2009-07-09

食料自立への道を探る10.タイの国際米価格の高騰がアフリカ・中米の食料暴動を引き起こした!!

08年、食料品やガソリンを中心に価格が高騰し日本でも騒動となった事は記憶に新しいと思います。我が家でも、なかなかバターを入手できませんでしたが、バターなどは我慢すれば済みます。ところが食料を巡る暴動が世界のあちこちで捲き起っています。 
 
国連食糧農業機関(FAO)によると2008年3月から5月にかけて、ソマリア、エジプト、カメルーン、コートジュボアール、セネガル、ブルキナファソ、エチオピア、マダガスカル、インドネシア、フィリピン、バングラディシュ、ハイチで食料暴動が起き、多くの死者や負傷者がでました。12カ国です。 
なかでも中米ハイチの民衆は口々に「腹が減った!」食料を寄こせ!」と叫び、まさに革命状況を呈したという事です。 
 
ハイチで「食糧寄こせ!」の大暴動 
リンク

この数日来、ハイチで食料品の高騰に抗議する激しい暴動が全土で闘われている。民衆はバリケードをつくり、車に火をつけ、銀行やスーパーになだれ込んでいる。首都のポルトープランスでは、数千人の民衆が市の中心部にある大統領府に突入しようとしたが、ゴム弾や催涙ガス弾を撃ちまくる警察と国連部隊がかろうじて阻止した。市街戦のなかで少なくとも5人の民衆が殺されている。 
 
  haiti_rtr_080410-thumb-200x150.jpg
  (写真は4月10日の首都ポルトープランスの様子)

ハイチは中米で、いや西半球で最も貧しい国の一つだ。民衆の80%が1日2ドル以下で生活している。それなのに、基礎的な食料品(・とうもろこし・豆など)や石油など燃料がこのわずか数か月のあいだに2倍にもなった。多くの人々にとって文字どおり飢餓死が迫っている。

お米を主食とするハイチで暴動が起こったのは、ズバリ、米の国際価格が高騰し、お米を輸入できなくなったからです。 
 
本文を読む前に、クリックを宜しく!

 
 

にほんブログ村 経済ブログへ


世界の米生産、輸出の状況 
 
まずは、お米の生産と輸出(生産余力)をみてみます。
asiarice02.bmp
巨大人口を抱えた、中国・インド・インドネシア・バングラデシュと続きます。
次の生産国が、ベトナム・タイ・ビルマ(ミャンマー)です。
asiarice03.bmp
輸出実績となると、断然タイがトップです。年間1000万トンの輸出です。日本の生産量が800万トンですから、日本の総生産量以上を輸出に回せる力がタイにはあるのです。 
 
お米の国際価格は、タイ農業先物取引所で決まる 
 
ところで、タイのお米価格で国際価格が決定されるという事を、皆さんご存知でしたか? 
最大の輸出国であるタイに、「タイ農業先物取引所」があり、そこで、米の輸出価格の取引きが行われ、この価格が、米国際価格の基準となります。(小麦やとうもろこしが、シカゴ穀物取引所で価格決定されるのと同じですね。) 
 

(ポップアップ。出典:農業情報研究所
 
上のグラフでは、米国際価格の指標となるタイ白米の輸出価格はトン当たり600ドル前後で現在推移しています。
3年前の06年1月段階の価格はトン当たり300ドルでしたが、国際資本(金貸し)が投機介入した08年5月には、トン当たり1000ドル超まで急騰しました。その後価格低下しましたが、06年1月段階に比べると2倍の価格で高止まりしている状況がわかります。 
 
米不足国・米輸入国と食料暴動 
 
では、このように高騰したお米を、どのような国が必要としているのか見てみましょう。
asiarice04.bmp
暴動が起こった、アフリカのコートジボアール、セネガルやカメルーン、アジアのインドネシア、フィリピンやバングラディシュ、中米のハイチはお米の輸入国です。そのお米を、タイ、ベトナム、ビルマ、カンボジアなどからの輸出米に依存しています。 
 
もうお分かりと思います。タイでの米国際価格の高騰をきっかけにして、各国のお米価格が高騰し、それが食料暴動に繋がったのです。 
 
タイの取引所で決まる米国際価格が、アフリカ、中米、アジアにおけるかなりの諸国の食料安定に影響を与えています。2007/08年の世界穀物期末在庫は、既に低レベルだった期初在庫より5%(2100万トン)減り、この25年間で最低の4050万トンにまで落ち込む状況では、今後、06年1月段階価格300ドル/トンまで米価格が下がることは望めそうにありません。 
 
「IR8やIR16などの多収穫品種による増産はこれ以上は無理」
「充分な水利が確保できる、良好な農地拡大も限界」
そのため、『今後アジアのお米の大幅増産は期待できない』が専門家の見方です。
農業情報研究所 JA総合研究所 
 
また、タイはASEAN首脳会議の混迷がテレビで流されたように政治的な不安定状態にあり、ベトナム、ビルマ、カンボジアも社会・政治の不安定さを抱えています。米増産は期待できません。 
 
アフリカ、中米の米を主食とする各国の苦悩は続きます。 
 

List    投稿者 unkei | 2009-07-09 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?1 Comment » 

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.kanekashi.com/blog/2009/07/968.html/trackback


コメント1件

 off-white hermes | 2014.02.02 6:42

hermes website luxury 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 『国家と市場の力関係の逆転』 プロローグ 〜何故近代ヨーロッパから市場拡大が始まったのか?〜

Comment



Comment