2007-08-10

欧州中央銀行が無制限資金供給(買いオペ)を実施

米国の住宅バブルの崩壊以降、NY株式市場の下落が、2月、3月、6月と間歇的に起こって来た。次の震度と起こる時期を、各国中央銀行・財務省、投資機関が神経質にモニターしていた。

NY市場の動向が焦点とみていたが、実は、大きく欧州に飛び火していたのである。

日本の地震予知でいえば、東南海沖(NY市場)のマグニチュード8クラスの地震をモニターしていたら、北海道沖(欧州市場)で、マグニチュード7クラスの地震が発生したようなものである。

日本経済新聞の記事から。

欧州中銀、15兆円緊急供給・サブプライム沈静化狙う

 【ベルリン=赤川省吾】欧州中央銀行(ECB)は9日、米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題を契機とした信用不安の発生・拡大を防ぐため、欧州金融市場に約948億ユーロ(約15兆4000億円)を緊急供給した。高リスクのファンドの解約申請や金融株の下落が続く中で、市場不安を緩和するのが狙い。ECBによる大規模な緊急資金供給は2001年の米同時テロで金融市場が世界的に動揺して以来初めて。米国とカナダの金融当局も協調する姿勢を示している。
 ECB当局者は緊急措置の目的を「市場のひずみの微調整だ」と説明。サブプライム問題との関連については「コメントできない」と述べた。直接的な言及を避け、市場の不安を緩和する意図とみられる。
 ブッシュ米大統領は9日の記者会見で「米市場には十分な流動性が供給されている」と述べ、米金融市場には不安がないとの認識を強調した。一方、カナダ中央銀行は同日、「金融システム安定のため、十分な流動性を供給する用意がある」との声明を発表した。(01:07)

 欧州市場で何が起こっているのか。また、米国本体の信用不安は今後増大していくだろうか?

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まずは、欧州中央銀行の無制限の資金供給の状況を、日銀ウォッチーブログ「本石町日記」さんから紹介します。

ECBが緊急オペ、しかも無制限=ちょっとまずいかも…-NY連銀はシステムレポ

 先ほど出たニュースを手短に。ECBが緊急オペを打ったようだ。入札にはすべて応じる、とのことで無制限の資金供給である。ECBの金融調節はちょっと変わっており、1週間に1回の定例オペが主体。普段は滅多にオペは打たない。レートの上下動は放置するスタイルである。毎日オペ打ちまくりの日銀を見ていると、何でECBが1週間に1回で済んでいるのか不思議だが、これは準備預金が厚い(流動性が潤沢にある)ため。逆説的には、緊急オペ&無制限のオペを打ったということは、流動性ひっ迫が一時的にせよ起きていることを示唆する。サブプライムローン問題がユーロマネーマーケットの信用不安につながりつつあるのか。一過性で終わるのか。まだ詳細が分からないので、何ともいえないが、ちょっとまずい感じである。
 続報です。緊急オペには49の金融機関が応札。総額は950億ユーロ程度。10数兆円である。デカい。国がたくさん集まっているから規模がデカいんだろうが、でもデカいなあ。一過性の流動性ひっ迫で済めばいい(多分そうなると期待したい)が、これ続くと大変ですよ。外為市場ではユーロが激しく落ちていますな。昼間から4円近い下げ、これもでかいです。株は軒並み下落。米金融市場の反応は…。
 さて、欧米インタバンクでなぜ流動性ひっ迫が起きたのか。これは正直、予想外の展開である。インタバンクの資金取引は経済全体を循環するマネーの心臓部であり、ここがおかしくなると深刻な事態になりかねないことは、われわれ日本人なら1997−8年のインタバンク恐慌で経験済みである。クレジットマーケットの動揺が真性の信用不安に転化しつつあるとはちょっと恐ろしくてそうは思いたくない。恐らくは偶発的に発生した一過性の流動性ひっ迫ではないか(とみなしたい)。

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欧州中央銀行の無制限資金供給と平行して流れたニュース。ロイター記事から。

