大恐慌の足音・企業は生き残れるか? 第1回 〜パナソニック〜
今年の春以降、パナソニック・シャープ・ソニーの三大家電企業の経営危機、日本通販の民事再生法申請、スズキ米国法人の連邦破産法申請など、日本企業経営不振や倒産のニュースが再び目立ち始めています。リーマン・ショック以来進んできた急激な市場縮小が、実体経済を遂に崩壊させ始めたと考えられます。もし、そうだとすれば、これから2013年3月の決算、さらには来年度、再来年度に向けて、多くの日本企業が極めて厳しい情勢に追い込まれていく可能性があります。そこで、今回のシリーズでは、有価証券報告書(決算報告)をもとに、幾つかの上場企業の経営状態に焦点を当て、今後どのような事態が予想されるのかを探ってみます。
今回扱う企業は、“経営の神様、松下幸之助”も嘆きそうな「パナソニック」です。
「普通の会社ではない」パナソニック社長、巨額赤字に厳しい表情(2012.10.31)
パナソニックは31日、平成25年3月期の連結業績予想を大幅に下方修正した。世界的な景気減速でデジタル家電など、ほぼ全ての事業分野で当初の販売計画を下回る。
(中略)
同日発表した24年9月中間決算も最終損益が6851億円の赤字(前年同期は1361億円の赤字)となり、中間期として過去最大の赤字。25年3月期の配当は見送る。無配は昭和25年5月期以来、約63年ぶり。
(中略)
平成25年3月期の売上高は前期比7・0%減の7兆3千億円の見通しで、8千億円下方修正したが、「下振れ要因の8割がデジタル家電」(津賀社長)という。テレビの年間販売計画も、1250万台から900万台に引き下げた。
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◆パナソニックの経営状況分析
今回シリーズでは、毎年の決算報告に基づいた共通の表形式で、取り上げる各企業の基礎体力と利益状況の分析を行ってみます。表の見方は次の通りです。
企業体力分析の定義
<短期の企業体力を示す『流動比率』>
・流動比率とは、流動資産を流動負債で割ったものです。(%で表します)
・流動資産とは、1年以内に現金化でき、借金返済の原資です。
・流動負債とは、1年以内に発生する返済義務です。
・流動比率は120%以上あるのが望ましいといわれています。
・これは、1年以内の返済義務に対して、支払い原資が1.2倍あることを示しています。これ位の余力が必要なのです。
<長期の企業体力を示す『自己資本比率』>
・自己資本比率とは、自己資本(純資産)を総資産で割ったものです。(%で表します)
・自己資本(純資産)は、総資産から負債(流動負債+固定負債)を引いたものです。
つまり、現在ある資産のうち負債(借金)に頼らずにもっている資産です。いわば、企業活動で蓄積した資産です。
・自己資本比率は、製造業では最低20%が必要だといわれています。
以下は、2007年以降の決算報告によるパナソニックの経営状況です。
パナソニックの企業体力分析
上表より、流動比率(短期体力)は2009年3月ピーク時の160%から3.5年で65%低下しており、12年の第2四半期で100%を切る95%まで低下しました。
自己資本比率(長期体力)は近年約8%ずつ低下し、12年の第2四半期で21%と2007年の半分以下に落ち込んでいます。また、2011年3月に2.9兆円あった自己資本が、今年の9月には、1.1兆円に激減。1.5年間で1.8兆円も減っています。このまま経営悪化が続けば、再来年の3月には、パナソニックは債務超過に陥る可能性すらあります。
外資比率は、2008年3月に29.2%ありましたが、2012年9月には22.0%にまで低下し、低下傾向にあります。外国人株主も逃げているようです。
パナソニックの利益状況分析
パナソニックは、2009年にSANYOと合併を果たしています。
売上高を見てみると、2007年9兆円から2009年には7.4兆円と低下しますが、合併後の2010年度には一旦、8.7兆円まで増加しました。しかし、冒頭のニュースにもあったように2012年度末の予測は、合併前の数字に戻っています。
また、従業員数も2009年SANYO合併時38万人(+8万人)から、2012年3月には33万と5万人減っています。更に今年も1万人以上の削減が見込まれています。
つまり、事実上SANYOはすでに消滅してしまったと言えます。
◆パナソニックの経営悪化の主要因
次に、ここまで経営悪化きたす主要因を見ていきたいと思います。
セグメント別の売上と利益
ここ数年売上が悪化しているのは、AVCネットワークス(テレビ、DVDプレイヤー、音響、パソコンetc…)、エナジー(太陽光発電、リチウムイオン電池etc…)の2つです。
AVCネットワークスは、市場縮小による売上と価格の低下によるものと言えます。
エナジー社は、太陽光発電、リチウムイオン電池の収益を見込んでいた旧SANYOとの合併が失敗した結果が顕著に表れています。
地域別売上
地域別売上を見ると、2007年から2011年の4年間で国内8.4%(3828億円)、海外18.6%(8399億円)売上減となっています。とりわけ、欧州37%、米州22.7%の落ち込みが響いています。
◆分析結果(まとめ)
ここまで、経営状況を分析してきましたが、市場縮小、合併の失敗の影響を受けたパナソニックは、自己資本が急落。このままでは、2年以内に債務超過を引き起こしかねず、企業消滅の危機を迎えていると言っても過言ではないです。
最近のニュースでは、以下のような報道がなされています。
「パナソニックがTV事業を縮小、今期1000人超削減へ=関係筋」
「パナソニックが携帯事業を縮小、減損処理も=関係筋」
「パナソニックが2年連続で巨額赤字、太陽電池事業を縮小へ」
「来期は1万人を削減予定。加えて、88の事業部門を再編して56部門へ」
では、他の家電企業はどうなっているのでしょうか?
次回、大手家電企業「シャープ」を見ていきたいと思います
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