2010-03-07

GDP信仰からの脱却13〜「共認原理社会の実現度」を指標化する:企業編

民主党鳩山政権が日本国民の「幸福度」を調査するというニュースが先週流れた。

happy_hatoyama.jpg「幸福度」については、昨年12月にまとめた新成長戦略の基本方針でも「国民の『幸福度』を表す新たな指標を開発し、その向上に向けた取り組みを行う」と盛り込まれた。

のだという。
GDP信仰からの脱却の動きが日本でも起こり始めたのは喜ばしいことだが、本ブログでは、豊かさを表すGDPに代わる新たな指標は「幸福度」という抽象観念ではなく、豊かさを達成した現代の次の先端課題である「共認原理社会の実現度」ではないか、という提起を前回記事で行った。
「共認原理社会の実現度」とは、具体的には企業における社員の経営参加度であり、国家運営における国民の参加度である。人々が当事者として企業や国家運営に参画することが、豊かな生活やお金儲けより遥かに大きな活力になるだろう。
では、まず企業における「共認原理への転換度」とは、どのように測ることが可能かを、考えてみたい。これは、国家全体を考える際にも適用できるはずだ。
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●情報公開度
社員が企業の当事者として経営に参加するには、まずは企業の情報が可能な限りオープンであることが必要だ。この情報公開度は共認原理社会の実現度の一つの指標になりうる。
具体的には次のようなものが考えられる。

①売上や利益などの経営基本データ
②経営方針や経営戦略などの経営情報
③人材配置・考査・給与など社員の人事情報
④より具体的な社員の活動内容の情報

①や②は、現在でも上場企業をはじめ一応は公開されているので、どれだけ詳細で具体的なところまで社員と共有されているかがモノサシになるだろう。
③は、私権社会においては非常にデリケートな情報であり、現在も殆んどの企業は公表していないだろう。しかし、一部の企業ではこれら人事情報の公開に及んでいるところも登場し始めている。
④は、より日常的、臨戦的な情報公開度だ(例えば、重役がいつ誰と会食をして、その目的・成果は何だったか?など)。これは、おそらく次の社内イントラネットの機能に委ねられると思われる。
●イントラネットの発信数・発信者数
情報公開はいわば既存の企業ヒエラルキーの上層部=経営層からの転換である。一方、その他の社員の経営参加度を測る代表的なツールとして、社内イントラネットの掲示板が考えられる。
このイントラネット掲示板が、どのくらい多くの発信で活性化しているか(=一人当たり発信数)、さらに、どれだけ多くの社員が発信しているか(=発信者数)が、その企業の共認原理の実現度を示すモノサシとなりうる。
イントラネットは既に多くの企業が導入しているが、殆んどはうまくいっていない。それは、上層部だけの通達ツールや企業経営に関係のない社員のコミュニケーションツールに留まり、経営に対する下からの発信を増やすことに失敗しているからだ。おそらく、上記の情報公開や次に挙げる権限の委譲と一体となって、社員の当事者度も上がっていくからだろう。
●経営権限の委譲度
社員の経営参加度を示す指標としては、上記のような情報公開や意見発信への参加というモノサシとは別に、いかに経営権限を社員が主体的に担っているかという、体制的な側面もある。具体的には

①社員出資比率
②社員借入比率
③統合ポスト(役員・チーフetc)の経験率

などが考えられる。①②は企業の資本金や運営資金を市場や銀行から調達する代わりに社員から調達するというもので、企業が存続する限り双方にとってメリットが出る。このような体制は、社員一人一人が当事者意識を持ち、企業を自ら育て、維持していくという意思が強くなければ実現しない。但しこれも、いわゆるファミリー企業のようにごく一部の社員だけでなく、どれだけ多くの社員が参画しているかが重要になるだろう。
こうした社員持ち株制のようなシステムは、株式市場や銀行にとっては決して有難くないものだが(また、臨戦的な資金調達が可能な金融機能を全く無くすわけにはいかないだろうが)、間違いなく企業の統合度は高いと言えるだろう。
③は、具体的には「全員役員制度」や「店長交代制」などで、いかに多くの社員が会社の統合的役割を担い、当事者として活躍し得ているかを示すものだ。
●社員定着度
上記のような体制やシステムは、極端に言えばトップからの命令=強制圧力で無理にやらせることもできなくはない。その場合、カタチだけは共認原理風になっても、実態は序列原理である、ということも起こらないとは限らない。
そこで、このような見えにくい部分を判断するもう一つのモノサシとして「社員定着度」が考えられる。つまり、社員の企業に対する愛着である。上記のような仕組みがカタチとして機能していて、なおかつ社員の定着度が高い(辞めない)となれば、ホンモノの全員参加が実現していて社員の活力と充足度が上がっていると見ることが可能ではないか。

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さて、このような全員参加型の経営体制を実現している企業は実際に存在している。そして、いずれも社員活力並びに業績を高いレベルで維持することに成功している。
一つは、広島を本社とするメガネ21という企業である。
共同体的企業〜メガネ21 ①会社に利益を残さず、社員と顧客に還元
共同体的企業〜メガネ21 ②全てをネットで公開
共同体的企業〜メガネ21 ③黙認制で無駄な会議を撤廃
もう一つは、大阪を本社とするるいグループである。
共同体・類グループの挑戦
上記に挙げたようなモノサシを国家が統計調査として確立・公表し、社会的評価を獲得できるようになれば、メガネ21や類グループのような企業が増え、日本の企業は活力再生の途につけるに違いない。
では、「全員参加度=共認原理への転換度」を日本全体、あるいは国家レベルで考えると、どのような指標・モノサシになるか?次回、本シリーズの最終回はこれを考えてみたい。

List    投稿者 s.tanaka | 2010-03-07 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?3 Comments » 

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コメント3件

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