経済破局を超えて、新しい政治経済の仕組みへ 第3回市場の本質は、徹頭徹尾“だまし”である
本シリーズ『経済破局を超えて、新しい政治経済の仕組みへ』
第1回「同じ過ちは繰り返すな」、第2回「欧州の国家・金融危機」を通じて、世界経済(政治)に何が起こっているのか?世界経済の実態に迫りました。
第3回は、るいネット秀作投稿『社会全体を取り込んだ”だまし共認”こそ、市場の本質であり支配力の源泉である』(リンク)を基にして、近代市場社会の市場原理に迫り、「市場の正体とは何か?」を突き詰めます。
1.歴史を遡って武力時代の支配層と近代市場の支配層の根本にある違いは何か?
2.市場>国家、すなわち“資本こそ力”となった時、どんな結果となったか?
3.市場の本質(正体)は何か?
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1.歴史を遡って武力時代の支配層と近代市場の支配層の根本にある違いは何か?
武力支配時代の支配層(権力者)は、少なくとも国家統合をどうすると考えており、それ故に民衆を対象化した理念を有していたが、資本主義=市場時代の支配層(権力者)は、”だまし”によって己の資産を増やすことしか考えておらず、どういうものを売れば”民衆が豊かになるか”などとは全く考えていない。
(るいネット秀作投稿より)リンク
武力支配時代の支配層代表として、戦国武将「武田信玄」に登場してもらいます。
「人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり」
「およそ軍勝五分をもって上となし、七分をもって中となし、十分をもって下と為す。その故は五分は励を生じ七分は怠を生じ十分は驕を生じるが故。たとへ戦に十分の勝ちを得るとも、驕を生じれば次には必ず敗るるものなり。すべて戦に限らず世の中の事この心掛け肝要なり」
「為せば成る、為さねば成らぬ。成る業を成らぬと捨つる人のはかなさ」
有名な信玄語録です。
人(民衆)、戦いなどを対象とし、信玄堤などの新田開発や、甲州金の使用による財政面での工夫など、(当時の)武力支配層の考えが良く見て取れます。
さらに、武力支配時代の経済学者、思想家の考えはどうだったのか?
文政5年(1822)小田原藩に登用され、天保13年(1842)に普請役格の幕臣となり、関東とその周辺の諸藩領・旗本領・幕領・日光神領の復興や個別の家・村の再建を依頼されて指導した二宮尊徳に登場してもらいます。
二宮尊徳の教え「報徳訓」を紹介します。(二宮尊徳資料館配布資料)
至誠(しせい)
至誠とは真心であり、「我が道は至誠と実行のみ」という言葉の通り、尊徳の仕法や思想、そして生き方の全てを貫いている精神です。
勤労(きんろう)
人は働くことによって、生産物を得て生きていくことができる。
また、働くことを通して知恵をみがき、自己を向上させることができると説きました。
分度(ぶんど)
人は自分の置かれた状況や立場をわきまえ、それにふさわしい生活を送ることが大切であり、収入に応じた一定の基準(分度)を設定し、その範囲内で生活することの必要性を説きました。
推譲(すいじょう)
節約によって余った分は家族や子孫のために蓄えたり(自譲)、他人や社会のために譲ったり(他譲)することにより、人間らしい幸福な社会ができると尊徳は考えました。
積小為大(せきしょういだい)
小さな努力の積み重ねが、やがて大きな収穫や発展に結びつくという教えです。
小事をおろそかにする者に、大事が果たせるわけがないと尊徳は考えました。
一円融合(いちえんゆうごう)
全てのものは互いに働き合い、一体となって結果が出るという教えです。
例えば、植物が育つには水・温度・土・日光・養分・炭酸ガスなど、いろいろなものの徳が融け合ってひとつになって育ちます。
報徳訓は、二宮尊徳が説き広めた道徳思想であり、経済思想・経済学説のひとつ。経済と道徳の融和を訴え、私利私欲に走るのではなく社会に貢献すれば、いずれ自らに還元されると説くものです。
武力支配時代の支配層は、国主も支配層を支える学者も、人や国を対象化し理念を有していたのは明らかです。
2.市場>国家、すなわち“資本こそ力”となった時、どんな結果となったか?
