お金はどこから生まれてきたのか?〜第2回 パプアニューギニアでの貝貨の使われ方〜
●パプアニューギニア●
このシリーズでは、貨幣の歴史を扱っていきます 世界で最古の貨幣は中国【殷】の貝貨だと言われています。というのも、殷の時代に宝貝が貨幣として使われたことが紀元前11〜10世紀の青銅器に刻まれていたからです。
「購・買・賃・貸・貯・貨・財・買・費・資・貿・賞・販・賠・貪・貧・貢・貰・貴・賊・賛・贋・贈…」
というように、お金に関する漢字の中に「貝」が使われている漢字が多いことからも、貝が最古の貨幣であったことが伺えます。
さて、中国の古代国家【殷】は実は内陸部に位置していました。海岸から遠い位置にある殷でなぜ貝が最初にお金に使われたのでしょうか?殷では貨幣に宝貝が用いられていました☆宝貝はいったいどこから来たのでしょうか??調べていくと、現在でも宝貝が貨幣として使われている国が!!!!!それがパプアニューギニアなのです(*^_^*)
■パプアニューギニアは多民族国家☆
パプアニューギニアは大小たくさんの島々からなる国です。4〜3万年前の旧石器時代に海面が下がることで島々が陸続きとなりました。そのとき人々はそこを伝ってインドネシア東端半島から狭くなった海峡を舟で渡り始めます。このようにパプアニューギニア島やメラネシアの島々やオーストラリア大陸への移動が始まっていくのです!(^^)!
紀元前4500年ほど前の移動(縄文海進)の際には、海面が上がることでスンダランドが沈没しパプアニューギニアにはたくさんの民族が流れ着くこととなりました!!(ちなみにスンダランドとはモンゴロイドの原郷であり、いまのインドネシア半島を「スンダ列島」と呼びます。この辺り全体が海面低下によって大陸化していることを指しているのです♪)
多くの民族が流れ着くことによって同類圧力が一気に高まりました(^O^)では一体どのようにしてこの状態に適応していったのでしょうか??(*^_^*)
■クラ交易にみる贈与
一つの場所に多くの民族が流れ着くことになったパプアニューギニアでは、敵か味方か?同じ人類でありながら得体の知らない集団同士が共存していたのです。おそらくこのような緊張状態を緩和するために婚姻関係を結んだと考えられています。日常的な交流はないものの、いわば遠い親戚みたいなもの♪という感じ!! そしてこの婚姻は部族間の大切なことであり、きちんとした儀式だったと考えられています。その部族間の婚姻関係を成立させる上でも結納は必要な儀式です。そしてこの儀式に家族・友好の証である結納金として使われていたのが宝貝なのです☆ 現在でもパプアニューギニアでは貝貨が使われていて、その名残を見ることができます(*^_^*)
・: *:・°現在のパプアニューギニアでの貝貨の使われ方・: *:・°
パプアニューギニアでは国家通貨「キナ」と並んで現在でも「貝貨=シェルマネー」が使われています。シェルマネーは、「もの」を購入するときに使われているのではなく「ひと」への対価のときに用いられています。例えば、結婚式・成人式・お葬式などの人生の節目の儀礼の際に用いられます。あと、もめごとが起こったときの調停としても使われることもあります。シェルマネーは小さな子安貝を植物のつるでつなぎとめたものです。装飾品の形をしていてさまざまなデザインがあり呼び名も異なるが、その大きさ・長さ(=貝の数によって)価値は決められているのです!(^^)! 詳しくはこちら♪
シェルマネーが使われるときは値切ったり相場を上げたりすることはないです。日本人に結納金という慣習があるが、その際にも同じことがいえるでしょう。皆さんは結納金を値切ったり安くすましたりすることができるでしょうか?きっと「ひと」に対して支払う祝儀・お年玉・お香典でそんなことをする人は普通いないですよね?(^_-) 日本において「ひと」に対して支払う祝儀・お年玉・お香典は、やがては「もの」に代わる現金でなされています。車や家やさまざまなものに変わってゆきます。しかしシェルマネーはそうではないのです。シェルマネーは他の「もの」に変えることはできません。このことはシェルマネーが、かけがえのない「ひと」という存在に対して支払われていることを意味しているのではないでしょうか(*^_^*)
このようにものをやり取りするお金と、人間関係の中での価値を取引するお金と2種類にわけて使われているのです。貝のお金は人と人とのあいだの関係のなかで使われるお金として使われていました。
さらに多くの島々が成り立っているパプアニューギニアでは島内だけで閉塞しやすい環境にあり、島間での緊張状態が発生しやすくなります。したがって島間での交流を強制的にでも行う必要があったと考えられます。それがクラ交易なのです♪
・: *:・°クラ交易とは・: *:・°
①クラ交易はソウラバという赤い貝の首飾りとムワリという白い貝の腕輪の交換である。
②2種類の装飾品は互いに反対方向にとどまることなく回り続ける。ソウラバは時計回りに、ムワリは反時計回りに、2年から10年で島々を一周する。
③ワガ(カヌー)をつくりソウラバ(orムワリ)をもらい遠洋航海する。
※島国であるパプアニューギニアの人にとって自分の島以外は恐ろしい地域である。人喰い人種や、男を喰いものにする恐ろしい女性の住む島々という意識なのです。
④クラ船団はクラ・パートナーの島につくと儀礼的な歓迎をうけソウラバを受け取る。半年くらいの間をおいて、今度はホストであった(ソウラバの贈り手)クラパートナーは海を越えて、ソウラバの受け手であった人達のところへ大航海して、贈り物を受け取るのである。
この状況を俯瞰すると、ソウラバ(orムワリ)が島間をぐるぐると循環する間に島間で様々な贈り物が渡されていることになります。これは贈り手が見返りを求めない一般的な贈与とは異なり、いわば強制的な贈与関係といえます。そして一つ一つのやり取りをつなぎあわせると物々交換とも贈与とも違い、ソウラバ(orムワリ)が様々な賜物と交換されているようにも見え、それが島間を常に循環しています。そのことから貨幣のもつ高い流動性の原形にも思えてきます。
※貨幣の特徴についてはこちらをどうぞ→「政府貨幣の可能性を探る〜貨幣の問題性 シルビオ・ゲゼル〜①」
つまりパプアニューギニアでの貝の使われ方の特徴としては
①宝貝が、婚姻時の結納金など、人間関係の贈与として使用されている。
②島間での交流促進のための道具として用いられている。
③いずれも希少価値(=貴重品)としてではなく、思いを伝える道具として使用されている。
でした。
では次回はパプアニューギニアで使われていた宝貝が中国にわたり、どのようにして貨幣として使われるようになっていたのかを見ていきましょう
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