集団や政治集団はもちろん、マスコミも学会も国家(行政組織)も、夫々は単一の集団でしかない。ところが、集団というものは自己収束(もっと言えば自己閉鎖)性が強い。従って当然、彼ら官僚や学者やマスコミや政治家たちの、自集団の利益が第一になってしまう。そもそも、各集団を超えた次元にある社会を統合する組織が、実は単一の集団でしかないというのでは、社会を統合する資格などない。
実現論より)

最近、名古屋市の河村市長や鹿児島の阿久根市長が、議会の既得権益を崩し、住民の意思決定を行政に反映させる改革を進めようとしている。
るいネットより
住民自治の新たな動き〜予算執行権を持つ名古屋市の「地域委員会」
一人ひとりが「社会を丸ごと引き受ける」と言う自覚〜阿久根‘ブログ’市長、竹原信一氏のメッセージ
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名古屋市の河村市長(左)と阿久根市の竹原市長(右)
このように、共認原理による全員参加型の社会の最終的な姿とは、地域であれ国家であれ、企業集団や個人を含めて、そこに住んでいる人々自身が、地域課題や国家課題を自ら考え、意思決定し、地域運営や国家運営を自ら担っていく社会だろう。
●社会的発信の場⇒その共認力の上昇⇒全員参加への制度転換
上記のような社会が実現していくには大きく4段階程度のステップがイメージされる。
1.社会系の発信・議論の場の増加・拡大
誰もが社会について考え、発信し、議論するサイト(社会系サイト)や集まり(社会系サークル)が増えていく段階。現在はこの初期段階にあると言えるが、まだ実際の権限などなく、影響力も小さい。それは、今や庶民の意識とはかけ離れた大マスコミの発信が、いまだに自称「国民の声」として幅を利かせているからだ。
2.社会系の発信の場の共認力(影響力)の拡大
1のような社会系の発信・議論の場での発信内容が、現在の制度のもとで統合階級(政治家や官僚)に対して影響を強めることで、大衆の意思が国家運営や行政運営に反映されやすくなっていく段階。これは言い換えると、マスコミvs草の根の社会サイトの戦いであり、おそらく最も時間がかかる。
3.庶民・住民が直接社会運営に参加する制度が確立する段階
全員参加の社会系サイトなどが、正式に(?)地域や国家の意思決定システムとなり、さらに、その執行自体も大衆が直接担っていく仕組みが確立する段階。万や億の単位の人間の意思決定にはそれなりのシステムが必要になるだろうが、インターネットを使ってルールを決めてしまえば、不可能なことではないし、2の段階での勝敗が明らかならば、もはや制度転換も難しいことではない。
とすると、「共認原理による全員参加型社会の実現度」の最も典型的な指標とは、上の2の段階の「社会系サイト等 vs マスコミ」の力関係を表す指標に収斂すると考えても良さそうだ。
例えば、【社会系サイト等の数】【発信数・発信者数】【読者数・閲覧数】などが指標になりうる。そして。おそらく最終的に、マスコミは不要になる。よって、マスコミの【視聴率(の低下)】【購読者数(の低下)】【業界の縮小】なども指標になるだろう。
前回の企業の共認原理への転換、そして今回の地域や社会の共認原理への転換を示す要素が指標化され、これが上昇する方向でもし政策が打たれれば、同時に企業や社会全体の活力も上昇していくことになるだろう。仮に指標化されなくても、これがポストGDPの社会の最重要課題であることは、間違いない。
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実は、「全員参加の社会の実現度」という指標は既存の統合階級には採用されない、という根本的矛盾がある。なぜなら、それは彼らの職業、食い扶持を奪うものだからだ。しかし、名古屋や阿久根の心ある一部の為政者たちによって、また、力を持ち始めたネット世論などによって、このような視点が次第に広まっていくことを期待したい。

List    投稿者 s.tanaka | 2010-03-21 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?2 Comments » 

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コメント2件

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