2010-04-21

「市場の原理(価格格差の秘密)」−6 「ダイヤモンドの幻想価格の維持が、殺戮を生んでいる」

前回はなぜ農産物には幻想価値が付かない(安い)のか?その秘密について探って行きましたが、今回は幻想価値の代表選手とも言えるダイヤモンドについて、その幻想価値の成立基盤とその幻想が及ぼす影響について調べて見ました。
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☆引用は「ダイヤモンドの幻想価格の維持が、殺戮を産んでいる」からです

ダイヤモンド市場の独占体制
全世界で産出されるダイヤモンド原石の80〜85%は、ロンドンの中央販売機構 (CSO) に集められる。この凄まじい独占体制は、デ・ビアス社の創設者、セシル・ローズによって築かれ、後にアーネスト・オッペンハイマーによって復活し、盤石なものになった。彼らの戦略は採掘から加工、販売に至るまでの全ての工程を独占し尽くし制御下に置く、というものだ。【オンラインダイヤモンド株式会社 】

イギリスの牧師の子として生まれたセシル・ローズは南アフリカに渡り一介の工夫から身を起こし、ユダヤ人財閥ロスチャイルドの融資もとりつけて、1880年、デ・ビアス鉱業会社を設立し、ほぼ全キンバリーのダイアモンド鉱山をその支配下に置き、全世界のダイアモンド産額の9割を独占するに至った。その後南アフリカの政治経済の実権を一手に握り「アフリカのナポレオン」とまで呼ばれるようになった。%E3%82%BB%E3%82%B7%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BA.jpgケープタウンからカイロへ鉄道用の電線を敷設するローズ。同時代の諷刺画
ボーア戦争でローズが失脚した後デ・ビアス社を継いだのが、ユダヤ系ドイツ人のアーネスト・オッペンハイマーとその後継者の息子達である。現在の社長はニッキー・オッペンハイマーで05年の資産は5,900億円といわれる。
>■独占禁止法と真っ向から対立するデ・ビアス社の戦略これらは当然、近代的な独占禁止法という枠組みでは犯罪行為に該当する。実際、1994年ではGEとデ・ビアス社はアメリカ司法省に告発され、デ・ビアス社は有罪と判断された。
オッペンハイマー会長によると、「ダイヤモンドの高価さは、物質としての価値からくるのではなく、人々の心理的な満足感に支えられている特殊な商品なので、独占禁止法の適用外」だそうだ。
【ダイヤモンドが煽るアフリカの殺戮:リンク 】

ダイヤモンドは言い値で買わされる産出量の1/4を占める宝石用真珠は「slight」と呼ばれる特殊な方法で売買される。これは、デ・ビアス社が販売価格と割り当て量を全て決め、買い付け業者は異議を唱えることさえ許されないというものだ。当然、廉価販売がされないよう、消費者に届く末端まで厳密な監視がされる。
そもそも買い付け業者(サイト・ホルダー)になることすら困難な閉鎖的な世界だ。日本では田崎真珠、オリエンタルダイアモンドがサイト・ホルダーらしい。田崎真珠はデ・ビアス社の真似をしているのか、関連養殖場から産出された真珠は、田崎真珠の許可がないと勝手に台に据え付けることすら出来ないらしい。
【ネットゲリラ: 鉄火場情報:リンク 】【ダイヤモンドの流通:上流での変化の兆し:リンク 】

このデ・ビアス社はダイヤモンドの生産から流通までの一切を独占するため、

第一に、ダイヤモンド・プロデューサー・アソシエイション (ダイヤモンド生産者組合( DPA ))と呼ばれる生産者連合を作り、生産調整を行わせました。第二に、その生産物を一括して買い上げ、分類作業を行うダイヤモンド・トレーディング社 (ダイヤモンド貿易会社( DTC ))を設立しました。第三に、それらのダイヤモンドを一手に販売するセントラル・セリング・オーガニゼイション(中央販売機構( CSO ))という機構を作り上げました。
こうした組織は今日でも基本的には同じです。 このシステムにより、デ・ビアス社は生産調整を行うと同時に、生産実績に応じて販売内容と価格を決定、得た利益をプールすることで、生産調整に不可欠な買い入れ資金を得るという巧妙な循環システムを作り上げました。
勿論、このシステムに従わない業者に対して陰に陽に圧力を加えたのです。

