不動産市場はバブル?
サブプライム問題をきっかけにリート市場が下落、余剰資金はリスク回避から国債などへ逃避といった現象が起こっている。
しかし、直近の現象以前に、そもそも最近の現物不動産価格や家賃相場はバブルではないのか?といった声も聞かれる。
ということでデータを調べつつ、バブルか否かについて考えてみました。
興味をもたれた方、ポチットしてから続きを見てください。
●最近のREIT市場の動向
・日本を始め欧米のリート市場は下落
・豪、シンガポール、新興市場のドイツなどのリート市場は堅調
・逃避している資金は、サブプライム問題からの連想で不動産市場の下落リスクに過剰反応
・サブプライム関連での欠損の穴埋めのための利益確定のためにリートを売却する動き
・リートに組み込まれている物件価格は相場より低めという事情
・オフィスなどの現物不動産の市況は堅調
といった事情から、遠からず回復する気配というのが概ねの市場関係者の見方のようだ。
今回は、現在の不動産市場について「バブル論」と「バブル否定論」を比較検証しているレポートを紹介します。(リンク)
●「バブル論」と「バブル否定論」の主要な論拠
<バブル論>
・不動産価格の急騰と利回りの低下が危険水域
・住宅系投資不動産市場は高齢化、人口減少で遠からず需要縮小
・オフィス系投資不動産は今のところ堅調だが、家賃上昇そろそろ頭打ちで、過剰な上昇を見込んでいる案件については危険水域
・私慕ファンドがスポンサーになっているリートの場合、ファンドの出口とするために過大な価格設定になっている恐れがあるという見方
<バブル否定論>
・複数の不動産に投資しているからリスクを小さくできるので、従来の単発不動産投資よりも強気の値付けができる
・収益還元法やデューデリジェンス、プロパティマネジメント、建物メンテナンスなどの関連業務が高度化しており、従来の不動産投資よりもリスクを小さくできるから強気の値付けができる
・リート、ファンドの投資は、従来のエンドユーザーを対象とするものと違う位相の市場を形成しているから、公示地価や路線価からの乖離を問題にしても意味がない
〜以下、引用レポートから、抜粋掲載〜
リートやファンドによる取得競争の激化で不動産価格が高騰し、利回りが急速に低下していった04年後半ごろからミニバブルが囁かれ、価格の調整が近いことが指摘され続けてきたが、その後もリート・ファンド市場は拡大し、5月1日の東証リート指数は2003年4月の指数算出開始以来の最高値を付けた。このような上昇が依然として続いているのはなぜだろうか。その理由として
・オフイス賃料の上昇
・世界的な不動産価格の同時高
・海外不動産ファンドの積極投資とリート市場の外国人投資家の買い越しがある。
●オフイス賃料の上昇
都心3区のAクラスビルの新規賃料は1年で2〜3割程度上昇したといわれている。例えば三菱地所は新丸の内ビルの賃料を周辺相場より2−3割高い坪65000円としたが、満室となった。継続賃料で見ても日経新聞のオフイスビル賃貸料調査(上期.4月実施)によると東京で前年同期比12.13ポイント上昇し、上げ幅は93年以降で最大となった。
(中略)
賃料の上昇と空室率の低下で貸し手優位の市場となっているが、オフィスビル市況の堅調を受け、リートや実物不動産の価格は上昇している。
賃料上昇期待のベースになっている今後のオフィスビル需給動向であるが、東京都心部は、しばらくは供給がタイトで推移すると予測されている、福岡などは07年、08年にオフイスの供給が増加すると見られており、全国的にみるとまだら模様となるためエリアごとに注意が必要だ。
●世界的な不動産価格の同時高
投資用不動産価格の高騰は、日本だけに起きている現象でなく世界的規模で起きている。世界の不動産同時高の背景には、米国の経常赤字の累積、産油国のオイルマネー、国内金利と主要国との金利差に基づく円キャリートレード、欧米を中心とするキャッシュリッチ企業の世界的なM&A活性化等による潤沢なマネーなどの過剰流動性がある。またカルパース、ABPなどの世界の年金基金(年金基金総額約2250兆円)による基本アセットクラスの株式、債券以外の代替的資産である不動産へのオルタナティブ投資が世界の不動産価格の高騰の一因にもなっている。
米国では、サプライムローンの貸し倒れ懸念が広がり住宅価格のバブルが沈静化してきているが、アジアでは中国、韓国、インドの地価が高騰し、欧州ではスペイン、フランス、英国、ロシアなどの不動産価格が高騰した。またリート制度の導入が世界的に進んでいる。欧州では1969年に導入されたオランダのリートが古いが、07年2月末でベルギー、フランス、ギリシャ、英国に導入されており、ドイツ、イタリアにおいても導入が予定されている。アジアではシンガポール、香港、台湾で導入されており、世界的規模で不動産投資のクロスボーダー化が進行している。
世界の上場リートの時価総額は3月末で100兆円に達し、投資家の国際分散投資の期待に応えようとしている。つまりリートによる投資用不動産の標準化過程を経て各国のローカルな不動産特性が均質化され、金融商品への転換が進むため、世界の投資用不動産がネットワーク化され、一挙にリンクする可能性が高まっている。
●海外ファンドの積極投資と外国人投資家のリート買い越し
日本の投資用不動産については、日本の景気拡大を背景にオフイスの空室率がゼロ近くまで低下しており賃料上昇を見込めば不動産価格上昇余地がまだあるとして海外不動産ファンドが積極的に投資している。
(中略)
最近は、外資勢も投資適格地で取得物件が枯渇してきたため、優良不動産を保有する企業ごと買おうという動きも出ている。
リート市場では外国人投資家が積極的に投資をしており、円安も追い風となり、リート市場で買い越しているのは外国人投資家の旺盛な買いがあるためといわれている。
(中略)
日本の不動産のみを対象にしたオーストラリアの証券取引所にリートも3法人が本国に上場しているが、日本のリートを買収し、投資スケールを拡大して豪市場に上場する計画もあるらしい。
リートの利回りは、米欧に比べ日本のリートは低いが、各国の長期金利と不動産の投資利回りから見て、逆スプレッドになっている米国などと違い、日本は、スプレッドが縮小したとはいえ米欧に比べるとまだ大きい。「日本経済は成長軌道に乗ったと判断され日本の不動産市場はこれから本格的に回復するはず。」(モーリー・ファンド・マネジメント イーアン・ウーマック氏、日経5.2)といった見方が海外投資家に多い。
●いまバブルか?
