2014-09-10

金貸しは日本をどうする?~近現代の金貸しの戦略(6) 食と農を通じて世界各国への支配を強める金貸し

18世紀の中央銀行制度設立以降の金貸し(国際金融資本家)の戦略を見てきたが、これらの経済的な支配戦略と並行して強まってきたのが、食料支配・医療支配である。特に近年の食料支配・医療支配は、国民支配の最先端に位置するような問題であり、金貸しが現在最も力を入れていると言っていいだろう。今回はそのうちの一つ、食料支配について考えてみる。

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■先進国が食糧輸出国、発展途上国が食糧輸入国

自給率マップ

世界の穀物自給率を見ると、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど大陸の先進国を筆頭に、先進国の穀物自給率は総じて高く、100%を超えている国が多いことが分かる。一方、アフリカ、アジア、南米の発展途上国と、先進国の中では特に日本の自給率は低く、食糧確保を他国からの輸入に頼っている。
食糧を輸入に頼っている日本で生活していると、「工業生産が発達していない発展途上国では主産業として農業生産を行って自給自足を維持しており、逆に工業生産に軸足を移した先進国こそ食糧を輸入している」イメージを抱く。
しかし、世界の状況は逆で、今や先進国が食糧輸出国、発展途上国が食糧輸入国になっている。(途上国は、食料となる農産物の栽培から、いわゆる商品作物栽培への移行が進んでいる。)

アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、主要な食糧輸出国の特徴は、近代以降に大陸で作られた人工国家という点にある。これらの国は、大航海時代にヨーロッパ人が原住民を排除・殺戮して作られた近代国家である。すなわち、支配者であるヨーロッパ人は、原住民を排除する事によって得た広大な土地を開拓し、工業化⇒技術革新を背景に、機械化・効率化された大規模農業で著しく生産力を高めていった。

そして、これらの先進国は食糧支配を通じて発展途上国への影響と支配を強めていくことになる。

■拡大する穀物メジャー:カーギル

cargill大陸の先進国の中でもいち早く発展を遂げたアメリカは、広大な土地と機械化による効率的な農業生産で生じた余剰作物を、第一次、第二次世界大戦で戦場となったヨーロッパへの支援物資として輸出してきた。しかし、第二次世界大戦が終結しヨーロッパの復興が完了すると、アメリカは大量に抱える事になった余剰作物を、植民地支配からの独立戦争で食糧生産力が低下した第三世界各国への援助として新たに売り込み始める。アメリカ政府に代わってそれを行い、力を伸ばしたのがカーギルだった。カーギルの力は、今や世界における穀物市場の4割を占有していると言われている。

カーギルを初めとする穀物メジャーは、穀物単体の輸出を牛耳るだけでなく、生産資材、穀物を原料とした加工部門、近年ではバイオエネルギー開発にものりだし、その影響力を多角的に伸展させ続けている。穀物メジャーの中でも最大のカーギルは、世界中へ農産物販売網を拡大する過程でCIAを上回るとも言われる圧倒的な情報収集・分析能力を手にしている。人工衛星で世界中の気候、作柄を解析して把握する他、経営陣に農務省や米国通商代表部の元高官を迎え入れることで、農業政策や通商政策にも多大な影響力を誇る。
(なお、カーギル社は世界最大の穀物メジャーでありながら、株式の全部をカーギル家とマクミラン家の関係者が所有する同族企業であり、非上場企業としては世界最大の売上高を誇る。)

■緑の革命

第二次世界大戦前から農の国際市場化を狙っていたアメリカは、メキシコで高収量を実現する為の農法研究を行っていた。そして、メキシコ政府とロックフェラー財団が設立した研究機関によって、小麦ととうもろこしの新品種開発が進められ、高収量品種(HYVs:High Yield Varieties)が開発された。
この新品種がメキシコで急速に普及した結果、短期間で小麦の生産量は3倍に、とうもろこしは2倍に跳ね上がった。食糧不足国でアメリカから大量の穀物を輸入していたメキシコは大幅な食糧増産に成功し、1950年代後半には小麦の自給を達成した。1962年にはフィリピンに国際稲研究所(IRRI)がフィリピン政府およびフォード財団・ロックフェラー財団の協力によって設立され、米の新品種も誕生した。

midori-kakumei新品種による高収量農法は、世界各地へと広がり、1965年~1973年までの8年間で、小麦の耕地面積は約326倍に、米の耕地面積は約1,700倍に増加し、各国で数年の内に1.5倍から2倍の収量を実現して各国の食糧自給に大きく貢献した。この取り組みは1968年にアメリカ国際開発庁の年次報告書に「まるで緑の革命が起きたようだ」と記載された事で、『緑の革命』と呼ばれるようになった。

早くから緑の革命を導入した国々は、一時は増産に成功したように見えた。しかし、隠されていた様々な問題が噴出することになる。新農法は大量の水を必要とするため、地下水が過剰に汲み上げられ、地表面に塩分が残存・蓄積、さらに大量の農薬によって田畑が荒廃し、農地そのものを失う地域が相次いで発生した。
高収量品種(HYVs)がその性能を発揮する為には、大量の水と化学肥料、農薬を必要とする。加えてHYVsはF1種と呼ばれる一代限りの種であった為、在来種のように収穫した作物から次世代の種子を取る事が出来ない。だから、HYVsの生産を続ける為には種子、化学肥料、農薬などのほぼ全ての生産資材を先進国から購入し続ける必要があった。加えて、新農法の導入は大規模な灌漑設備などのインフラ整備が必要となる。つまり、膨大な資金が必要となる。

これを支えたのが、世界銀行による融資や政府開発援助(ODA)であった。すなわち、「緑の革命」に伴って、農家はもちろん、被援助国政府も返済不能な借金を抱えることになる。そして、いよいよ国家財政が破綻すると、国際通貨基金(IMF)の介入と指導を受けることになった。こうして発展途上国は過灌漑や農薬による土壌汚染の為に、伝統的な循環型の農法と農業基盤である土地を失い、農業資材から食糧そのものに到るまで先進国の市場の下に組み込まれていくことになる。

 

この緑の革命を米政府と一体となって推進したのが、世界最大の穀物メジャー:カーギルと、化学企業:モンサントであり、その背後で支配を強めていったのが、国際金融資本家(特にロックフェラー財閥)であった。今や世界の食と農は、欧米のメジャー企業と彼らを束ねる金貸しによってコントロールされていると言っても過言ではない

List    投稿者 naitog | 2014-09-10 | Posted in 08.金融資本家の戦略No Comments » 

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