2010-02-05

新シリーズ「お金の本質に迫る!」4〜イスラムが生んだ商人国家〜

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“お金”の誕生から国家との関係まで扱ってきたこのシリーズ。
過去の記事はココから!
シリーズ第1弾「お金の本質に迫る!」1〜お金が生まれてきた背景〜
シリーズ第2弾「お金の本質に迫る!」2〜市場拡大の原動力〜
シリーズ第3弾「お金の本質に迫る!」3〜国家と貨幣の関係〜
4回目はお金を扱う商人が作り出した国家を紹介します。
イスラムは商人国家だった?
なかなかイメージは付きにくいかもしれませんが、詳細は本文で。
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るいネット「なぜイスラムで商品貨幣経済社会が発展したのか?」より

さて、なぜ、このような商品貨幣経済社会が広く伝播しえたのか?
 それは、彼らの宗教に秘密があります。
 
 イスラムと言えば、砂漠の、遊牧民の、戦士の宗教である、というイメージがあります。有名なマックス・ウェーバーがそう言っているので、この見方はかなり影響力を持っています。
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 ですが、これは事実ではありません。ムハンマドとその弟子らは、あくまで信仰者として闘ったのであって、戦士ではありません。彼らは徹頭徹尾商人だったのです。
 征服の中で彼らは遊牧民たちと同盟しましたが、それは都市の住人たちが、遊牧民を利用したにすぎないのです。その証拠に、9世紀初期まで、軍人は、未開民族の奴隷たち、非アラブ人の出身者の仕事でした。戦士の社会的評価は低かったのです。
 商人の地位は全く軍人とは逆です。商売によって得られる富は、代表的なハラル(宗教的に許容されたもの)です。
 むしろ、商人のライフスタイルこそ、イスラム教徒としての義務を全うするに相応しいものであると考えられていました。
 商人であれば、規範で決められたように一日五回祈る時間も、教典を勉強する時間もあります。頻繁に旅行にでかけるので、聖地メッカ巡礼も簡単に行うことができます。また、肉体労働をする低所得者よりも、断食をするのがやさしくなります。
 なによりも、ムハンマドとその仲間達が商売を職業としていたのです。ムハンマドの出身地メッカは商業都市で、ムハンマドの奥さんは商人の彼に資本を提供し、後に結ばれたのです。
 このような商人という職業が、信仰上最も適したものであるという宗教=イスラムがユーラシア大陸を中国からスペインまで到達したのです。
 
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 ユダヤ人が商業民族としての性格を身につけ、都市の中で生きるようになったのも、実は、イスラム世界の中でした。それまで、多くのユダヤ人の職業は農業でした。しかし、イスラムの支配者達は、反乱を防ぐために、頻繁に強制移動を行います。そして、異教徒には、重いジズヤ(人頭税)とハラージ(地租)が課せられました。
 また、ユダヤ人の安息日の規定は、キリスト教・イスラム教徒よりも厳しく、農業革命以降、農耕生産の競争力の点で劣らざるを得ませんでした。代わりに選んだ道が、離農し商業と都市の世界で生きるという選択肢だったのです。
 イスラム世界が征服によって領土を拡大することによって、それまでの古代以来の旧体制が破壊されました。
 それまでの支配者、特権階級たちが放逐され、貨幣を獲得することで社会的地位を獲得する社会が広い地域を覆い、古い支配層の代わりに貨幣の貴族たちが取って代わります。
 こうして、ブルジョワジーの発展はイスラムから始まったのです。
資料:「ユダヤ民族経済史」湯浅赳男

イスラム教は商人によって作り出された。
商人にも受け入れやすい宗教≒教え、規範だった。
市場社会が形成されつつある中で、いかに商人たちを含めて国家(集団)を統合していくか、そのために生み出されたのがイスラム教とも言えるかもしれません。
そしてイスラム国家が繁栄したことで、イスラムの規範に馴染めなかった異教徒(ユダヤ人)が欧州に流れて自由市場を開拓していく。
その後の欧州での市場拡大へと繋がるんです。
商人を活かしながらもイスラム教の規範をもって国家統合をなしえたイスラム国家と、国家と切り離し自由市場を開拓した、現代の市場に繋がる欧州の違いは、現在の経済破局を示唆しているように思えます。
次回は、時代を飛び越えて、17Cの絶対王政の時代の話です。
お楽しみに〜。

List    投稿者 vaio | 2010-02-05 | Posted in 08.金融資本家の戦略1 Comment » 

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コメント1件

 wholesale bags | 2014.02.10 22:35

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