・バブルかバブルでないかを現状で判断するのは難しい。筆者の見解は、不動産投資市場が変質しており、バブルが発生しにくいとした「バブルでない論」に近いが、個別の不動産のなかにはファンダメンタルズを乖離したものがあるという見解だ。
・実務家の立場から言わせてもらうと収益還元法で投資用不動産取引が行われているのでバブルが発生しないという見方は問題だ。
(中略)
プレイヤーが、市場の熱気で冷静さを失い、過度に楽観的なシナリオを描き、変数をセットしたら、その虚構性を探すことは難しい。その結果、市場に過大に評価された不動産が積み上がっていくことになる。現状の収益還元法で、「収益還元法で不動産が取引されているのでバブルが起きない。」などといえない のである。
●今後の展望
このような国内外の情勢から考えると不動産価格の上昇は、ここにきて早期利上げの観測が弱まり、投資適格地に限ると依然としてしばらく続きそうな気配だが、上昇幅は縮小し調整され、投資エリアによっては下落局面になると見ている。
まず今後の世界市場の不動産価格動向をみると不動産価格の懸念要因が見られる。米国はサプライムローンの焦げ付きなどで、1-3月の住宅投資の落ち込みや3月の新築住宅の在庫増加が深刻で、住宅価格が沈静化し、個人消費への悪影響が懸念されている。欧州も不動産ブームが一段落の気配が漂っている。ユーロ圏の懸念材料は、欧州中央銀行(ECB)による政策金利の上昇とユーロ高による設備投資や個人消費への影響である。
次に国内の不動産価格であるが、「このところの金融庁の監視の強化で競争入札の1番札でも融資がつかず取得できないケースも増加している。」(金融ビジネスNO250)。前回のコラムで書いたが金利上昇に加えバーゼルⅡの開始、金融商品取引法の施行、金融庁の融資の監視強化でリートやファンド間の格差が拡大し、淘汰、調整が進むだろう。すでにレジデンシャル系リートの銘柄のなかには投資口価格が上場時の公募価格を下回ったままのものもあり、運用会社主導でリート間の再編が動き始めているという。
海外ファンドの旺盛な日本国内不動産の買いや国内上場リートの外人投資家の買い越しは、今後の日銀の利上げでイールドギャップのさらなる縮小、逆転が起きたり、円高の局面になると投資家が引いていく と思われる。
拡大の一途を辿ってきた不動産投資市場だが、今後、調整のフェーズに入っていくと見る有力な根拠は、キャップレートが2%台に突入し、限界値に近づいてきたということと、賃料上昇余地の今後の縮小である。継続賃料の更新の困難性もあり「年間の上昇率はオフイスビルで賃料全体の3-5%にとどまりそう」(日経金融 石沢卓志)という分析もある。金融庁による融資の規制の強化で遵法性の要請が高まり既存不適格など問題を抱える物件や局所的に供給過剰となり競争力が低下した不動産は下落の局面となるだろう。
以上、実務家の立場からのきわめて現実的な見解だと思われます。
その中で目を引くのは、リート制度を普及させて、個別性が高いはずの不動産市場をグローバル化させようとする動きがあること、と複数の不動産を保有する企業を丸ごと買収しようとする動きも見られることです。
サブプライムローン問題も国際金融資本のしかけではないのかという見解もあるように、不動産市場をグローバル化させつつ、資本力によって莫大な収益を上げようとする勢力がおり、国内の不動産市場もその影響下にある ことを認識して対応していく必要があると思われます。
目先の動きにとらわれて、決して彼らの尻馬に乗ってはならない 😡 ということを周知していくことが必要だろう。
by わっと
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コメント3件
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