仏BNPパリバ、サブプライム問題で3ファンドを凍結

 [パリ 9日 ロイター] フランスの大手銀行BNPパリバは、計16億ユーロ(22億ドル)相当の3つのファンドについて、米サブプライムローン(信用度の低い借り手向け住宅融資)市場の混乱を理由に価格算出、募集、解約・返金の業務を一時停止した。
 ドイツ連邦銀行(中央銀行)が米サブプライム問題の打撃を受けて多額の損失を出したドイツ産業銀行(IKB)の救済策について協議を開始し、欧州中央銀行(ECB)がユーロ圏の金融市場を注視し、市場の円滑な機能を確実にするために必要であれば行動する用意があると表明する中で出たニュースは、すでに神経質になっていた欧州金融市場に衝撃を与えた。
 BNPパリバは声明で「米国の証券化市場の一部で流動性が完全に消失したため、質や信用格付けにかかわらず、一部資産の価格の算出が不可能になった」と説明。「投資家の利益を守り、公平な取り扱いを保証するため、このような異例の局面において、当社は一時的に純資産価値の算出や、募集および償還を停止することを決めた」としている。
 BNPパリバ・インベストメント・パートナーズによると、事実上凍結したのは、パーベスト・ダイナミックABS(Parvest Dynamic ABS)、BNPパリバABSユーリボー(NP Paribas ABS Euribor)、BNPパリバABSイオニア(BNP Paribas ABS Eonia)の3ファンド。
 この3ファンドの価値は7月27日時点で20億7500万ユーロだったが、8月7日時点で15億9300万ユーロ(21億9000万ドル)に減少したという。
 BNPパリバは、市場の流動性が回復し次第、価格算出を再開する方針。流動性が枯渇した状況が続いた場合には、想定される措置に関する追加情報を投資家に1カ月以内に通知するとしている。

ここで、素人が理解に苦しむのは、サブプライムローンの破綻・劣化から始まり、ファンドの凍結(価格算出と売買凍結)に至る経路である。

まずは、ファンドの凍結:「価格算出、募集、解約・返金の業務の一時停止」について。

ファンドに投資している投資家(投資機関)は、ファンドシェア(持分)の売却を市場或は相対で行い資金を回収する。その時点での価格算出が行なわれ、益か損かが確定し、売買は完了する。いつでも売却が可能である事が、流動性の保証である。

今回のファンドの凍結というのは、価格算定が不可能となっているので、シェアの売買を停止してしまったということ。株式市場で言えば、一時売買停止であり、ほぼ、倒産状態にあたる。

サブプライムローンを組み込んだ「住宅担保証券」が、広範囲に価格算出不能に陥っている。

米国の住宅バブルを支えていた「サブプライムローン」 ⇒ そのローンを組み込んだ「住宅担保証券」の商品化 ⇒ ヘッジファンドや銀行・証券の子会社による「住宅担保証券」商品の購入 という連鎖での投資が行なわれていた。

住宅バブルの崩壊により、サブプライムローンの破綻・返済劣化が、「住宅担保証券」商品の下落となるのだが、その下落指標が計算できない事態になっている。

複雑な条件設定がされているサブプライムローンを、数千件・数万件と組み込んだ「住宅担保証券」商品では、それを評価し、価格算定する事ができない。価格算出ができなければ、「住宅担保証券」商品の売却による資金回収ができないのは当然である。

モルガン・スタンレーやゴールドマン・サックスが、住宅バブルの上昇局面で、いい加減な「金融商品」設計をしいたのである。

そして現在、マクロな流動性の危機となって表面化した。

その意味で、サブプライムローン投資で失敗し、損出の発表をした野村証券やドイツ産業銀行はまだマシな方である。(住宅担保証券投資の7〜8割を損金計上していると推測される。)

多くの投資銀行や商業銀行、その傘下のファンドは、サブプライムローン投資の損出額そのものを算出出来ずに、判断停止している。

その状況不安が深まり、ついに、最後の資金供給者である中央銀行の出動となった。

やはり、最大の地震発生はNY、FRBの出動となるのだろう。

List    投稿者 leonrosa | 2007-08-10 | Posted in 08.金融資本家の戦略3 Comments » 

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コメント3件

 ぽちぽち | 2007.10.03 14:23

日本における銀行の役割を振り返って見るのも一考です。
日本の銀行の役割は、明治維新後一貫している。
富国強兵・殖産興業のためには、海外から先端の機械(生産機械)を輸入しなければならない。
日本の国内で、銀行がお金を集め、生産企業に貸し付ける。企業が機械輸入を行ない、銀行が、輸入代金の保証を行なう。支払いは英国通貨ポンド建てになるが、それは、金兌換の円によって保証される。
第二次大戦の戦後も、復興と生産拡大の為に必要な生産投資の原資を、銀行が貸し付ける。間接金融に依拠してきたのが、日本の特徴です。(外貨は、ポンドからドルに転換しているが。)
常に、必要な投資に対して、資本(お金)が不足という時代ですね。概念的には、資本主義(資本=お金が最も重要)の時代です。
しかし、日本では、1990年代には、資本(資金)過剰の時代へ転換した。
間接金融の銀行が不要になっのです。
その状況に対応できず、マネーゲームという幻想性に向かっているのが、現代の銀行・証券等の金融組織ですね。

 danmark hermes | 2014.02.01 15:18

hermes uk bradford 金貸しは、国家を相手に金を貸す | 金融とは何を意味するのか?〜基本メモ

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