2014-05-02

「BRICSは金貸しに操られているのか?」~4:中国 金融不安の背景?

「BRICSは金貸しに操られているのか?」シリーズの第4弾!今回は中国を取り上げます。

<成長著しい中国>

<成長著しい中国>

 

BRICS諸国の中でも成長著しいと言われる中国ですが、その実、内政では貧富の格差拡大、金融不安、官僚の汚職、政権抗争、外交では、日中対立、東南アジア諸国との軋轢など、様々な課題を抱えています。

果たして、中国は成長を持続させることができるのでしょうか?対立を深める日中関係の背後にある中国の実情と金貸しの思惑を探ります。今回は先ず、中国の金融不安の実情とその背景を考えてみます。

 

過去記事は以下をごらんください↓

 「BRICSは金貸しに操られているのか?」  ~1:ブラジル ワールドカップ・オリンピックの背後

「BRICSは金貸しに操られているのか?」 ~2:ロシア 金貸しによる人工国家からの脱却・プーチンの闘い

 「BRICSは金貸しに操られているのか?」 ~3:インド 金貸しによる暗躍は今始まったばかり?

にほんブログ村 経済ブログへ

1.中国経済の概況

(1)BRICs各国の名目GDPの推移


<グラフはリンクより引用>

これからの世界の成長市場はBRICSともてはやされた2000年代以降、中国の成長が突出しています。名目GDPでは、10兆USドルと、ブラジル、ロシア、インドの約2兆USドルに対して、およそ5倍もの金額に達しています。

 

(2)BRICs各国の経済成長率の推移

 

<グラフはリンクより引用>

しかし、GDPの成長率は近年頭打ちです。1980~1990年代では14%を超える成長率を叩き出した時もありましたが、近年はその半分の7%程度にまで低下してきています。

4月16日に発表された中国の第1四半期の実質GDP成長率は7.4%と、政府目標の7.5%とほぼ同じで、市場では安堵の声も広がっているようですが、この成長率はかなり無理をして達成しているとの見方もあるようです。(元々、中国の経済統計は捏造の疑いが強いと言われており、内実はかなり厳しいと見ておいた方がよさそうです。)

> その内実を見ると実を見ると主要経済指標は軒並み減速している。加えて、過剰債務問題も政府の自信とは裏腹に制御可能かどうか不透明感が漂う。内需にも陰りが見えるため、依然として頼みの綱は「輸出」という状況が続く。

GDP成長率7.4%達成でも綱渡り続く中国経済より引用>

 

2.シャドウバンキング→理財商品バブルの実態

制御可能かどうか不透明感が漂う「過剰債務問題」とは、理財商品バブル問題です。その実態を見ていきましょう。

>「シャドウバンキング」とは何か? 一般的には「銀行を通さない金融取引」を指す言葉として受け止められているが、その実体は、高金利商品を販売して集めた資金を、銀行とは異なる投資会社を通して不動産投資する資金運用である。言うならば、リーマンショックを引き起こしたあの「サブプライムローン」の中国版である。

>2008年のリーマンショックで崩壊した経済を再建しようと、各国政府が財政投資に巨費を投じたことは記憶に新しいところである。その中で中国政府は4兆元(64兆円)の景気浮揚策を行うこととなった。しかし、中央政府が投じた資金はわずか2000億元(3兆2000億円)、後の3.8兆元(64兆 8000億円)は国有企業や地方政府が自分たちで資金調達を図って景気浮揚策を実効せよと言うことになった。

>そのため、国有企業や地方政府は大銀行から融資を受けることになったが、地方政府は直接銀行からお金を借り受けることが出来ないため、投資会社を経由して調達することになったのだ。その結果、2010年末にはその資金は政府が計画した景気浮揚資金4兆元を遙かに超えた10.7兆元(170兆円)までにふくれあがり、その巨額な資金が不動産開発や公共事業資金として市場に投入されるところとなった、というわけである。

>その結果、各国がリーマンショックから立ち上がるのに四苦八苦しているのを尻目に、中国経済はV字型に回復しGDPの伸び率が12%となって世界経済の牽引国となったのである。それは 一方で中国の不動産バブルを巨大化させ、北京や香港の都市部のマンション価格を急上昇させ、地方都市では、人の住まない巨大な幽霊公団住宅があちこちに出現するところとなった、というわけである。

<理財バブルの象徴:誰も住まない超高層マンション>

          <理財商品バブルの象徴:誰も住まない超高層マンション>

>ところがである、最近になって国有企業や地方政府が集めて投資した資金の総額は10.5兆元どころか、なんと30兆元(480兆円)を超えていることが明らかとなったのでる。この金額は中国GDPの55%に当たり、日本の国家収入の10年分という、とてつもない金額である。これだけの資金が不動産関連に投資されたら、巨大バブルが発生して当然である。

>なにゆえこんな膨大な資金が集まったのかというと、そこにシャドウバンキングなる存在が浮かび上がってくるのだ。地方政府の役人達にとって大量のカネの流れは得るところが多く、また中小の地方銀行にとっても不動産開発や公共事業への融資はうまみのある商売であった。高金利で融資が出来るし、地方政府の保障が得られるからである。そのため大量の資金集めのため、新たな投資信託会社なるあやふやな銀行もどきの会社を設立して、一般の民間投資家たちに理財商品という高利回り商品を販売してきたのである。