建国間もないユダヤ人国家イスラエルは、ダイヤモンド産業を国の基幹産業の一つとして育成します。具体的にはダイヤモンドの輸出入に関税を掛けないなどの優遇策を講じて、ダイヤモンド産業を急速に発展させました。ダイヤモンド市場の旨みから得られる利益を国家経済の基礎に据えようとしたイスラエルとデ・ビアス社との間に利権闘争が発生しました。しかし一時はシェアーを落としたデ・ビアス社ですが、最終的にはこのイスラエルの野望をくだき、今に至る独占体制を維持しています「イスラエルとデ・ビアス社」。同じユダヤ人同士の争いですが、国家を相手に勝利するというのはデ・ビアス社は並み外れた資金力と権謀術数能力を持った集団といえます。
ですから、アメリカから「独占禁止法」で有罪とされようが、彼等にとってはハエが停まった程度のことなのかも知れません。

一番大事なのは幻想価値
彼らが最大限に注力するのが、こうした独占体制の維持と、幻想をでっちあげて女の頭を沸騰させることだ。(略)
ダイヤモンドは硬いだけの単なる石
ダイヤモンドは「硬い」ことくらいしか価値がないのである。(略)
それどころか、本当はダイヤモンドは硬くない。小さなハンマーで片手で割ることも出来る。
ダイヤモンドは希少価値さえ無い
近年、デ・ビアス社の中央集権体制の届かないオーストラリアやカナダで次から次へとダイヤモンド鉱山が見つかっている。また、総生産量の3/4を占める工業用人工ダイヤの生産が実用化するなど、世界中で数千億円規模のだぶついたダイヤが倉庫に眠っているとされる。
ロシアでは肉眼では職人でさえ見分けのつかない人工ダイヤモンドを生産できるらしいのだが、ロシアは南アに次ぐ生産量を誇っているので、ロシアも自らダイヤモンド市場が暴落するような真似をするわけがない。
本当かどうか、「余ったダイヤはドーバー海峡に捨てられる」と言われるくらいで、「ダイヤモンドは永遠の輝き」どころか、「暴落寸前の炭素で出来た石ころ」というのが正当な評価なのである。

さほどレアーでもなく、硬度は一番だが打撃にはもろいこのダイヤモンドの「幻想価値」を維持するために、デ・ビアス社はブランド名ではなくダイヤそのものの高貴なイメージを徹底して植えつける広告を打った。

デビアスは『ダイヤモンドは永遠と愛の象徴』として、婚約・結婚指輪の理想であると宣伝した。この非常に成功したキャンペーン活動は以下が有名である。
・ロマンス映画中で結婚祝いとしてダイヤモンドを使う
・有名人を使い、雑誌や新聞中にダイヤモンドのロマンチックな面を想起させるストーリーを掲載する
・ファッションデザイナーや流行仕掛け人を雇い、ラジオやテレビで流行を広める
・ダイヤモンドを広めるために英国王室に献上する
このデビアスのPR機関N.W.アイレ親子商会によって立案されたキャンペーンは、人々にブランド名を植え付けることなく、ただダイヤモンドの理想的な永遠の価値を表現するという点で、後年長く模倣される新しい広告形式(イメージ広告)であった。日本でも黒バックに「ダイヤモンドは永遠の輝き De Beers」とだけ銀文字で大書されたCMが知られる。

こうした涙ぐましい広告戦略と価格維持システムはこれまで一定の成功を収めてきた。
少し古いデータですが
1986〜1992年の間、国ごとのバラつきがありながら全世界のダイヤの産出量は見事に9000万カラット前後で一定しています。

