金貸しは日本をどうする?~近現代の金貸しの戦略(7) 「第二の緑の革命」=「遺伝子組み換え作物」
ロックフェラー財閥、穀物メジャー:カーギル、化学企業:モンサントの『緑の革命』は一旦落ち着いたかに見えた。
しかし、それと並行して『第二の緑の革命』とも言うべき状況が進行し続けてきた。先導しているのは「モンサント」、その中核商品は『遺伝子組み換え作物』である。
■モンサントの遺伝子組み換え作物による『第二の緑の革命』
モンサント社は1901年に設立された、アメリカ・ミズーリ州の化学会社で、悪名高い数々の製品を開発販売している。ベトナム戦争で大量に撒かれた枯葉剤、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、ポジラック(rBGH)という牛成長ホルモン(発がん性疑われる)などなど。現在では、ラウンドアップという除草剤を開発・販売し、ラウンドアップ耐性を持つ遺伝子組み換え作物(GMO)で有名である。種子メーカーとして有名になったのは近年であり、この過程で多くの種子メーカーを買収してきた。つまり、モンサントは枯葉剤由来の除草剤を売るために、それに耐えうる品種を作り出す必要があり、そのために遺伝子組み換えを行う種子メーカーを買収し、セット販売を拡大してきたと言える。
遺伝子組換え作物の栽培国と作付面積は年々増加しており、2013年現在、全世界の大豆作付け面積の79%、トウモロコシの32%、ワタの70%、カノーラ(菜種)の24%がGM作物である(ISAAA調査)。
遺伝子組み換え作物は、現在は主に家畜の飼料用作物、あるいは加工品の原料として使われることが多い。今や、食肉・加工品の安定的供給の為に欠かせないものだと言われている。
(画像:厚生労働省)
○遺伝子組み換え作物が拡大した背景
アメリカで誕生した遺伝子組み換え作物は、アメリカ大陸(南米)、次いでインドに広がっていく。
南米の農家が遺伝子組み換え作物を導入するきかっけとなったのは、(モンサントによる)「密輸」であった。密輸品のものを耕作することは犯罪のはずであるが、今なおラテンアメリカでは大地主はその地域の警察や裁判所にもにらみを効かす権力者として存在している。その権力者を動員し、国会ロビーを強くかけて、民主主義的なプロセスも一切吹っ飛ばして、ブラジルでもパラグアイでも遺伝子組み換えが2005年に合法化されている。
その後、遺伝子組み換え大豆はあっというまに南米に広がり、ブラジル、アルゼンチン、パラグアイ、ウルグアイ、ボリビアに渡る地域は「大豆連合共和国」と揶揄される(モンサントと同じ遺伝子組み換え企業のシンジェンタのパンフレットに使われた言葉)までになっていく。
この過程では、遺伝子組み換えに反対する大統領がクーデターによって転覆し、政変後の大統領がBtワタ(殺虫効果のある遺伝子を組み込んだ品種)などの遺伝子組み換え種子を相次いで承認していく。遺伝子組み換え作物を受け入れるかどうかを巡って、政変・クーデターまで仕掛けていったのである。
(モンサントはいらない)
さらに、インドにおいては、世銀・IMFがモンサントによる種子支配を後押ししている。1970~80年代を経済低迷に陥っていたインドは、80年代を通じて部分的自由化を進めていたが、湾岸戦争を契機とする債務超過を解消するため、1991年に世界銀行・IMFの構造調整プログラムを受け入れた。本格的な経済自由化路線に転換したインドは、IT分野を中心に急速に発展していくことになる。
一方で、世銀・IMFの構造調整プログラムにより、インドは種子部門を多国籍企業に開放。これと共に、GM種子(遺伝子組み換え種子)が普及していった。インドのワタ種子市場は事実上、モンサントの独占市場と化した。モンサントはまず、農薬と化学肥料による管理が必要な自社製GM種子を売り込む。農民は、種子と抱き合わせでモンサント製の農薬や化学肥料を買わせられ、同社の商品に依存する新たな慣行が生まれた。華やかな発展の影で、綿花生産者が借金を苦に次々自殺を図っているというのだ。(インドのワタ栽培の約9割が、Btワタ(殺虫効果のある遺伝子を組み込んだ品種)となっている。)
(【モンサントの脅威】モンサント社に逆らうとクーデターが起きる!パラグアイの6月クーデター!モンサントは世界支配を計画)
モンサントーロックフェラーが支配を強めるのは、生産者側の国家だけではない。遺伝子組み換え作物の輸入を拒む政府には、米国政府を通じて門戸を開かせようと、圧力を掛けている。(フランスがモンサント社の遺伝子組み換えコーンを禁止したことを受けて、ステイプルトン元駐仏大使は2007年、EUへの報復を米政府に要請していた。 WikiLeaks: モンサントの遺伝子組み換え作物を拒む欧州に米国が報復を検討)
