2009-12-27

GDP信仰からの脱却3〜GDPとは“市場化”された活動の総量

前回記事で、GDPとは「国内を流れたお金の流量」である、と書いた。では、それと、GDPの定義「国内で産み出された付加価値の総額」との関係はどうなっているのか。これを見るため、今回はGDPの「三面等価の原則」について考えてみる。

GDP_triangle.gif
「三面等価の原則」とは、GDPにおいて「生産=分配=支出」の等式が成り立つということだ。このうち、比較的分かりやすい支出については前回扱った。そして、支出とイコールとなる「分配」、「生産」とは、具体的には何を意味しているのか?本ブログなりに捉えてみたい。
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■三面等価の原則
改めて、前回書いたGDPの定義式を再掲する。

国内総生産(GDP)=雇用者報酬+営業余剰+固定資産減耗+純間接税
国内総支出(GDE)=最終消費支出+総資本形成+純輸出
ここで、GDP=GDE

そして、冒頭の三面等価の図をより具体的な国内の生産場面に置き換えて考えるために、輸入品を原材料にした製造・販売過程を例にして、支出・分配・生産の関係を単純な概念図にしてみた。

GDP_flow.gif

①A社は、輸入品を原料に素材(中間生産品)を製造する。上図の「輸入」とはA社にとって経費であり、これに利益・給与(上式の雇用者報酬+営業余剰)が上乗せされたものが素材の価格となる。
②B社は、素材をA社から購入(中間投入)し、部品(中間生産品)を製造する。素材購入はB社にとっては経費であり、これに利益・給与が上乗せされたものが部品の価格になる。
③C社は、部品をB社から購入(中間投入)し、最終生産品を製造・販売する。部品購入はC社にとっては経費であり、これに利益・給与が上乗せされたものが最終生産品の価格となる。

最終生産品が購入されれば、最終消費の金額が発生する。国内で購入(消費)された最終消費の総額が、上の式の「最終消費支出」である(生産品が建物などの固定資産なら「総資本形成」になる)。これに海外に売った分(輸出)を加え、もともとの原材料輸入分を引いた金額が、GDPの三面中の一面である支出(緑の部分)となる。
そして、生産に関わったA〜C社の利益・給与を累積すると、上図の一番上の総所得(赤)となる。これがGDPの三面中の一面である分配であるが、これは一番下の総支出の金額と一致する。従って、支出=分配となる。
では、生産とは何かというと、A〜C社の各過程において、中間生産品や最終生産品に対して加えられた“行為”そのもののことであり、金額で表せば分配や支出とイコールとなる。即ち、人間の何らかの生産行為(製造・組立・販売etc)が、企業の給与や利益になるべく価格に転化されることが、「付加価値を産み出した」という意味だ。
(注)上のGDPの算出式の「固定資本減耗(=減価償却)」と「純間接税(生産・輸入品に課される税−補助金)」は、企業会計ルールとの整合や政府消費との重複分の処理の調整であり、上の概念図では省略している。
■モノの値段とは人件費の累積
こうして見ると、一つ面白いことが分かる。私たちは通常、サービス業の値段はほとんどが人件費だと分かっているが、車や電化製品などモノの値段というのは、そのモノ自体、あるいは原材料となる金属やガラスetcに何か相場的な価格があって決まっているように感じている。
もちろん需給による市場相場が値段を決めるのは事実だ。しかし、物的生産物の価格は、上記のGDPの概念によれば、それまでに関わった生産者の給与及び企業利益を足し合わせたものだということになる。一般に企業利益より給与の方が圧倒的に大きいし、企業利益は配当や将来の経費と考えられるから、結局、モノの値段もサービスの値段も100%人件費でできている、ということになる。
上の図での原材料輸入についても全く同じで、輸入価格というのは、海外の生産者や輸送業者の給与・利益etcの人件費を累計したものになる。
■GDPとは、市場化された活動の値段
このことから、次のようなことが言える。GDPとは国内を流れたお金の流量であるが、これらは全て、何らかの人間の活動に対して流れたもの、ということになる。つまり、GDPとは、国内においてお金に置き換えられた=“市場化”された人間の活動の総量だと言うことができる。
前回例に挙げたるいネットの記事に出てくる「家事の市場化」が良い例だ。
実際、かつての日本において、食事や教育や介護といった活動は、家族や村落共同体という集団の中で無償の行為として提供されていた。しかし、農村から都市への人口移動が進むにつれて、外食産業が登場し、塾産業が登場し、介護ビジネスが登場し、これらの活動が次々と有料アウトソーシング=市場化された。そして、GDPのサービス産業という領域を拡大してきたのだ。
従って、現在、無償で行われているような人間の活動をどんどん市場化していけば、GDPは上昇可能だ。結婚ビジネス然り、悩み相談然り。そのうち“友達仲介ビジネス”などというものも出てくるかも知れない。しかし、これは果たして良いことなのだろうか?次回は、物的生産・サービスetc、業種別のGDPを分析しながら、このことを考えてみたい。

List    投稿者 s.tanaka | 2009-12-27 | Posted in 01.世界恐慌、日本は?2 Comments » 

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コメント2件

 アロエヨーグルト | 2010.08.04 16:50

公告税が導入されたら、マスコミの抑止力なってよさそうですね☆
それにしても、麻生さんが「公告税」を提言していたの知りませんでした\(◎o◎)/!
「公告税」なんていうマスコミを抑止するような税が出来てしまったり、世間に大きく提言されてみんなが「それいい♪」って思ってしまったりしたら・・・マスコミが困る(>公告税が導入されたら、マスコミの抑止力なってよさそうですね☆
それにしても、麻生さんが「公告税」を提言していたの知りませんでした\(◎o◎)/!
「公告税」なんていうマスコミを抑止するような税が出来てしまったり、世間に大きく提言されてみんなが「それいい♪」って思ってしまったりしたら・・・マスコミが困る(><)! だから麻生さんはバッシングなどで早々に撤退させられたのかもしれないですね!! マスコミの力って恐いですね。

 s.tanaka | 2010.08.09 15:10

アロエヨーグルトさん、コメントありがとうございます。
最近ネットなどで、マスコミへの批判や問題現象を知れるようになってから、
マスコミ自身がそうした報道をことさらスルーしていることも良く分かるようになりました。
官房機密費問題なんかもその一つですね。
そういう事実を、彼らが無視できないほど、どんどん発信していくことが必要ですね☆

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