2010-12-10

TPPから見る世界の貿易情勢〜関税について〜

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TPPにより、全ての関税が撤廃されることで、農業(特にコメ農家)に多大なダメージが与えられることが懸念されています。一方、関税が撤廃されればより安い海外製品が手に入るし、日本の輸出産業が潤うからメリットがあるんだ!と主張する人もいます。

いずれも主要争点は「関税の撤廃」ですが、そもそも「関税」って何なのでしょうか?


本シリーズでは、TPPから見る世界の貿易情勢と題して、まずTPPの概要を説明してきましたが(まだの方は是非ご覧下さいね☆)、今回は「関税」についての根本的な理解を深めていきたいと思います。

本記事の目次構成は以下のようになっています♪

1.関税って何?

2.日本ではどのような商品に関税をかけている?

3.関税収入の推移って?

4.関税はいつから始まった?



まずは応援よろしくお願いしますm(__)m関税について勉強しましょう


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1.関税って何?

国境を越えて取引される商品に課せられる税金のことです。自国を通過する商品に課せられる通過税、外国への輸出品に課せられる輸出税、外国からの輸入品に課せられる輸入税がありますが、現在は通過税と輸出税は廃止している国がほとんどです。


関税が持つ機能としては、以下の3点が挙げられます。

①国家収入の確保

→先進国では財源に占める関税の割合は低いですが、開発途上国では高い傾向を示します。


②海外からの国内投資誘致の促進策

→輸入製品に関税をかけることで、海外輸出業者が自国内に生産工場を移転させるように誘導します。自国内で工具や設備の調達が期待できます。また雇用の促進も期待できます。


③国内産業および市場の保護、振興

→輸入製品に関税をかけることで売上低下を狙います、あるいは関税で得た収入を産業振興のために配分します。

例えばアメリカ向けの輸出には、乗用車2.5%、トラック25%、液晶画面5%の関税がかかっていて、これがTPPに参加すると0%になります。
輸入は、苦しい面も出てきそうです。日本は輸入米778%、牛肉38.5%の関税をかけています。※参照
2.日本にはどの品目に関税がかかっているのでしょうか?

下記に参考例関税表の一部を表記します。全品目5223種類に分類され、おのおの税率が定められているそうです。


区分       品名                    関税率(%)


衣料品     外衣類(織物)             9.1〜12.8

         下着類(織物)             7.4〜10.0

         セーター                 9.1〜10.9

         ネクタイ(織物)             8.4〜13.4

光学機器   カメラ・撮影機                 無税

ハンドバッグ  革製                  8.0〜14.0

楽器     レコード・テープ・CD            無税

化粧品    香水・オーデコロン化粧水・化粧品   無税

野菜     トマト                     9.6
       落花生                    12.0〜28.0
       パイナップル                 23.0〜27.0

麦      麦                      15.4

米      米                      778.0


参照

3.次に関税収入の推移をおさえてみましょう


日本の関税税収は、昭和51年の4.0%から昭和61年の1.5%にまで下がっております。

昭和48年〜昭和53年、東京で開かれた第7回の多角的貿易交渉,GATTで初めて非関税措置の軽減に取り組んだ影響によるものです。主要諸国の工業品の関税率は昭和55年から8年間にわたって平均で約33%引き下げることが決定されました。非関税障壁については、相殺関税の発動要件や補助金に関する措置を規定した協定、ダンピング防止税の発動要件を明確化した協定など、八つの協定が生まれました。

<補助金・相殺関税とは ?>
輸出国において、生産・輸出について補助金を受けている物品の輸出が、輸入国の国内産業に損害を与えている場合などに、その補助金の額と同額以下で課される割増関税です。

<ダンピング防止税とは?>
不当に安く輸入された商品に対し、輸入国の産業が実質的な損害を被るか、あるいはそのおそれがある場合、国内産業保護のために賦課される割増関税です。

このように、非関税措置の軽減・撤廃に向けて大きな成果をあげました。%E9%96%A2%E7%A8%8E%EF%BC%91%EF%BC%92%EF%BC%90%EF%BC%94.jpg
4.そもそも関税はいつから始まったのでしょう?