>ここに来てインフレを恐れた中央政府が市場金利を引き上げ出したことから、短期金利が急上昇して銀行間同士の融資がストップし、地方銀行の倒産が噂され始めて来た。
>驚いた中国政府は急遽、金利低下策を取ったので一旦は株式市場の混乱は収まったものの、このまま金利低下を続けるようなら再びハイパーインフレと不動産バブルが発生しかねないため、どこかで金利高政策に転換せざるを得ないはずである。

>その時は35~40兆元(560~640兆円)とも噂されている想像を絶する超巨大バブルの崩壊が始まる時となり、世界経済崩壊の引き金を引く時となりそうである。 国家予算も国内総生産(GDP)も我が国とさして変わらない中国で、500兆円を超す不動産投資の破綻によって生じる不良債権額を考えると、空恐ろしくなってくる。

中国のシャドウバンキングの実態より引用>

 

3.中国バブル崩壊と世界経済への影響

中国の理財商品バブルの崩壊は、日本の国債市場にも影響を与え始めています。

>中国で理財商品バブル進行し、理財商品で作り出した資金が、日本の株式や国債市場に流入し、株式の値上り、国債の値上り(金利は低下)をもたらしていた。 しかし、その理財商品バブルが崩壊過程に入り、急速にその資金が縮小しだした。日本への理財商品がらみの資金流入は3兆円とも5兆円ともいわれている。その資金流出が、3月12日の日本国債先物の一時的暴落を引き起こした。

 中国・理財商品の崩壊を背景とした、日本国債先物の暴落より引用>

 

しかし、一方で理財商品バブル崩壊の影響は中国内部の富裕層・共産党幹部を直撃するが、外資系企業はほとんど影響は受けないという見方もあります。

>シャドーバンキングの中核をなす、いわゆる理財商品を大量に買っていた人は、いずれ悲惨なことになるだろう。しかし、それらを買っていたのは、貧しい庶民ではなく富裕層だ。バブルが崩壊すれば、資産家や官僚、中国共産党の幹部などは没落するかもしれない。

>ただ、国際経済への影響はそれほど大きくない。中国で活動する企業には、国有企業のほかに民族資本の企業、外資系企業の3つがある。このうち、国有企業は共産党幹部や官僚などに利権を分配するのが重要な仕事であって、効率は非常に悪い。シャドーバンキングは、主に中国の地方政府が公共事業を国有企業などに発注したことで生まれてきた仕組みだ。地方政府の資金調達手段が、シャドーバンキングというわけだ。

>したがって、不動産バブル崩壊で投資プロジェクトが行き詰まれば、資金の出し手や国有企業、民族系企業は打撃を受ける。でも、外資系企業は絡んでいないから影響はほとんど受けない。

 中国・理財商品の崩壊は、中国富裕層・共産党幹部を直撃するより引用>

 

●まとめ

上記引用記事を参考に中国の金融不安の背景を分析し、今後の中国経済の行方を考えてみます。

・中国の理財商品バブルを生み出した原因は、シャドウバンキングと言われる「銀行を通さない金融取引」が膨大に膨らんだことにあるが、500兆円を超すほど(中国GDPの半分以上)にまで膨らんでしまった原動力は、共産党幹部、地方政府官僚、資産家などのごく一部(全人口の2~3%に過ぎないと言われる)の富裕層のあくなき私権追求にある。

彼らは、庶民に利益を分配し、国民所得を上げて購買力を上昇させ、貧富の格差を縮小して行くことはほとんど考えていないため、いくら不動産などに投資をしても実需がついて来ない。

・元々正規の銀行の金融取引よりかなり高い利回りで投資しているため、実需がついて来ないと、期待した投資利回りが得られず、たちまち破綻してしまう。誰も住み手(使い手)のいない不動産投資、公共投資→理財商品バブルは必然的に崩壊する。

先の引用投稿でも中国経済が恐ろしく投資偏重になっており、壮大な資源浪費と過剰生産、過剰投資によって、表面的に高い成長率を維持してきたが、国有企業に投資が傾斜配分され、個人消費には寄与しないことを理由に“中国経済はもはや限界”と断言している。

 

・問題は、理財商品バブルと金貸しとの関係だが、バブルの演出とバブル崩壊による企業支配は金貸しの常套手段である。(歴史的に見ても、NY株式バブル→1929年世界恐慌→米国経済支配、1985年プラザ合意→日本バブル→1989年バブル崩壊→その後の日本経済支配の強化など、金貸しの仕掛けである。)

中国の理財商品バブルは外資系企業はほとんど絡んでいないという実態からみて、金貸しがバブル崩壊後、中国の国有企業、民族資本の企業への支配力を強めるように狙っているという可能性が十分あり得ると思われる。

 

いずれにせよ、中国経済は成長限界を迎えていると見るべきでしょう。相変わらず内需拡大より「輸出頼み」という状況が続いているようですが、「輸出頼み」を強めれば強めるほど、金貸しの思惑通りになって行く可能性が高いのではないでしょうか?

 

次回は、「中国内部の政権抗争」を見て行きます。お楽しみに!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

List    投稿者 yukitake | 2014-05-02 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?No Comments » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2014/05/2349.html/trackback


Comment



Comment