■武器と交換される「非合法」ダイヤモンド
ダイヤモンド市場における流通の独占と価格の統制は、必然的に非合法な流通をもらたす。これを阻止するため、「非合法」なダイヤモンドを、デ・ビアスの息のかかった人間が買い取っているというのである。
【ABC Radio National – 背景報告:ダイヤモンドのアフリカ傭兵】
シエラレオネ、アンゴラ、南ア、これらの地域は絶え間ない紛争が拡大しているが、その武器調達の主要な資金源が非合法ダイヤの売買である。(略)【ミハエル・カラシニコフ千一夜】
武器がなければアフリカの内戦で度はずれた大虐殺が起きることはなく、せいぜい牛刀で斬りつけあうくらいだが、しかし、その武器が、ダイヤモンドの幻想価格を維持するための密売を資金源として供給されているのだとしたら、ダイヤモンドの輝きは多くのアフリカの人々の血にまみれたもの、と言わざるを得ないだろう。

・こういうダイヤを「ブラックダイヤモンド」という
☆僕等庶民には殆ど縁の無いダイヤモンドですが、デ・ビアス社という怪物企業が世界のダイヤ市場をほぼ独占し、独占を脅かす国家をも凌ぐ力を持っているという事実にまず驚かされます
・その力の源泉は生産から加工・流通・販売までをグループ企業で一手に押えるという垂直統合システムにある(しかし、この護送船団方式は市場拡大が停止すると逆に足かせとなる)
・ダイヤの販売価格は産出時の原石の価格の約6〜7倍(意外に小さい)だそうだが、さほどレアーでもない硬いだけが取り柄の石の価格を維持するには、世界中の人々を洗脳するための幻想化が必須であり、デ・ビアス社はこれまでそれに成功した。
・しかし流石に今回のリーマンショックを境にその幻想価値にも陰りが見えます
。「ボツワナ政府によると、ダイヤは2008年の同国輸出全体の 65%を占めた。ところが同年11月以降、ダイヤ販売はほぼ途絶えた。アフリカで最大の財政黒字国の1つと自負していたボツワナは、収入激減により、いまや過去最大の債務を抱えている。」「アフリカの資源国ボツワナ:ダイヤ鉱山操業停止で経済も輝き失う」リンク
・しかも、ダイヤモンド製品の値段のうち、実はリングの価格がその大半を占め、ダイヤの価格は1/6程度だそうです。
・またデ・ビアス社の2005年の売上は65億ドル(現レートで約6000億円)です。(※意外にたいしたことは無い。従業員は2万人なので1人あたり売上は3000万円で、これも日本の大手ゼネコンの社員1人当り売上が約1億円であるのに較べてもたいしたことはない。それだけ低賃金で働く層が多いのか?)。
1996年段階の在庫は100億(9500億円)ドルです。
また2009年には「中国の今年上半期のダイヤモンド輸入総額は前年同期比12.7%増の3億ドル(約270億円)で過去最高となった。現在、世界のダイヤモンド消費量の
約半数を占める米国にはまだ遠く及ばないが、中国と日本はそれぞれ約13%
占めている。」リンク
ということは、全世界のダイヤの消費量は約2070億円であり、市場は急縮小し更に在庫が積み上がっていると思われる。
・現在既にバブル化している中国で、今後消費量が増えるとしても、そもそも資産価値の無い(だからデ・ビアス社は転売や譲渡でダイヤが中古品となり、値崩れすることを防ぐために「ダイヤモンドは永遠に(売らずに持ち続けるもの)」というキャンペーンを張ったわけです)、利にさとい中国人が資産価値の無い流動性の無いダイヤをさほど買うとは思えない。
・更にデ・ビアス社側は「その上、中央販売機構 (CSO) は生産者に少なくともOECD諸国のインフレーション並の価格の値上げをする義務を負っています。」
・100年以上に渡ってダイヤという超幻想化商品を独占してきた、さしものデ・ビアス社も、人々の必要、不必要の篩にかけられ幻想化のメッキがはがれると同時にその王国が凋落する日が近そうです。

List    投稿者 ryujin | 2010-04-21 | Posted in 08.金融資本家の戦略5 Comments » 

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コメント5件

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