○遺伝子組み換え作物の危険性
遺伝子組み換え作物は世界中で拡大する一方で、その危険性を訴える声も大きくなりつつある。特に指摘される点は以下の7点に集約される。(遺伝子組み換えが動植物、環境、人間に与える7つの毒性)
1.遺伝子組み換えは消化を混乱させる。
2. 遺伝子組み換えはガンの原因となる。
3. 遺伝子組み換えは除草剤の使用を増加させる。
4. 遺伝子組み換えはネイティブな種子や蜂や昆虫に損害を与える。
5. 遺伝子組み換えは環境を汚染する。
6. 遺伝子組み換えは土壌のミネラルを激減させ、有益なバクテリアを破壊する。
7. 遺伝子組み換えは作物を破壊するスーパー雑草やスーパー害虫を生み出す。
これら以外にも、モンサントは自社のGM種子に特許権を制定し、来シーズン用に種を保存する自家採種を知的財産権の侵害として禁じた。インドのヴァンダナ・シヴァは、「本来であれば無料であるはずの資源(=種)が商品化された」として、農産物に対する特許権取得を非難。同時に、「企業製種子への移行は、多品種栽培からモノカルチャーへの移行でもある」と、土壌の生産力低下と多様性の喪失を指摘する。(【モンサントの脅威】モンサント社に逆らうとクーデターが起きる!パラグアイの6月クーデター!モンサントは世界支配を計画)
危険性が指摘されているにも関わらず、遺伝子操作技術は家畜にも転用され、「2倍の早さで成長する鮭」「羽がないにわとり」「人の母乳を出す牛」「ゲップをしない牛」「猛毒を合成するサソリの遺伝子を組み込んだキャベツ」がすでに開発され、商用化の時を待っている。
(遺伝子組み換えがもたらすモンスター食品動物5選|あなたも口にしてるかも?)
★このように、米国政府、CIA、モンサント、さらには世界銀行、IMFが一体となって「第二の緑の革命」が着々と進行している。
○反モンサント、反食糧支配の潮流
メキシコなどを中心に、モンサント法案とよばれる法案が提出されてきた。これは、農民が自分たちの種子を自由に蒔くことを犯罪とする法案で、種子はモンサントなどの特定の企業から買わなければならないというものである。しかし、先住民族が先祖代々受け継いだトウモロコシなどの種を育てるという歴史を犯罪とする法案には、メキシコ中から怒りがぶつけられ、法案は成立しなかった。
また、アメリカにおいてすら、「健康を害する懸念がある遺伝子組み換え作物の種子でも、法的に差し止めることができない」という条文が入った、いわゆる「モンサント保護法」の条文が破棄された。
(【朗報】モンサント保護法の破棄が米国上院で決定!米国を含め、全世界で反発が強まる遺伝子組み換え!)
つまり、全世界的にモンサントによる一極支配に急速にブレーキが掛かりつつある。カトリックの司祭や指導者すら、その多くは公式に遺伝子組み換え作物を非難しているからだ。実際、バチカンは公式にモンサント社の遺伝子組み換え作物は「新しい形の奴隷制度だ」と宣言している。
(Vatican Condemns Monsanto Genetically Modified Crops as “New Form of Slavery”)
「反モンサント」「反遺伝子組み換え作物」の急先鋒はロシアである。
ロシアでは現在、大豆、とうもろこし、じゃがいも、てんさい、米、また遺伝子組み換え微生物2種類などの18品種のGMOを、食品の製造に使用することが許可されている。
だがロシア議会は、ロシアへのGMO輸入や、ロシアにおけるGMOの普及を禁止する法案を準備している。ロシア政府はこのようにして、健康に害を及ぼす恐れのあるGMOから国民を守ろうとしているのだ。
(ロシアの声)
また、中国も、モンサントが大々的に宣伝した南米専用第2世代ラウンドアップ・レディー大豆、Intacta Pro RR2を買わないと言い出した。最終的には買うことに決まったが、中国国内でもほとんど売れないという事態に陥っている。
(「モンサントのビジネスモデルが崩壊中。株価の下落の原因となっているのはかなり深刻な問題だ:印鑰 智哉氏」)
『緑の革命』であれ『第二の緑の革命』であれ、一時的に収穫量を上昇させ、飢餓状態からの一時的な脱出を実現したとは言える。しかし、自然の摂理を逸脱し、人類の根源的で伝統的な生活を破壊するものであって、中長期的に見た場合の悪影響は多大なものがある。自然の摂理・人類の摂理を破壊する“技術”の急速な拡大が、それに対する反の意識を生み出し、世界潮流的なモンサント包囲網を、言い換えれば国際金融資本家(ロックフェラー)を頂点とする食糧支配に対する防波堤を築き始めている。
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