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エジプトで既に古王朝(BC3500〜BC2000年頃)において関税が存在したと言われていますが詳細は分かりません。

古代ギリシャホメロスの時代(BC500〜1000年頃)でも関税があり、対象は商業でした。当時、外国人商人は、自分たちが商売をしようとする土地があったとしたら、そこの地位の高い人に自発的に贈物を送りました。現代のショバ代のようですね。商人はこうすることで、そこの支配者達から保護などを期待したようです。この当時の関税は現代とは異なり、①関税は、商人の自由意志によって自発的に支払われた。②税額は、任意であった、のようです。

そして、封建時代に入ると、商人発の支払い方式から、領主による強制徴収の税になりました。具体的には、各封建領主は自分の勢力範囲に出入する人・貨物に関税を課したようです。日本でも江戸時代に関所で通行料等を払っていました。これは租税でしたが、あくまで領主の私的収入(小遣い稼ぎ)にすぎなかったようです。

さらにそこから国境関税に移行しました。国境間の貿易になると港での取引が中心になり、税関も港にできるようになりました。また国家間を行き来する品物は大抵贅沢品で、送る者も受け取る者も資金力があり、国家としては徴収しやすかったのです。言わば贅沢税という色彩が強かったようです。

ところが日本では、1858年に江戸幕府がアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・オランダの5国と結んだ安政の五カ国条約によって、関税自主権を取り上げられ、そのまま明治維新により開国を迎えたのです。そして1911年までこの不平等条約は続きました。そのためこの間の日本の手工業(繊維産業、木工業)は大きな打撃を受け、復活した関税は産業保護の色彩が強くなったのです。

関税の意味の推移

商人が払うショバ代→領主の小遣い稼ぎ→国家収入(贅沢税)→→→→産業保護
                                     ↓不平等条約↑

関税のことがようやく分かってきました。 

では、再びTPPに戻りましょう

List    投稿者 michey | 2010-12-10 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?5 Comments » 

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コメント5件

 おかだ | 2011.10.10 21:07

いつも興味深い記事をありがとうございます。
気になる点があるので、教えてください。
1.「ハイパーインフレ」という用語の定義は、月率50%以上のインフレなのですがご存知ですか?
年率に換算すると約130倍(13000倍)ですね。
2.1年間で500%(5倍)のインフレでは、ハイパーインフレと詐称するには、まだ桁違いに低いインフレ率です。
ハイパーインフレを強調されるのは意図的なのですか?
3.メキシコとアルゼンチンの破綻当時の状況は、興味深いのですが、その後の回復状況を周知されないのはなぜでしょう?
日本は、戦後の悪性インフレから経済大国になったわけで、他国も破綻してそのままでは無いはずです。

 goqu | 2011.10.11 22:02

>おかださん
コメント有難うございます。
フィリップ・ケーガン氏の定義では、「ハイパーインフレ」とは月率50%以上のインフレのことです。
おかださんのご指摘のとおり、この定義によると、アルゼンチン1989年の5000%インフレ(50倍)では、ハイパーインフレとは言えません。
ただ庶民生活としては、年50倍もの物価上昇でも非常に苦しい、かなり混乱した生活を強いられると想定されます。
ここでは経済破綻により、国民生活に混乱と支障をきたす急激なインフレ状況に焦点を当てており、それを分かりやすく伝えるために、拡大解釈して「ハイパーインフレ」と呼んでいます。必要があれば注釈を入れさせていただきます。
又アルゼンチンの回復状況については、ほんのちょっとだけ書いておりますが、このシリーズでは経済破綻したときの国民状況はどうなるのか?を追求テーマにしておりますので、回復状況の本格的な追求は、今後の展開次第で扱っていくことになるかもしれません。
今後ともご意見、ご指摘、参考情報などございましたら、よろしくお願いいたします。

 goqu | 2011.10.24 18:18

平成23年10月24日毎日新聞に「アルゼンチン経済奇跡の回復」という記事が出ました。
10年前に破綻した国が急成長。ジェットコースターのような浮き沈みが、現代経済の象徴かもしれません。以下概要です。
>輸出好調の背景には、02年に固定相場制から変動相場制へと移行し、国内通貨ペソが4分の1の通貨安になったことがある。政府の債務残高は10年末で1471億ドルあるが、債務不履行を宣言したため追加的な融資はほとんど受けられず、債務増加にはいたっていない。このため国際金融市場からは孤立し、結果的に08年の金融危機の影響はほとんど受けなかった。
 
 アルゼンチンは過去何度も債務不履行をしている。だが、国際社会が必要とする穀物を生み出す肥沃(ひよく)な土地や、銅、金などの資源を産出する鉱山を豊富に抱え、経済活動は停滞していない。
 これが根本的な問題解決を阻んでいる側面もある。国際協力銀行ブエノスアイレス事務所のエコノミスト、ビクター・ペロイネ氏は「もし過去20年間、(中南米の優等生と呼ばれる)チリのように手堅い経済運営をしていたなら、我が国の経済規模は5倍になっていただろう」と指摘する。
 体質改善を怠ったツケで、アルゼンチン経済が危機に陥る可能性はある。8月には穀物の国際価格が大幅下落。輸出市場ブラジル経済の減速と、実質23〜35%に達するインフレが影響し、輸出に陰りが見え始めている。

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