2010-02-07

GDP信仰からの脱却9〜スティグリッツらによる新たな社会指標の検討

前回記事で、GDPに代わる社会指標を開発しようとする最新の動きの一つとして、仏サルコジ大統領が音頭をとり、ジョセフ・E・スティグリッツ教授がチェア・マンとなって、GDP代替指標を検討しようと始動した『経済のパフォーマンスと社会の進歩の測定に関する委員会(the Commission on the Measurement of Economic Performance and Social Progress)』の存在を紹介した。

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参議院調査室が発行する「立法と調査」最新号に、この委員会が昨年9月に発表した報告(CMEPSP報告)の内容が紹介されていた。そこで今回は、スティグリッツらの報告がどのような視点で何を提案しているのか、その中身をみてみる。
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以下、「立法と調査」平成22年1月15日号に掲載の記事『幸福度の測定をめぐる国際的な動向について〜新たな指標策定の試み〜』からCMEPSP報告の要点をまとめた(図表はこの記事より)。
■CMEPSP報告が掲げる、GDPの6つの問題点
1.社会の幸福は、生産指標よりも、個人や家計の所得、消費などの指標の方が望ましい
・例えば、米国ではこの40 年で一人当たりGDPは2 倍になったが、平均家計所得は30%しか伸びていない。
2.個々人の幸福を高めることにつながらない要素はなるべく含まない指標が望ましい
GDPであれば資本減耗などは控除される必要があるし、所得であれば、税金や金利の支払いなどが控除されなければならない(グロスではなくネットの指標)。
3.GDPはもっぱら量的な側面に注目するものであり、質や価値は考慮されていない
サービスの質や価値を測るためには、インプット(サービスの供給量)だけではなくアウトプット(パフォーマンス)も考慮する必要がある。
4.個々人の幸福を形成している家事や余暇活動はGDPでとらえることは困難
GDPでカウントされていない非市場活動は、家計労働ではGDPの3 割、余暇についてはGDPの8 割に達するものとみられる。
5.幸福はフローの所得や消費のみならず、富あるいはストックの影響も受ける
このような富は、フィジカル・キャピタル(物的資本)、ナチュラル・キャピタル(自然資本)、ヒューマン・キャピタル(人的資本)、ソーシャル・キャピタルに分類できる。
6.幸福を専ら一人当たりGDPのような平均指標で考えるのは問題
平均値が上昇したとしても、経済的な不平等、経済格差が拡大すれば、全体としての幸福度は低下するかもしれない。


以上、報告では、今日の経済社会の統計的測定に当たって、「経済的な生産の測定から幸福(well-being)の測定へ」と重点をシフトさせる必要があることが強調されている。
■“生活の質”(Quolkity of Life:QoL)をどう測定するか?
“生活の質”という捉えにくいものを指標化するために、CMEPSP報告では、【主観的幸福アプローチ】【ケイパビリティ・アプローチ】【経済学的アプローチ】という3つのアプローチが提案されている。

【主観的幸福アプローチ】はアンケートや感情の計測などによる心理学的アプローチ。上図中の“U−インデックス”とは人間がネガティブな感情に支配されている時間を測定したインデックスとのこと。
【ケイパビリティ・アプローチ】の“ケイパビリティ(capeabilities)”とは「能力」や「可能性」という意味で、もう少し客観的に人々の活動状況や社会的環境から生活の質を評価しようというアプローチ。
【経済学的アプローチ】は、“無差別理論”なる経済学の小難しい概念が登場しているが、どうやら消費生活における合理的選択の自由度の高さを測ろうということのようだ。
■サスティナビリティを測定する

報告では、幸福は、サステイナビリティ(持続可能性)とも密接に関わるものであるとされている。(中略)サステイナビリティの問題の本質は、どれだけのストックを将来世代に引き渡すことができるかであるといえる。

つまり、貨幣的、非貨幣的な“ストック”の持続可能性を測定しようとする発想。サスティナビリティの計測にはは将来の見通しという難しさがあるため、今回報告では環境フットプリント(人間の活動が環境に及ぼす永久的な影響、足跡)など、幾つかの候補指標の例示やその合成指標の作成などの可能性を挙げながらも、視点の提示にとどまっているようだ。
■CMEPSP報告への疑問点
現在のGDPに関して述べられている6つの問題点は、市場化された活動のみしか評価されないという点など、これまで本シリーズで検討してきた内容と重なる部分もある。また、総額あるいは一人当たり平均というモノサシしか持たないGDPでは格差問題の評価が欠落するという指摘も首肯できる。
一方、「幸福度」という曖昧なモノを評価しようとするが故に、(GDPの代替指標を検討している多くの事例に見られるが)アンケートや心理学などの主観的アプローチを取ろうとしている点には疑問が残る。確かに、社会指標が人々の活力や目標を示すものであることが望ましいのは当然だが、一方で、人間の主観ほど当てにならないものはないというのも一面の事実だからだ。
また、「生活の質」を測ろうとする視点の中に、余暇時間や気候変動など現代特有の支配的な価値観が混じり込んでいる点も気になる。
これからの社会指標を考えるに当たっては、これら個々人の主観や時代によって変動しやすい価値観を可能な限り排した客観性と普遍性を持ち、かつ、それが確実に新しい人々の活力に繋がっている要素を見出すことが重要ではないかと思う(その意味で、GDPは良くも悪くも「お金」一本という単純明快さを持っている)。
今回は先進国代表のフランスの事例を紹介したが、次回は、発展途上国の代表、ブータン国王が40年近く前に提唱した「GNH」という指標開発の現在の進展状況について押さえてみる。

List    投稿者 s.tanaka | 2010-02-07 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?4 Comments » 

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