資本主義=市場時代への道のりは、(日本の場合)明治維新に始まりますが、農村共同体を残しているので、一気にその本質が現れてはきません。本質が鮮明に現れるのは、戦後の高度成長路線、1960年の所得倍増計画だと思います。
60年安保で岸政権が倒れた後、政治的論争となりうる課題を極力避け、「所得倍増」をスローガンに掲げて経済重視の内政主義を打ち出した、第58代内閣総理大臣に就任した池田隼人氏に登場してもらいます。
国民所得倍増計画
1960年12月池田勇人内閣が閣議決定した〈10年間に国民所得を倍増する〉という長期経済計画。前任の岸信介内閣の蔵相時代から検討していたという。
岸内閣時代までの〈政治の季節〉から〈経済の季節〉への転換期となり,国民へのアピール度も高かった。経済成長率で7.2%が目標となり,社会資本の充実,人的能力の活用,格差是正問題,地域開発政策の重視が特徴。実質国民総生産は約6か年で,国民1人当り実質国民所得は約7か年で,それぞれ倍増を達成した。
個人的な勉強メモ(リンク)より
1961年1月30日の池田勇人首相の国会における施政方針演説より
わが国経済のこの安定的成長を今後長きにわたって確保し、現在見られるような各種の所得格差を解消しつつ、完全雇用と福祉国家の実現をはかるためには、長期的観点から各種の施策を総合的に推進する必要があります。そのため、政府は、従来の新長期経済計画にかえて、今回、国民所得倍増計画と国民所得倍増計画の構想を政府の長期にわたる経済運営の指針として採択いたしました。この計画は、今後おおむね十カ年間に国民所得を倍増することを目標とし、これを達成するため必要とされる諸施策の基本的方向とその構造を示したものでございます。特に、農業と非農業間、大企業と中小企業間及び地域相互間に存在する所得格差を是正し、もってわが国経済の底辺を引き上げ、その構造と体質の改善をはかろうとするものであります。同時に、この計画は今後十年間、において新たに生産年令に達する青少年に、それぞれ適当な職場を用意する国家的責任にこたえるものでございます。
右の長期経済計画の実施にあたっては、昭和三十六年度から昭和三十八年度までの三年間は、新規生産年令人口の急増に応じて、年平均九%の経済成長を遂げることを目標として、あらゆる施策を講ずることを明らかにいたしております。
リンク
対米従属を強めた日米安全保障条約から国民の目をそらせ、経済成長絶対へと方針転換した瞬間です。
但し、池田首相には、日本人に色濃い倫理感が存在していました。
私は、就任以来、政府みずからその姿勢を正し、政治と行政の運営を正常化し、さらに、政治、経済、社会の各分野において、いかなる紛議があっても、寛容と忍耐をもって、話し合いを通じて解決するという、正しい民主主義の慣行が確立されるよう努力して参りました。
私は、至誠をもって事に当たり、慎重に職責を尽くして、清潔な政治、明るい社会、幸福な家庭、平和な世界の建設のために奉仕する決意であります。
リンク
「市場>国家、資本こそ力なり」、を端的に実証したのは、「官から民へ」極端に親米路線をとった小泉政権でしょう。
しかし、近世(ルネサンス)以降、市場はその”だまし”の裾野を民衆へと広げ、社会全体を”だまし共認”に取り込むことで、市場>国家、すなわち”資本こそ力”となる状況を作り上げた。
(るいネット秀作投稿より)リンク
「私の内閣の方針に反対する勢力、これはすべて抵抗勢力だ」
「この程度の約束を守らないのは大したことではない」
「人生いろいろ、会社もいろいろ、社員もいろいろ。岡田さんの会社だって、みんながみんな同じように働いてるわけじゃないでしょう?」
「格差が出ることが悪いとは思わない。今まで悪平等だという批判が多かったし、能力のある人が努力すれば報われる社会にしなければならない」
(準大手ゼネコンの青木建設が破綻したのを受けて)「構造改革が順調に進んでいる現れではいか」
「不況、不況というが、東京ディズニーランド、(東京・丸の内の)新丸ビル、そして六本木ヒルズ、みんな大盛況だ。経済は言われているほど悪くはない」
( 2日前にりそな銀行への公的資金注入が決定していた)
国家のこと、国民のこと、どの様にみていたか、小泉語録の端々にだましと詭弁が見てとれます。
3.市場の本質(正体)は何か?
市場の本質は、徹頭徹尾”だまし”にあり、社会全体を取り込んだ”だまし共認”こそが、資本に絶対的な支配力を生み出していると言える。
(この支配力は、市場が拡大する=だまし共認が広がるほどに絶対的となる。だからこそ、彼ら支配層及びその支配を直接受けている政治家にとって「市場拡大」こそが絶対課題化するのだろう)
(るいネット秀作投稿より)リンク
市場は、“だまし”によって己の資産を増やすことしか考えておらず、民衆が豊かになるか?などは全く考えていない。真に的を得た認識です。
市場の本質(正体)は、徹頭徹尾“だまし”だったのです。
「資本主義の時代は身分制度が崩れたと言うのは”だまし”でしかない」と言う認識には大きな衝撃を受けた。
なるほど、確かに近代以降も、資産=”力”の相続が認められており、資産を連綿と相続してきた欧州貴族や金貸し勢力などの大資本家が、強大な権力によって世界を支配している。
(るいネット秀作投稿より)リンク
近代社会と身分については、るいネット秀作投稿『「近代は身分支配から解放された時代」という嘘』(』(リンク)も参考に読んで下さい。
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