2010-12-30

TPPから見る世界の貿易情勢〜ブロック経済の歴史から学ぶ〜

TPPを各国間で独自に交渉して締結していく流れを具体的に見ると、締結した国々において非関税化や人・技術の流出入を進め、新たに算入を希望する国々には一定の制限を設ける(例えば、新規加盟を希望する国に対しては、加盟国全ての同意を必要とする等)ことが理解できた。
このTPP協定の一連の流れを、世界経済というマクロな視点で捉えた場合、どう捉えることができるか?
最も明確になりつつある点は、これまでの「グローバル経済」が反転し、独立性を持った複数の経済圏が構成される、「ブロック経済化」に歩んでいると捉えることもできる。
そこで、ブロック経済化すると世界経済はどうなるのか?という切り口で、まずは歴史上の事実を押さえて見たい。
世界がブロック経済化した歴史は意外に浅く、代表例としては第一次世界大戦後の世界経済に求めることができる。
〜第一次世界大戦の概略〜

・1914年〜1918年にかけて戦われた人類史上最初の世界大戦
・中央同盟国「ドイツ、オーストリア、オスマン帝国、ブルガリア」VS三国協商「イギリス、フランス、ロシア」で開戦。後に、アメリカ合衆国、イタリア、日本が連合国側に立って参戦
・主戦場はヨーロッパ
・三国協商側が戦勝
・戦後、講和条約である「ヴェルサイユ条約」が1920年1月20日に締結。
この条約により敗戦国であるドイツは全植民地を失う。また、その後締結さらたロンドン条約により、当時のGNPにして20年分の「1,320億金マルク」という大金の賠償金を背負うことになる。
※ちなみに、ドイツはこの多額の賠償金を、2010年3月をもって完済している。

第一次世界大戦中に戦時特需で多額の儲けを確保したアメリカ、戦勝国となったイギリス・フランスが中心になって、大戦後にブロック経済圏が確立されていく。その後、世界は第二次世界大戦へと進んでいくが、その原因に、ブロック経済が挙げられることが多い。
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写真はこちらからお借りしました。ドイツ国内で作られたマルクブロック
世界がブロック経済に進んだのは何故か?
そして、ブロック経済が2度目の世界大戦を生み出す原因になったのは何故か?

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●戦後の世界経済をリードするアメリカ、多額の賠償金にもがくドイツ
戦場にならなかったアメリカが、ヨーロッパの軍需や民需に応える形で輸出が増大していく。ヨーロッパ諸国の輸出が減少する中において、アメリカの世界的なシェアが急拡大する。
アメリカは、機械やトラクターなどの導入で生産効率を高め、労働人口も農業の大量生産・大量消費を支えるために増加の一方を辿るなど、輸出拡大の中で経済が飛躍的に発展していくことになる。
一方、戦後、戦争で疲弊(戦場から産業基盤の壊滅、アメリカへの多額の貿易債務)したイギリス・フランス諸国はドイツの多額の賠償金を受け取る形で、産業の立て直しを図っていく。徐々に回復する生産力を背景に、戦時景気によって一躍覇権国となったアメリカに輸出を増やすことで、アメリカへの債務を返済しつつ、経済の復興へ歩みを進める。
※アメリカの対英仏債務 1913年 8億ドル → 1916年 30億ドル
  〃   対独墺債務 1913年 1.7億ドル→ 1916年 100万ドル
 参照リンク
アメリカは、ドイツに支援することで、大戦中にイギリス・フランス相手に作った多額の債権を回収しようとした。
こうして、第一次世界大戦を通して圧倒的な経済力を誇ったアメリカが、ヨーロッパ諸国を導く形で、なんとか1929年までの間経済が安定することになる。
●世界恐慌勃発!アメリカが世界最大の金(ゴールド)保有国へ
ところが、第一次世界大戦後、徐々にアメリカに経済的な歪みが生じ始める。
好景気に沸くアメリカでは、だぶついた金が投機熱を煽り、株価がバブル化。ダウ平均株価がたった5年間で5倍の値を付けるなど、ニューヨーク市場は湧きに湧いた。
そこに、1929年10月24日、ゼネラルモーターの株価が80セント下落したのを皮切りに、「暗黒の木曜日」=世界恐慌が勃発する。大損した投資家達が海外(主にヨーロッパ)から一斉に資金を引き上げたことで、影響が各地に飛び火。
イギリスでは企業の資金ショートが相次ぎ、せっかく復興した産業がガタガタに。恐慌の震源地となったアメリカよりも経済力が失われ、投資資金の引き上げによって金(ゴールド)が大量に流出していく(当時の通貨は金兌換制)。
ドイツもイギリスと同様。投資資金の引き上げによって産業が壊滅的な被害を受け、世界経済が一気に暗転していく。
そして、ヨーロッパ諸国から資金が引き上げられる中において、1921年にはアメリカとイギリスの金保有量の差は3倍だったのが、恐慌発生3年後の1932年には、6倍の差がつくことになる。
●関税を引き上げ、保護貿易へと進むアメリカ
戦後、実体経済が過剰生産力と労働力に陥っていたアメリカに、経済恐慌が加わったことで、大戦後に元々保守主義をとっていた共和党政権が一気に保護貿易政策を推し進めることになる。
他国の輸出機会を抑えて自国産業を守るために、1930年6月にスムート・ホーリー法を成立させ、農産物だけでなく工業製品でも関税引き上げを実施した。平均関税率は40%にも達したことで、世界各国のアメリカへの輸出は伸び悩み、世界恐慌をより深刻化させた。
先手を打ったアメリカに、先進国は報復的に関税引き上げを進める。
イギリスやフランスなど、植民地を持つ国はそれらを抱え込んだ独自の貿易圏を作り、その中で経済を回していこうとするが、この一連の動きによって世界的な貿易不振が起き、かえって恐慌を長期化させることになった。
●通貨によるブロック経済化
そこで各国は経済を立て直すために、1931年のイギリスに続き1933年にアメリカが金本位制から離脱し、世界の金本位体制は一旦崩壊した。
金の後ろ立てがなくなった資本主義列強諸国は、自国通貨が通用する範囲(主に自国+植民地)でのブロック経済を採用することになる。
金本位制からの離脱により、各国の紙幣発行量は金の制約を受けず、中央銀行の裁量のみで発行できるようになったため、アメリカではニューディール政策を行い、大幅な財政出動で公共事業を興して雇用を創出し、景気回復を図ることになる。
一方、敗戦国のドイツや、植民地が少なく資源も少ないイタリア経済は破綻。
アジアでは日本が資源と市場を海外に求めた。
このような植民地を「持たざる国」であるドイツ、イタリア、日本が口火を切り、第二次世界大戦に突入していったのではないだろうか?
纏めると、第一次世界大戦後のブロック経済とは、列強諸国の高関税導入はあくまで入口に過ぎず、自国通貨が通用する範囲で経済圏を作ろうとした結果であることが分かる。

List    投稿者 wabisawa | 2010-12-30 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?3 Comments » 

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コメント3件

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